2011年3月15日

設備点検作業も難航 人命優先で確認作業

 大地震の被害は電炉、ステンレス、合金鉄メーカーや流通加工会社など鉄鋼業界に幅広く及んだ。社員や家族の安否確認を進めながら、設備などの点検を進めており、通信や交通に支障が出る中で作業は難航している。設備などの直接的な被害もさることながら、要の電力供給が途絶え、道路網など物流インフラにも大きな被害が出ており、多くの事業所で通常操業を再開するめどは立たないようだ。

 普通鋼電炉ではJFE条鋼仙台製造所がグループ会社、協力会社を含めた従業員の安否を全力を挙げて確認している。東北スチールは当日出勤した従業員に被害はなかったものの、自宅に居た従業員の安否確認が進んでいない。伊藤製鉄所石巻工場も従業員の安否確認を急ぐ。石巻で生産していた異形棒鋼について、筑波で代替生産することも考えてはいるが、顧客データなども消失した可能性があり、まずは人命優先で確認作業に奔走している。東京鉄鋼八戸工場は人的被害はなく、設備についても重大な損害はなかった。

 ステンレスでは新日鉄住金ステンレス(NSSC)の鹿島製造所が操業を休止し、設備を精査している。日本冶金工業の川崎製造所は地震直後の停電は9時間程度で復旧し、今後の電力状況を見ながら生産を再開する。日本金属は福島工場の敷地が一部損壊したが、操業に影響はなく、14日午後から生産を再開した。日本金属の板橋工場は影響が少なかったため、12日から操業を続けている。

 合金鉄では八戸の大平洋金属が津波で冠水した設備被害に加えて、停電でフェロニッケルの生産を休止しており、損傷具合をなお調査中で再開のめどは立たないという。中央電気工業はマンガン系合金鉄を生産する鹿島工場ですべての生産を停止して設備の被害を点検中で、電力供給を確保したうえで早期の生産再開をめざす考え。

 流通では岩沼工業団地の鉄鋼社の東北営業所は事務所がひざ下まで浸水し、機械設備に影響はない様子だが、営業再開の見通しは立たないという。同じ地区の新興金属の仙台支店も1・5メートルの浸水被害で再開は未定。藤田金属では東北コイルセンターが1メートル強浸水して休止し、郡山コイルセンターは外壁の損傷などを受けて、操業を止めて点検している。

 このほか日鉄物流でも現地社員の安否確認を進めながら、緊急対応をにらんでトラックを待機させている。山九では東北地区の人的被害はなかったが、現状把握や燃料確保に努めている。JFE物流では仙台の物流拠点に破損を受け、安否を含めて状況を確認している。

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