2016年4月22日

熊本地震、鉄鋼・非鉄業界への影響 「本震」からの業務再開進む 従業員被災、マンパワー不足

熊本県で14日午後9時26分に発生した「前震」と16日午前1時25分に発生した「本震」は熊本県の鉄鋼、非鉄企業を直撃した。事務所や工場・倉庫が損傷し、在庫品の荷崩れが起き、設備にダメージを負った。熊本地震が発生して1週間を経過し、これまでの鉄鋼、非鉄業界の各企業の動向をまとめた。

【14日の前震】

大阪製鉄西日本熊本工場は14日、夜間操業を開始するための準備を行っていたところ、地震が発生。従業員は直ちに避難したため、けが人などはゼロだった。

15日は設備点検に入ったが、余震が続くため天井クレーンのチェックなど、高所作業は行わず、外観チェックにとどめた。地震により周辺道路状況が悪化しており、スクラップの入荷や製品出荷は停止した。16日の天気予報は雨だったため、雨対策も並行して行った。

YKKAP八代工場や不二ライトメタルなど非鉄メーカーも夜間操業中だったが、地震を受け設備の稼働を停止。YKKAPは夜勤者を帰宅させた。15日は設備点検を行い、安全が確保された設備から順次稼働を開始。

YKKAPは15日、TOTOとのコラボレーションショールームのオープニングイベントを開く予定だったが中止に。16日のオープンも見送った。

このほかの企業では、一部鋼材特約店で鋼材の荷崩れ、事務所の散乱が見られたものの、多くの鉄鋼、非鉄企業は通常業務を行った。

トヨタ自動車九州は15日朝から生産ラインをストップしていることを発表した。アイシン九州など熊本の部品メーカーが被災し、部品供給が滞る可能性が出たため。

YKKAP八代工場は安全確認できた設備から順次稼働を開始。

【16日の本震】

大鉄熊本で停電が発生。建屋外壁や屋根の一部が崩落し、電気設備の一部が損傷。余震が続き、危険が除去できないため点検作業を見送る。16日以後は事務所内の片付けや電力の回復に集中した。19日に電力が回復し、20日以降は点検作業が本格化した。

スクラップヤード業者のカネムラエコワークスは停止中のガス化溶融炉の煙突が倒れた。スクラップの荷崩れもあり復旧作業に集中。同時に進めていた加工設備の点検は問題がなかったため、18日にはスクラップ切断機などの稼働を開始、スクラップの受け入れ業務を再開した。

熊本県のスクラップヤード業者の多くは荷崩れや事務所での書類の散乱、窓ガラスの割れなどの被害を受けたが、加工設備の安全点検を受け、順次稼働させると同時に受け入れ業務を再開。19日中にはほぼすべての業者が業務を再開した。

不二ライトメタルは本震発生後に夜間勤務者を帰宅させ、16日中に点検、修理を実施。同日夕には通常生産に復帰。

本震で、14日では被害が軽微だった特約店でもダメージを負った。鋼材の荷崩れや事務所内の散乱、停電や電話の不通に見舞われた。16―17日の土日をおして復旧作業を行った結果、一部特約店では18日夕には翌日からの業務再開のめどがつく。これを皮切りに22日までにはすべての鋼材特約店で一部業務再開にこぎ着けた。

非鉄製錬メーカーは影響はなかったか、軽微だったため16日以後は通常操業。しかし一部合金メーカーには、従業員の自宅損壊により出社ができない状況にあることや、客先である自動車メーカーが生産停止にあるため、20日現在で稼働を止めている企業がある。

【鉄鋼・非鉄業界から見た熊本地震の影響】

14日の「前震」では、震源地に近いところでは被害は大きかったが、熊本県北部にある企業では影響は軽微。被害はその場限りにとどまっていたと言える。しかし16日の本震で被害が拡大した。なにより「本震」で自宅が損壊した従業員が多く、出社できない状況にある。マンパワーが必要なときに不足した事態が作られた。このことを指して「復旧はともかく、復興はまだ時間がかかる」と見通す人は多い。

【被災地への支援】

九州にある高炉メーカーの一部は被災地支援に乗り出した。JFEスチール九州支社は水や食料、ガスコンロなどを被災地の取引先に随時、発送している。現地の取引先に直接持ち込んだり、福岡事務所があるところはその事務所に預けている。日新製鋼九州支店は17日と20日の両日に取引先に持ち込んだ。新日鉄住金九州支店は建材部門の取引先に向けて発送した。福岡の営業拠点を窓口に、支援体制が整いつつある。