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更新日: 2017年3月13日

欧州鉄鋼事情を聞く ■新日鉄住金欧州事務所長 小林 二郎氏 鋼管事業、油価下落で計画延期 EUETS改革、莫大なコスト負担

欧州鉄鋼事情を聞く ■新日鉄住金欧州事務所長 小林 二郎氏 鋼管事業、油価下落で計画延期 EUETS改革、莫大なコスト負担

欧州鉄鋼業は輸入材との競合や環境規制などの向かい風を受け、再編の動きも出ている。欧州の中心部、ドイツのデュッセルドルフで欧州業界を見てきた小林二郎・新日鉄住金欧州事務所長に現地事情などを聞いた。



――欧州での活動は。



「事務所は1958年に設立された。ルール工業地帯が隣にあり、ドイツの製鉄技術や機械を日本に紹介することが主だったと聞く。今は欧州地域にいる顧客への技術サービスや情報収集などが主な役割。カバーしているのは欧州全域と旧ソ連、トルコ。以前はアフリカもカバー地域だったが、原料と一部鋼管以外は、14年にドバイ(事務所)に移管した。当所には私を含め駐在員が12人いる。パイプ関係者が一番多く、今年度になってチタンと知的財産でも人が増えた。1人は新日鉄住金エンジニアリング(製鉄プラント)からの出向。販売構成は鋼管が約5割、厚板が約1割で、こうしたエネルギー関係で約6割を占める。あとは重電メーカーをメーン顧客とする電磁鋼板が多い。欧州本社で購買や技術の意思決定がされて、デリバリーは中国、東南アジア、メキシコなどでされるのもある。マーケット情報なりいろいろな情報を収集している」



――事業環境は。



「パイプがメーンの中で油の値段が下がってプロジェクトが延期になったりしている。油の値段が少し戻ってきたが、まだ本格的な回復という感じではない。ロシアは経済制裁の中で自国でのパイプ調達にシフトしているのでロシア向けは難しくなっている。パイプ関係はノルウェーのスタットオイル向けが多い。あとはイギリスのBPやロイヤル・ダッチ・シェル、仏トタルなどだ」



――欧州鉄鋼業の状況は。



「鉄鋼再編の動きに注目しているが、タタ(製鉄欧州)とティッセンクルップの合併がどうなるか、イタリアのイルバを誰が買うか、この2つが大きな動きだ。タタはイギリスのポートタルボットで、年金基金をいかに切り離すかが前提条件で、これが進まないとティッセンクルップもタタと一緒になれないだろう。ティッセンクルップの経営陣や株主からすれば鉄鋼事業が重荷なので切り離したいが、組合は合併によってリストラを懸念し反対している。時間もかかるだろう。(タタ欧州のオランダ拠点)アイムイデンは競争力があるが、ポートタルボットは老朽化が進んで競争力がないと言われる」



「イルバは約3年前から環境問題により実質国営化されている中で売却をどうするかだ。売却先はアルセロール・ミッタルとマルチェガリアが組んでいるグループと、イタリアのアルベディという電炉メーカーとJSWスチールなどのコンソーシアムと2つに絞られた。イルバのタラント製鉄所は約1000万トンの能力で実際生産は500万―600万トンだ。イタリア政府としては1万人以上の雇用を守らないといけない。タラントには80年代から05年まで旧新日鉄が技術協力している。ヴァーレマックス(40万トン級鉱石船)が入る港も恵まれているし、地中海を隔ててトルコ、中東、北アフリカを含めて位置的にはいい。潜在的な競争力はあると思う」



――ポートタルボットも効率化したという。



「為替影響もあるだろう。イギリスのポンドが、ブレグジット(英EU離脱)が決まってから対ユーロで大きく下がったので、その効果もあるのではないか」



――欧州は環境規制が厳しい。



「20年以降を対象としたEUETS(欧州域内排出量取引制度)改革案の議論が盛んだ。今までは無償排出枠が潤沢にあった。それを絞ろうとしているので、足りない分を買わないといけなくなる。欧州だけそういう規制がかかると不公平だと。競争力がなくなって生産を減らして、CO2(二酸化炭素)を大量に出している国から鋼材が入ってくるだけだ、と欧州鉄鋼協会も含めて反対している。地球全体から見たら全然よくない。現在はカーボンクレジットが低迷している。(CO2トン)数ユーロだ。EUETS改革は人為的に40ユーロくらいまで上げたいと思っている。すると鉄鋼業に莫大なコスト負担が生じることになる」



――他に注目点は。



「自動車産業がどうなるか。ディーゼル車のシェアが半分くらいあるが、今年から排ガスチェックに実走試験が導入される予定で、特に小型ディーゼル車では排ガス規制をクリアするのが難しい。電気自動車、プラグインハイブリッドとか含めて欧州の自動車メーカーが力を入れている。素材の世界も大きく影響を受ける可能性がある。あとは自動走行とかカーシェアリングがどうなっていくかも注目点だ」



――ドイツだけ強いのはなぜか。



「元々産業の競争力が高い。ユーロはギリシャやイタリアといった経済の弱い国にとっては高過ぎ、ドイツにとっては安過ぎる通貨だ。ドイツは世界最大の経常黒字国だが、ドイツから経済の弱い国に財源が分配されず、緊縮財政を押し付けられることへの反発が強い。それが各国で反EU政党の勢いをつけている。EUやユーロが、今後統合を深化させていくのか、それともより緩やかな連合になっていくのか、欧州は今岐路に立たされている。イギリスはユーロ、シェンゲン協定にも入らず、EUから距離を置いていたが、移民や主権の問題などから離脱を決めた。ただ離脱交渉の過程で相当混乱が出てくると思う」



(正清 俊夫) ...
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2017/08/17調べ (△印は上げ、▼印は下げ)
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