2013年12月9日

鉄鋼新経営―新たな成長シナリオ― ■シリーズトップに聞く 神戸製鋼所社長 川崎 博也氏 3方向から新たに仕掛け/グローバル自動車戦略 材料を現地で供給

――収益が急ピッチで改善している。14年3月期連結決算は経常利益700億円(前期181億円の赤字)、純利益600億円(269億円の赤字)を見込む。

「グループ一体となって生き残りを賭け、今期の黒字化を目指してきた。社長就任後、経営の意志として連結経常損益の黒字化必達を掲げ、期初見込みは経常利益450億円でスタートしたが、在庫評価益などの一過性の増益要因や環境好転にも恵まれ600億円、700億円と上方修正してきた。上期実績が431億円と想定の350億円を上回ったが、通期見込みは700億円で据え置いた。下期には、上期の利益上振れ分の反動を織り込んでいる」

――懸案だった鉄鋼事業の収益回復に、めどがつきつつある。

「鉄鋼事業部門は今期、黒字化を見込む。IPP(電力供給事業)などを除いた鋼材部門は残念ながら今期は未だ赤字となるが、鋼材部門の黒字化計画を、中計策定時の15年度から14年度に1年前倒しする。さらに加古川製鉄所の新溶銑予備処理設備や2GTCCが14年度中に稼働し、15年度では100億円程度のコストダウン効果を実現する。さらに17年度に予定している上工程の加古川集約で150億円程度の追加コストダウンを実施することで、12年度比トン1万円のコスト削減を実現し、勝負できる体制を整える」

――中期経営計画(2013―15年度)で掲げる経常利益800―1000億円が視野に入ってきた。

「今期は役員報酬カット・管理職給与カット、日当の減額や一時金の引き下げなど、100億円規模の緊急対策を行っている。従業員の頑張りに報いるため、一時金の金額水準をある程度戻すなど、緊急対策の解除も検討する。そのうえで相応の利益レベルを維持して初めて成長への確信を得ることができる。来期が本当の勝負となる。気を緩めるつもりはまったくない」

――さて新たな成長に向けてのシナリオを聞きたい。中期計画では、「経営基盤の再構築」に向けて、成長分野・地域での販売量の確保をテーマの一つに掲げる。

「長期安定成長が見込める自動車分野が、最大のターゲットとなる。ガソリン車、ハイブリッドカー、電気自動車、燃料電池車(FCV)のいずれも車体軽量化が求められており、素材系のアプローチを推進する。国内ではFCV用水素ステーション市場の広がりにも大きな期待を寄せている。機械系ではシェールガス革命による米州のビジネスチャンスを発掘する。これら3方向から、新たに仕掛けていく」