2011年3月18日

特殊鋼、代替生産の動き メーカー、来週にも計画整備

 高炉メーカーと特殊鋼メーカーは、東日本大震災で被災した製鉄所の応援を含め、特殊鋼棒鋼線材の生産体制を見直し、来週内には生産計画を整える見込みだ。新日本製鉄が釜石製鉄所、JFE条鋼が仙台製造所の代替生産を、グループの製鉄所や他メーカーに要請を検討。震災による工場停止と東京電力による計画停電によって、自動車生産が減速する可能性があり、新日鉄とJFE条鋼は、需給バランスを考慮した最適生産を求める。神戸製鋼所は協力姿勢を示しており、阪神・淡路大震災時に見られた支援態勢で、難局を乗り切ることになりそうだ。

 釜石製鉄所はタイヤ用スチールコード用やCH用の線材など、月間に約6万トン製造していたが、操業再開のめどが立っていない。特殊線材は室蘭製鉄所と君津製鉄所、普通線材はグループのNS棒線や合同製鉄で代替生産が可能であり、最適な生産配置を検討中。神鋼には鋼材全般での支援を打診し、代替製品の詳細は今後詰める。住友金属小倉は能力フルの生産で、対応が難しいとみられている。

 JFE条鋼仙台は特殊鋼棒鋼・線材を約7万トン製造し、JFEスチールに肩代わり生産を要請。JFEスチール西日本製鉄所倉敷地区で製造できない品種もあり、他の特殊鋼メーカーなどへ応援要請を始めている。新日鉄、JFE条鋼とも生産の代替には顧客の了解を得る必要があり、同様の顧客に納めている他メーカーへの代替から取り組む見通し。

 一部自動車メーカーは、すでに特殊鋼のメーカーに代替生産を要請。足元は自動車各社が工場の多くを停止し、鋼材の供給不安は生じていないが、材料確保に動く部品メーカーのほか、JFE条鋼仙台では関東の顧客に直送する関係上、顧客での在庫が少なく、緊急応援を要するもケースもある。

 計画停電による影響もある。自動車の工場ラインは停電前後の準備によって停電時間以上のロスが生じ、停電時間が日々変わるため、生産水準が低下する公算が大きい。需要が不透明なため、新日鉄やJFE条鋼から打診を受けているメーカーでは、「全体を把握した生産計画でなければ、供給過剰になる恐れがある」と指摘している。