2012年5月24日

神戸製鋼、燃料電池セパレータ用チタン開発 導電性2倍、軽量・長寿命化

 神戸製鋼所は23日、燃料電池用のセパレータに適したチタン素材を開発したと発表した。燃料電池が発電する上で重要な役割をはたすセパレータは、軽量で腐食しにくく導電性が高いことなどが求められる。神鋼はチタン箔の表面にカーボン系材料をコーティングすることで、高い導電性を実現。現在広く使用されているステンレス製のセパレータ素材と比べ、電気の伝わりやすさを約2倍に高めた。チタンはステンレスの半分ほどの重さのため、電池自体の小型化や軽量化も期待できる。

新製品・新技術 燃料電池は水素と酸素を化学反応させ、水を生成する過程で電気を作り出す。電池内部は水素と酸素を反応させるための板(セル)を何層も積み重ねた構造。セルとセルの間にはセパレータとよばれる部品が挟んであり、水素や酸素を供給するための流路を形成したり、隣り合うセル同士を電気的につなぐ役割を担っている。

 高濃度の水素イオンは強酸性のため、セパレータは耐食性のある金属やカーボンで作られることが多い。1台の燃料電池に、多い時で数百枚単位のセパレータが使用されるため、性能と品質が安定し、量産がしやすいことも条件となる。

 カーボンの場合、導電性は確保されているが、耐食性や成形性などの面で課題が多いとされる。また量産レベルで一定の品質を確保しにくく、値段が思うように下がらない状況が続いている。このため重量がカーボンの6割ほどで量産性に優れ、成形も容易なステンレスが近年注目されるようになってきた。ただ、ステンレスの表面に自然にできる酸化保護皮膜(絶縁膜)が、必要な導電性を阻害してしまうという問題があった。

 神鋼が今回開発したチタン製のセパレータは、高耐食のチタン表面に安価なカーボン系素材をコーティングした。値が低いほど導電性に優れていることを表す「接触抵抗」は3―4ミリオーム・平方センチメートルで、ステンレスの約2分の1だった。また、軽く高強度のチタンを使用することで燃料電池の小型化や軽量化にも寄与できるとしている。チタンの場合、燃料電池を劣化させる一因といわれる鉄イオンの溶出もないため、燃料電池の長寿命化も期待できる。

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