2014年9月9日

スクラップ業者、不正輸出で通報 家庭用空調に廃棄物判断

環境省が5月上旬、スクラップ商社の泰和商事(本社=東京・八丁堀、中上鉄男社長)を、廃棄物処理法違反(無確認輸出未遂)で警視庁に通報した。家庭用エアコンなどの廃家電をタイに輸出しようとした疑いで、無確認輸出未遂での通報は、スクラップ業者では初めてになる。同社と同様に雑品をメーンに扱うスクラップ輸出業者は多いが、今回の事例では何が問題になったのか。 今回注目されたのは、スクラップに家庭用エアコンが含まれていたことだ。家庭用エアコンは、家電リサイクル法の対象となる4品目に含まれ、国内における適切な再資源化処理が義務付けられている。このため、家電リサイクル法への違反が問題視されたとみる向きが少なくない。 しかし、実際の容疑は廃棄物処理法違反。廃棄物の輸出には環境大臣の許可が必要だが、不許可で輸出をしようとしたというものだ。では、家庭用エアコンがどういう経緯で廃棄物とみなされたのか。 一般的に、廃棄物は金銭価値がないものを指し、有価で引き取ったものは廃棄物ではないとの考え方がある。しかし、実際はそうではない。環境省で家電リサイクル制度の評価・見直しを検討する合同会合は、2012年3月19日に「使用済家電製品の廃棄物該当性の判断について」(以下、3・19通知)を各自治体に発出。違法な廃棄物処理ルートへの対策を強化するため、使用済特定家庭用機器の廃棄物該当性についての判断基準を示した。 3・19通知では、無料または有価で買い取ってもただちに有価物とは判断できないと記載。リユース目的か、リサイクル目的かにかかわらず、性状や有害物質の有無などを総合的に判断してから、有価物とみなされる。 つまり、今回の事例は、泰和商事が輸出しようとしていた積み荷を環境省が目視で確認した結果、廃棄物に当たる可能性が高いと判断したのだ。問題となった荷の詳しい廃棄物該当性評価は現在行われている。 環境省は泰和商事に対して、過去にも行政指導をしてきた。まず口頭による指導、次に文書による指導を行っており、最終段階の厳重注意を行わんとしていたところ、今回の事例が発生したという。環境省の担当者は、「行政指導に応じる限り、いきなり通報ということはない」と話し、改善が見られなかったことが通報に至ったと説明する。