2013年9月6日

東北特殊鋼と東北大、燃料電池用快削電磁ステンレスを開発

東北特殊鋼は5日、東北大学と共同で燃料電池用快削電磁ステンレスを開発したと発表した。固体高分子形燃料電池を健全に作動させるために、純水の流れを制御する電磁弁鉄心用の需要を見込む。従来、快削材料がなかった高耐食性電磁ステンレス製の水用電磁弁部品の加工コストが低減され、燃料電池の普及促進に貢献することが期待されるという。開発成果は、9月24日に福島市で開催される腐食防食学会主催の「第60回材料と環境討論会」で発表する。

固体高分子形燃料電池では、電解質膜の加湿、水素を発生させるための都市ガスの水蒸気改質、電極の冷却などのために純水が使われる。この純水の流れを制御する電磁弁の部品の腐食や、材料成分の溶け出しなどによって水質が劣化すると、発電性能の低下を速めることから、これらの部品には水環境で高い耐食性を持つ材料が使われている。そのような高耐食性と優れた磁気特性(電磁弁を動かす電磁石の鉄心としての性能)を持つ材料として、東北特殊鋼の電磁ステンレス(K―M38)が広く使われているが、高い耐食性を持たせるために、主要組成(18Crなど)以外には、マンガン硫化物(MnS)などの切削性を良くする成分をほとんど添加していないことから、電磁弁メーカーなどから切削性の改善を要望されていた。

K―M38は近年、固体高分子形燃料電池部品用材料としての普及が進み、切削コストを下げたいとのメーカーの要望が強くなってきたことから、金属材料中の硫化物の電気化学的性質に詳しい東北大の原信義教授が東北特殊鋼から委託を受け、固体高分子形燃料電池を模擬した水環境(80℃、超純水)でのK―M38CSの耐食性と成分元素の溶出挙動について評価した。その結果、K―M38CSはチタン炭硫化物が分散していても、K―M38と同等の耐食性を有し、代替鋼として使用可能であることが確認されたため、詳細を腐食防食学会主催の第60回材料と環境討論会で発表するとともに、試作材を電磁弁メーカーのサンプル評価に供しながら、順次、量産することとした。

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