2020年3月30日

JFES構造改革 北野嘉久社長一問一答 能力2500―2600万トンに設定 高級材伸ばし競争力強化

JFEスチールが東日本製鉄所京浜地区の高炉休止を含む製造体制の構造改革を決断した。国内需要の減少見通しから生産能力の調整の必要に迫られ、製造体制の見直しを検討してきた。激化する中国など海外勢との競争も見据え、競争力の強化に向かう。27日に記者会見を開いた同社の北野嘉久社長は「強じんな企業体質にする」と世界で勝ち残るために改革に挑む考えを示した。一問一答は以下の通り。

ーー高炉休止に至った背景は。

「米中貿易摩擦による鉄鋼需要の低迷、中国の粗鋼生産拡大による原料高・製品安、また日本の国内需要の減少、海外勢の能力増強などこうした事業環境が今後も続く見通しから判断した。原料高、製品安は昨年4月から現れ、収益を圧迫した。中国、インドの能力増強計画が現実的のものとなってきたことを踏まえ、構造改革を社内で検討してきた」

ーー新型コロナウイルスの影響は判断に影響したか。

「構造改革は新型コロナ以前から検討してきた。中長期的な戦略に基づくもので、新型コロナとは影響はない」

ーーこれからの事業戦略と需要見通しについて。

「どう収益を上げ、成長していくのか、この1年の大きな課題だった。世界ははん用品の分野の競争がし烈だ。世界最高の技術をもって社会に貢献するという当社の企業理念の通り、自動車、電磁鋼板、エネルギー分野の高級品分野はしっかり伸ばしていく。長年築いてきた顧客とのサプライチェーンはしっかり捕捉していく。2030年に向けた内需の減少率は年率1%と想定している。そこで年産400万トンの粗鋼能力が過剰と考えた。これは高炉1基分に相当する。将来の事業環境を踏まえ、断腸の思いで決断した。機能維持投資と固定費の削減を考え、強じんな企業体質にする。今回の構造改革は現時点での最善策と考えている。3000万トンをめざしてきたが、内需が減っていくこれからは2500ー2600万トンを最大の能力として構えるべきだ」

ーーコロナウイルスの生産への影響は。

「国内の自動車会社は4月上旬までの工場の操業停止などを公表しているが、中旬以降はどうなるか。現在、他の需要産業含め4ー6月の情報を収集しているが、非常に読みにくい状況だ。高炉の減産は1日当たりの出銑比を落とす、一時的な休風、バンキングによる一時休止など手段があるので、これからの需要を見ながら判断することになる」

ーー統合以来、過去最大の損失となる。統合時との違いは。

「当社は03年に統合・発足したが、中国の経済成長が立ち上がった真っ盛りで鉄鋼需要が旺盛だった。中国の経済成長にけん引され、日本も勢いがあった。リーマン・ショックがあり、その後の日本経済の浮き沈みもあった。19年度は世界経済の失速、中国が年10億トンの粗鋼を生産することによる原料高、製品安となっている状況で、統合時とは状況が大きく変化し、厳しい状況を迎えている」

ーー本年2月の業績予想修正発表時に高炉休止を同時になぜ公表できなかったのか。

「構造改革については決断に至っていなかった。大きな構造改革であり、高炉を停止するか議論を重ねてきた。2月には間に合わなかった」

ーー高炉停止はなぜ京浜地区だったのか。

「東日本製鉄所で検討してきたが、千葉地区か京浜地区にするか慎重に判断した。千葉地区は自動車用鋼板の比率が半分以上。また、ステンレス、鉄粉は千葉地区だけで製造している。機能維持投資の規模を千葉、京浜で試算したが京浜のほうが大きい。京浜地区では高級材の建材用厚板と鋼管類の生産を残すことにした」

ーー京浜地区の跡地利用は。

「250ヘクタールの跡地になるが、行政ともしっかりと議論していきたい。協力会社とは1社1社丁寧に対話を続け、構内で継続できる仕事や地区間でできる仕事を探していく」

ーー今回の構造改革により収益が確保できる体制となるのか。

「安定的に黒字になる会社になるが、新型コロナの影響など厳しい状況なので予想は難しい。ただ、改革によって全社の平均限界利益は上がる。注力する高級品のプロダクトミックスの比率が上がり、トン当たりの限界利益は改善する。一方で固定費は下がっていく」

ーー世界の鉄鋼業界のなかで、どのように勝ち抜くか。

「日本の鉄鋼業界は、世界最高の技術をもっている。当社は品質、新商品、性能の良い鋼板など世界に冠たる技術がある。ここをどう伸ばしていくか。長年蓄積した技術で世界をリードしていく」

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