2017年7月28日

目指すは日本版静脈メジャー:リサイクル4社共同出資会社 「RUN」の挑戦【中】 有価・廃棄物の垣根解消/リストを共有、業務標準化も視野

鈴木会長(右)と安東社長
スズトクホールディングス、マテック、やまたけ、青南商事の4社は7月3日付で東日本エリアをカバーする共同出資会社「株式会社アール・ユー・エヌ(RUN)」を設立した。RUNの鈴木孝雄会長(スズトクホールディングス会長)、安東元吉社長(青南商事社長)に7社提携からRUN設立に至った経緯、将来ビジョンなどを聞いた(敬称略)。

――7社包括業務提携開始から2年4カ月が経過した。これまでの進捗とシナジーを。

鈴木「7社提携に関する活動は大きく2つ。成長戦略研究会と称する経営トップの勉強会とトップ会談を四半期に1度開催するとともに、6つの分科会で営業やシステムなどの担当者が情報交換などを行っている。分科会の会場は7社持ち回りで、互いの工場や設備を見学することで技術レベル向上などにつながっており、また単体での企業活動に比べて刺激や情報が多く、企業の力を高めることに寄与している。この中で信頼感も醸成された。28カ月の共同作業で培われた信頼、パートナーに対する理解があり、今回、7社のうちの4社が共同出資会社を設立するに至った」

――そのRUNが7月3日に設立された。

鈴木「日本が目指している高度循環型社会を実現するには、製造業などの動脈産業に対応する静脈産業の発展が必要不可欠。静脈産業はマテリアルリサイクルと廃棄物処理に大別されるが、廃棄されるものをいかに再資源化し、高度に循環するかが重要になっており、2つの垣根が解消されつつある。廃棄物には一般廃棄物と産業廃棄物があり、例えば自治体が処理する一般廃棄物は人口減少で焼却設備の稼働率が低下し、財政難で民間への委託が加速するとみている。欧米ではマテリアルリサイクルと廃棄物処理の急速な集約が進み、売上高1000億円以上の静脈メジャーは数十社に達している。これに対して、日本は売上高500億円規模が最大で、その数は2桁に満たない。主要プレーヤーは10億―20億円の売り上げ規模で活動範囲は地域限定型になり、状況変化に対応し切れない。われわれは社会的要請に応えられるよう、静脈産業を再編しようと考えている。RUNは出資4社のホールディングス企業と同様の機能を持つ。各エリアのナンバー1企業が集結した意義は大きく、インパクトがある。今後、エリアで集約する動きが出てくるはずで、RUNはこの先駆けになる。次世代が主導権を握ることが大事で、社長は安東さんにお願いした」

安東「自分なりに静脈メジャーを学んできた結果、鈴木会長の思いに共感している。歴史を見ても、4社は互いをよく知っており、東日本は提携を組みやすいエリアでもあり、RUN設立に至った」

――RUNはどのように事業を進めるか。

安東「8月をめどに共同仕入れと共同販売を本格的にスタートする。設立後は営業部、販売部、管理部、経営企画部を立ち上げ、各部で事業スキームの構築を図っている。現在、事業スキームや社内規定などを策定中で、共同事業に向けて準備を進めているところだ。共同仕入れは4社の仕入れ先リストを共有するとともに、新規ターゲット企業もリストアップし、役割分担を決めた上で、実績のない企業への飛び込み営業を含めて営業を推進する。西日本も含め、共同仕入れが広域になれば廃棄物が扱いの中心になり、ここからメタルスクラップの集荷につながる」

安東「国内販売および輸出などの共同販売では、遠方輸出などでスケールメリットを発揮する。また、月間ベースで4社それぞれ一定の出荷責任数量を設定することで、1社当たりの市況や為替変動リスクを軽減できる。国内外顧客リストを4社内で共有し、4社の販売方法なども精査しながら、国内商社経由や海外バイヤー経由、海外エージェント経由、現地メーカー直接取り引きを含めた幅広い形態の中から、最適な方法を選択していきたい」

鈴木「これらは28カ月に及ぶ共同作業による信頼関係があって初めて可能になった」

安東「共有する情報は企業秘密が多く、アライアンスレベルでは開示が難しい。今回は秘密保持契約を締結している。情報をすべて提出・分析することで、4社の持つ能力、強みをシナジーとして高め、より戦略的に事業を進めることが可能になり、新しいマーケット創出に結び付ける」

鈴木「マテリアルリサイクルと廃棄物処理が一体となっており、4社は廃棄物も相当扱っていることから、集荷は限定されない。発生元から出るものは有価物であろうと、廃棄物であろうと、区別せずに受けられるのが理想であり、そこを目指す」

安東「共同仕入れ、共同販売の次ステップとして、将来的には業務標準化も進めていく。品質管理を重視し、4社のノウハウを共有することで、仕入れからヤード保管、維持管理、出荷までの一貫プロセスで高品質を確保する。システムを含めた事務業務部門、ヤードオペレーション部門も業務標準化のターゲットに入れていくことも将来的には想定している」(濱坂 浩司)