2015年1月26日

大阪府電気工事組合がNPO法人 電線スクラップ剥離作業 障がい者自立を支援 雑線国内リサイクル促進も

 大阪府電気工事組合などが設立したNPO法人「環境と福祉に貢献する会」(略称JENWEL=ジェンウェル)は、府内の福祉施設において電線スクラップの被覆剥離作業を通じ、障がい者の自立支援を行っている。現在11施設において、障がい者の就労・賃金向上に貢献。雑品扱いで多くが輸出されている細径の電線スクラップを、国内でリサイクルする取り組みとしても注目を集めそうだ。

 JENWELは2013年、大阪府電気工事組合の有志と機械加工メーカーによって設立された。現在会員は約100社に上り、在阪の電線メーカー、電線流通問屋なども加入して、電気工事現場や工場などで発生する電線スクラップを提供している。

 段ボールやフレコンバックで送付された電線スクラップは、市中の雑品相場に準じて有償で買い取る。それを品種や線径サイズごとに仕分け、一定の長さに切断して、各福祉施設に剥離を委託し、銅線と被覆材を回収している。14年の銅線回収実績は13トン。被覆の剥離には、会員である精密加工メーカー・アスク(本社=大阪府枚方市、長倉貞雄社長)が自社設計・製造している小型電線被覆剥離機「電線マン」の無償貸出を行っている。

 授産施設で働く障がい者の全国平均賃金は月間で約1万3000円(13年度)と非常に低いが、大阪府は全国でも最下位。JENWELはその改善のために発起されたものだが、これまでの実績では、電線スクラップの剥離作業で支払われる手数料によって、賃金は1・5―2倍にアップしているという。

 ワイヤハーネスやVVF(屋内用配線)など細径の電線ケーブルの被覆剥離は、銅の回収量が少ないため国内ではコストが合わず、雑品として輸出されるケースが多い。しかも輸出先の中国などでは、野焼きによって被覆材を取り除くため環境負荷が大きく、PM2・5の発生原因にもなるため、結果的に環境汚染を輸出することになっている。

 電線スクラップの発生元である企業にとっても、売却益に加え、障がい者支援・環境といった社会的責任(CSR)を両立できる。JENWEL事務局は今後、電線を扱うメーカー・流通のほか、スクラップ流通業者や産業処理業者にも幅広く入会者を募集していきたい考えだ。

 現在、自治体などから、別の障がい者施設でも始めたいなどと引き合いが増えている。事務局の長倉純平さんは「電線が集まれば、もっと活動を広げることができる。良質の電線でなくても構わないので、ぜひご協力をお願いしたい」と呼びかける。問い合わせ先はJENWEL事務局(TEL072―808―5555、アスク内)まで。