2000.06.05
通 産省は中国の鋼材輸入規制など鉄鋼貿易問題で改善を申し入れるため、担当者を派遣するとともに、鉄鋼メーカー、商社の民間企業から約40人も同行し、早急な対応を求める。

 訪中はあす6日から9日までの日程で、北京で対外貿易経済合作部(経貿部)、国家経済貿易委員会(経貿委)などの担当者と協議する。ステンレス冷延鋼板のアンチ・ダンピング調査での仮決定の根拠や対応状況を聞くほか、輸入規制問題では円滑なIL(輸入許可証)の発給や、加工貿易新管理制度での保護金返還手続きの明確化、品目の見直しなどを要請する。

 訪中するのは、通産省の奥田真弥・鉄鋼課長をはじめ、民間から輸入規制と加工貿易新管理制度で約30人(商社12社、鉄鋼メーカー3社)、ステンレスADで約10人の合計40人程度。経貿部、経貿委のほか、冶金工業局、五金総公司など他のセクションの関係者にも話し合いを申し入れており、調整作業中だ。

 ステンレス冷延鋼板ADでは、中国政府が4月13日に“クロ”の仮決定を下しており、同決定に至った根拠をただすほか、9月に予定されている最終決定への対応などを聞く。また、これまでのところ、日本から中国に輸出されているステンレス冷延鋼板は9割程度が再輸出される製品が占め、関税が賦課されていない。この点についても中国政府としての考えを質問するものと見られる。

 輸入規制問題では、部分的にはILが発給されているものの、依然としてコイルセンター、ブリキ工場と遅延もしくは未発給、発給枠不足などの障害が続いており、早急な発給作業と今後の円滑実施を要望する。

 加工貿易新管理制度については、輸入時にあらかじめ関税・増値税(付加価値税)相当分(=輸入額の40%)を日系鋼材加工企業などが保証金として積み立て、加工して再輸出された時点でこれを返還するとしている手続きの明確化と、電気亜鉛メッキの除外など対象品目の見直しを求める。同制度は昨年10月から実施されているが、今年5月には保証金を半額にする措置がとられたとされ、この点についても中国政府の対応などに質問が及ぶものと見られる。

 このほか訪中では、中国政府関係者などとの意見交換や情報収集に当たることとなる。

新 日本製鉄、NKK、川崎製鉄、住友金属工業の4社は伊藤忠商事、住友商事、三井物産の3商社を窓口として、先週までにロシアの最大手天然ガス会社「ガスプロム」向け大径鋼管31万トンの受注に事実上成功した。国際協力銀行や民間の協調融資を得て、今月中旬に正式契約する運び。9月に出荷開始の予定で、続いて高炉4社は東南アジアで計50万トン規模の大径管商談を進める。UOE工場がフル稼働に入るだけではなく、厚板需給にも多大な影響を与えるのは間違いない。

 ガスプロムはイタリアのENI(炭化水素公社)と共同で、米国を巻き込み曲折した国家的事業、ロシアから黒海を経てトルコに至る長距離パイプラインを敷設する「ブルーストリーム計画」に着手した。

 全長1000キロメートル、投資総額20億ドル以上とされ、うち黒海の海底パイプラインは400キロメートル。この海底部分に使われる36万トンのうち31万トンを日本4社が内定したもので、5万トンはCORUS(コーラス=英国BSCSオランダのホーゴベンスの統合会社)にほぼ発注となった。

 パイプは口径24インチの特殊な厚肉サイズ。

 黒海は最大水深が2200メートルもありパイプは強い耐圧性が求められ、しかも耐サワーの非常に高い品質が要求され、この厳しいスペックに応じられるメーカーは世界でも限られ、日本4社に優位性があった。

 日本4社は正式契約後、7月にもロールを始め、9月に第1船をマレーシアのクアンタンに向け、米系のブレドロプライスで塗装しトルコに荷揚げする。

 日本のファイナンスは国際協力銀行(旧日本輸出入銀行と海外経済協力基金が統合)の制度金融バイヤーズ・クレジットと富士銀行を幹事とする民間ローンから成り立つ。

 輸出代金のうち頭金85%に対し、制度ローンが60%、民間が40%という内訳。その他も含む日本からの同事業向けファイナンスは、国際協力銀行3億3100万ドル、民間銀行団2億9500万ドル、計6億2600万ドルに達し、通産省の貿易保険でカバーされる。コーラスの英国も1億ドルの制度金融を供与するという。

 海底パイプラインの敷設工事はイタリアのサイペムが請け負う。

 陸上パイプラインはトルコ側の大径鋼管をドイツ中心のユーロパイプ、ロシア側はイタリアのイルバが、各20万トンの納入を内定した。陸上部分の工事はフランスのヴイグと伝えられる。

 このブルーストリームは1年内の短期間に、大量76万トンのUOE鋼管を世界の主要ミルから調達することになる。

 世界ミルで供給力のあるのは年間で、日本4社とユーロパイプの各100万トン、イルバ50万トン、計250万トン。うち76万トンが決まり、年内にもベトナム、マレーシア、タイから合わせて50万トンの発注が予定され、北海や中東、米州で通常の小中規模物件が出てくると、たちまちミルネックが表面化する形勢となってきた。

 このことはUOE工場にとどまらず、厚板の需給を一変させかねない。日本4社の厚板工場が年100万トンをUOE工場に振り向けるとなれば、本来の厚板の品不足につながる可能性が極めて高くなってくる。



阪 和興業(北修爾社長)は、2002年度までの3カ年の「営業・収益計画」を策定した。営業戦略では、物流・加工分野の体制強化、首都圏営業の拡大、海外展開の強化、IT分野での展開などで、3年後には売上高が99年度より13%増の7030億円、経常利益が3・6倍の87億円、ROA(総資産収益率)は2・5%を目指す。財務戦略では、3年間でフリーキャッシュフローを714億円とし、有利子負債は606億円削減することなどで、強固な財務体質の構築を狙う。

 2002年度の売上高は7000億円の大台を突破、このうち鉄鋼部門は99年度と比べて12%増の3990億円を予定している。営業利益は19%増の100億円、経常利益は3・6倍の87億円、当期利益は29倍の87億円に引き上げる計画。

 物流分野・流通センターの競争力、加工分野の強化を鉄鋼営業の柱に据え、東京の鋼板部門を中心とした首都圏営業の収益を拡大する。スチールハウス、スチールパレット、鉄鋼リース業界、セメント事業などの周辺分野における新規事業への展開も進める。

 海外は家電、OA機器向け加工部品の供給体制の確立など、川下分野を重点とした提案型のトランスプラント志向ユーザーへの対応を強化。日系企業に加えて、地場の有力ユーザーへの取引を拡大する目的で、中国の4カ所のコイルセンター、9カ所の営業拠点の販売も拡充する。東南アジア、中国、北米などの各拠点の連携によるシナジー効果を発揮した三国間取引も拡大する。台湾での立体駐車場事業も本格化していく計画。

 IT分野ではeコマースへの進出、高次元画面承認システムの構築と事務コストの削減を推進。環境事業への取り組みはISO14001の認証取得と継続的改善、環境事業関連の諸構想の事業化、リサイクル事業の拡大を目指す。

 こうした競争力の強化に向けた組織・経営管理体制の見直しも同時に行う。国内鉄鋼部門は鉄鋼中核組織の統廃合を実施。海外営業部は仕入部門の効率化により、海外拠点の販売力増強に人員をシフト。首都圏営業強化に伴う人材シフトも進める。流通センターの経営合理化・物流システムの効率化、間接部門の定型業務のアウトソーシング、成果主義人事システムの徹底にも取り組む。

 財務戦略は、フリーキャッシュフローを3年間で714億円(当期利益177億円、減価償却費13億円、資産回収収入464億円、運転資金効率化60億円)とする。有利子負債は3年間で606億円(変動利付債償還131億円、銀行借入金返済475億円)の削減とし、2002年度末の有利子負債は1319億円となる。

 退職給付会計への対応では、割引率3・0%を前提とした積立不足額は今年4月1日現在で約5億円となっているが、今年度上期に一括償却する。



日 新製鋼は2日、東予製造所の竣工式を行った。式典には加戸守行・愛媛県知事、青野勝・東予市長ら来賓約200名が出席。同製造所の竣工を祝った。

 この祝賀会で田中實社長は「弊社の将来を担う東予製造所が、21世紀を目前に控えた2000年の節目に竣工したことは、次の時代に向けた希望の光を見る思いがする。東予製造所の建設は投資総額約800億円、建設工事には延べ約44万人を投入したビッグプロジェクトで、技術力を結集した最新鋭の製造所として誕生した」と述べ、「製造技術面では、世界で初めて酸洗設備に前処理圧延機能を導入、また、冷延設備は酸洗設備の後面に配置し、前処理圧延機能と一体となった連続運転によって業界トップレベルの高品質、高生産性を実現している。さらに、めっき設備は、品質、コスト面でこれまでの設備に対して大きな優位性を有するとともに、東予製造所の新しいめっき設備で製造することを前提に研究開発を進めてきた、高耐食のめっき製品“ZAM”を本格的に生産する。最新の製造技術、製品技術を織り込み、徹底した自動化、省力化を図った東予製造所で製造する製品は、国際的なコスト競争力、品質競争力を有し、必ずやお客さまに満足いただけるものと確信している」と語った。

本 田技研工業の雨宮高一副社長・北米地域本部長、ホンダ・ノース・アメリカ会長兼社長はこのほど、米国の乗用車およびライトトラック市場について「2000年の販売台数は昨年を少し下回る1640万―1650万台(の同社見通し通り)に落ち着くだろう」との見方を明らかにするとともに、「これまでのところ当社の米国での販売も計画に乗っている」と述べ、同社の米国での販売計画達成に自信を示した。

 同社は2000年の米国での販売計画を前年比5・9%増の114万台、カナダを同1・2%増の13万3000台、北米での販売合計を同5・4%増の127万3000台と見込んでおり、達成するといずれも最高記録を更新することになる。

 雨宮副社長は産業新聞社のインタビューに応じ、米国の自動車市場について「99年の1690万台に対して、2000年は1640―1650万台と前年を少し下回るという見通しを年初にまとめた。1―4月の販売実績はこれを上回る年間1700万台のペースで、4月だけをみると1800万台に達する勢いにある。ただ年末までこのペースが続くとはみておらず、市場予測を大きくは変えていない」と述べた。

 2000年の同社の販売見通しについては「米国の販売計画は114万台で、第2・四半期まで、このペースに乗っている」と述べ、カナダの13万3000台と合わせて北米で127万3000台の販売を計画していることを明らかにした。

 また同副社長は、中期計画について「米国景気がソフトランディングして1600万台規模の市場が維持されることを前提に、とくにライトトラック市場への新規参入を果たすことで、北米の販売規模を2003年に145万台へ拡大したいと考えている」と語った。同社はこのほど全世界での販売規模を2003年に99年実績比で50万台増の300万台に拡大する方針を打ち出しており、北米での145万台への拡大はこの路線に沿ったもの。

 なお、同社は2000年の北米での生産を100万3000台と計画。内訳はオハイオ州メアリーズビル工場45万6000台、イーストリバティ工場22万2000台。カナダについては第1ラインを16万5000台、第2ラインを16万台と見込んでいる。この計画は米国生産が前年比1・2%減、カナダ生産は同18・2%増、北米トータルでは同4・4%増となる。ミニバンのオデッセイを年間12万台生産する予定のアラバマ州の新工場が、本格操業を開始する2002年以降の同社の北米での生産能力は113万台に拡大する。

ネ クスト・ワン(本社=東京都板橋区、金山智富社長)は、液燃(本社=大阪府堺市、奥田真社長)が開発した超臨界流体の連続生成技術を工業用バーナーに応用した「液燃バーナー」の営業活動を本格化させる。

99年4月に国内外での特許公開(特開平11―101408)するなど、これまで市場投入に向けた準備を進めてきたが、7月中にも月産30台の生産体制を整える。農協系企業、造船メーカーなどボイラーでA重油を使用する幅広い業界からの引き合い増に対応して、6月から本格的な受注活動をスタートさせ、初年度の販売目標20億円を目指す。

 同装置は、摂氏374度、220気圧の環境下で、水を不安定な状態にしてさまざまな機能を引き出す超臨界水理論を応用した省エネ技術。A重油と水を混合し、摂氏500―800度、220気圧の高圧下で水と油を熱分解することで重油消費量を20ー50%ミニマム化、SOXやNOXなどの発生をも抑制できる。ボイラーのバーナー代替として活用するプロセスだ。

 液燃の奥田真社長が実用化したもので、99年4月には国内の特許公開に加え、台湾でも特許取得済み。アメリカでも特許申請中。

 現在すでに、ビニールハウスや果樹園など農業関連や養鰻業者など漁業関連のニーズ、大手ガラスメーカー、造船メーカーなどから想像以上の引き合いがあり、代理店契約も北海道から沖縄までをブロックに分けた8社、台湾で3社と締結する予定。

 販売価格は、オプションを含まない機械本体価格で650万―700万円。さらに今後は、灯油の消費量低減など家庭用の液燃バーナーの実用化にも取り組み、将来的には環境エンジニアリングメーカーを目指していく方針。

大 阪地区の冷延薄板は電機など需要が低調なこともあって、流通はなかなか販売を引き締められない状況が続いている。これを反映し、市況は5万―5万1000円どころで弱含み。

 高炉メーカーはフル生産体制となっており、自動車などヒモ付きが埋まっているメーカーは店売りを抑制しているが、一部のメーカーは店売り向けが緩和してきている。輸入材自体は平均で月間6万―7万トンと低水準だが、輸入の岸壁在庫は引き取りの鈍化により、増加傾向にある。需要は鋼製家具など一部の業種を除くと、さえない状況が続いている。

 また、ユーザーも流通に厳しい指し値を提示しており、流通は販売を立て直せない状態が続いている。当面、市況は弱含み。