2016年4月6日

神戸製鋼所 川崎博也社長 16-20年度グループ中期経営計画の一問一答

――輸送機の軽量化に1000億円規模の戦略投資を実施するが、その内訳と、これまでの投資との違いを。

「戦略投資1000億円の内訳を公表することは差し控えたい。これから検討する生産拠点はひもが付いておらず、今の生産拠点を持つエリアでの付加価値を高めたい。自動車の軽量化はこれから高強度、高加工性。これはスチール、ハイテン、アルミもそうである。それが一番必要な拠点に投資する。主はハイテンやアルミ板。需要が見込まれる北米などにはそれ以外でも投資を考えていきたい」

――20年度の連結経常利益目標は。

「今の総資産アセットで2兆2000億円ぐらい。単純に掛け算すると経常利益は1100億円。これから戦略投資を実施するので、これが20年度では2兆8000億円になり、利益は1400億円を目指すことになる。事業別では目標値が異なるため、個別の回答は差し控えたい」

川崎博也社長2 ――グループビジョンGの最終目標が連結経常利益2000億円。電力事業がすべて立ち上がる23年度の経常利益のイメージは。

「2000億円が視野に入ってくるところを狙いたい」

――業界再編に対する考えはどうか。

「我々は色々な事業で構成される複合企業であり、これをさらに強くする。自動車の軽量化でスチールとアルミが完全にコラボな状態になり、それを武器にこれからのマーケットを狙っていく。その成長は十分できる。航空機しかり、機械も新たな参入領域がある。ユーザーの熱いラブコールもある。素材系事業、機械系事業、電力事業を含めた3本柱があれば神戸製鋼単独で十分会社としての体を成す。再編は一切考えていない」

――航空機は認証難しく、投資回収に時間もかかるが。

「きわめて時間がかかる。実際の供給やキャッシュインは20年とか21年でも、その前にモノを造っていく必要がある。ただ、下流に行けばいくほど付加価値が高いし、国内完結のサプライチェーン構築によりプレゼンス上がる。チタンの加工は非常に歩留りが悪く、9割がスクラップになるがそれを国内で使えるの効果が出てくる。あとは機械加工をどこでやるか。チタンは加工が難しく、大型加工機を購入して開発に入る。日本エアロフォージのときのように他社と折半でするということはないと思う」



――この中期で、建設用鋼材をどのように位置付けているか。

「数量は減っていく。オリンピック需要があるので、この分野を強化するという発想はまったくない。むしろ少なくする。この粗鋼で利益を出すにはハイテンと特殊鋼のとくに線材に特化し、その比率を上げていく」

――キャッシュ対策として、1000億円のうち、どの程度、資産売却でまかなうか。

「具体的な案件は言えないが、1000億円のうち、資産売却が比率的に大きくなる」

――中国の建機事業の収益力強化について、黒字化のタイミングは。

川崎博也社長3 「能力を20%減にするが実需はそれより下で、組立の固定費はそれなりに抑える。製缶は杭州から輸出できるので、減らした能力の中でフルキャパで製造する。人員はピークの10年から40%削減し、足元1400人。今後、要員をどうするかは製缶能力と組立能力のバランスを見ながら最終的にフィックスしたい。黒字化については、15年度で保守的に見ていた中国とインドネシア事業での150億円の貸倒引当金が16年度にはなく、単純に考えればそれだけで黒字になる。中国はインフラ関連でポジティブな話は出ているが、増えると見ていない。中国には50―60万台の建機のストックがあり、10年程度で更新されると見られる。ただ、直近の稼働率は低く、年間の買い替え需要は3―4万台。当社としては20年で年6500―7000台の生産で計画しており、保守的に見た上でこれだけの利益を出せる事業にする」

――大型ターボ圧縮機事業について、石油・ガス市場はダウントレンドにある中で参入の意義は。

「大型ターボはギア内蔵の方が効率に優れている。技術的に設計、製造が難しく、欧州2社の寡占状態。地理的にアジアは遠くアフターサービスの部分や価格面などで、アジア市場で1社あればということは前から言われていた。従来の20万N立方㍍から、今後は40万N立方㍍クラスの大容量の市場が増えるという前提で開発を進めており、実際に作ってコストも検証している。唯一、フルロードで回せない点があり、それを現在、検証している。条件として整ったので、第三極になれる。アジアをメーン市場にする。航空機に関しては、機械メーカーの認証に非常に時間が掛かり、すでにその準備に入っている。実際の供給開始は20年以降だが、それまでにものを作る必要がある。キャッシュインは20年以降となる」

――設備投資について、前中計との比較を。

「前中期の3年間で電力事業では約3000億円。鉄鋼事業などでは上工程集約等で4500億円レベルの戦略投資を意思決定してきた。それにベース投資を実施してきた。今中計は年間1000億円程度の減価償却見合いで5年間で5000億円弱になる見込みだ」

――エンジニアリング分野の取り組みを。

「鉄源ビジネスは市況からみても伸びるとは考えにくい。原発の廃炉ビジネスについては20年以降出てくるとみている。神鋼環境ソリューションは再生可能エネルギーの世界でビジネスが成り立たないかと考えている。当社のエンジは海外に強く、神鋼環境ソリューションは国内に強い。ソリューションの水処理海外ビジネスをエンジ部隊の支援で強化したい。コア事業として手を打っていく」

――製鉄所の設備延命などは。

「過去に非常に収益が悪い時にコストを抑えて痛い目を見た。更新とかメンテナンスはやってきたが、直近も安定稼働上の問題が発生しており、16、17年度はしっかりやる。18年度は高炉停止で減っていく」

――20年ごろの鉄鋼市場の見通しは。

「鉄鋼の5年先の量を読むのは難しいが、少なくとも13年では20年には1億トンを割るとみていた。あくまで当社が保守的にみているだけだが、自動車が減るだろう。ノックダウンは台数を維持するかもしれないが、造船は18年を境にピークアウト、五輪需要も20年ではどうかなとか考えると、全国粗鋼は減ってくる。どのくらい中国、韓国から入ってくるかだが、いろいろな要因を含め、今回の中計では全国粗鋼は1億トンを割り、当社に関して言えば697万トンを想定している。加古川の粗鋼はフルキャパを保てる。特殊鋼の線材とハイテンをフルフルに持っていく」

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