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JFE商事の経営戦略 PostCoronaを見据えて 織田直祐社長 グループ連携一層強化 JFES材以外のビジネス拡大注力 独自の収益基盤創出

――2020年4-9月期の連結セグメント利益は72億円で、8月時点の予想55億円からは上振れた。

「米中覇権争いが深刻化する中、新型コロナウイルスが拡大。世界経済が急減速し、国内の経済活動も停滞する中、4-6月のセグメント利益は前年同期比44%減の44億円にとどまった。7-9月は需要減、在庫調整などによって状況がさらに悪化すると見込んで、前回、上期予想を55億円としたものの、7-9月の落ち込みは想定より小さかったことから72億円となった。上期は前年同期比5割減となったが、JFE商事単体は3割減、海外グループ会社が7割減と落ち込んだ。米国のケリーパイプを主体にエネルギー関連分野が想定以上に悪化し、ASEANはじめ海外の一部では為替影響も加わった。また、国内グループ会社は5割減だが、需要減に加えて、メーカー商社特有のJFEスチール活動水準低下に伴う、資機材関連や精整加工量の減要因もある」

――通期のセグメント利益予想を120億円から130億円に上方修正した。上期実績や市場環境改善等を踏まえると慎重な予想に見える。

「当初見通しは上期55億円、下期65億円だった。確かに上期は上振れたが、エネルギー関連ビジネスの先行きに依然不透明感があり慎重に見ている部分もある。下期はIFRSによる会計上の時期的要因も発生する。ただし、一過性要因を除くと四半期別では、7-9月期がボトムで、10-12月、1-3月と緩やかな改善を見込んでいる」

――中期経営計画(18-20年度)の最終20年度のセグメント利益目標は370億円。

「初年度が357億円となり、19年度は360億円を目標に掲げてスタートしたが、米中覇権争いによる世界景気変動、国内外の需要低迷が続いたこともあって270億円にとどまった。さらにコロナ禍が加わり、本年度は中計目標をいったん脇において、足下の緊急対策を優先してきた」

――定性面では、足元固めと次の成長に向けた攻めの両立をメーンテーマに掲げた。

「事業構造改革と海外事業投資を積極的に推し進めてきた。かつての収益構造のままだと、本年度はもっと厳しい業績になっていただろう。絶対値はいろんな見方があるが、コロナ禍もいずれ収束する。一喜一憂せず、コロナ前の状況に戻るものと戻らないものを冷静に見極めながら、その先の成長に向けてしっかりと考え抜いていく」

――3年間600億円の投融資を計画する。

「成長が見込まれる電磁鋼板、自動車鋼板などの分野で投資を着実に実行してきた。電磁鋼板については、北米では、同地域最大の変圧器用コアメーカー、コジェントの買収、JFE商事スチール・アメリカ(JSA)のメキシコ拠点等の能力増強を行い、中国では、自動車向けモーターコア加工の浙江ブルジョア社へ出資し、ASEANではモーター部品メーカー一宮電機(IME)/タイへ出資する等を実施してきている。国内外グループの加工・製造拠点における安全・劣化更新投資も徹底してきた。投資実績は18年度229億円、19年度114億円、本年度はこの状況で厳選し、約140億円程度と見込んでおり、合計約480億円の見通し」

――米国の鋼管問屋、ケリーパイプは収益の波が大きい。

「18年度は60億円以上の利益を計上したが、エネルギー市況低迷によって19年度以降は苦戦している。シカゴ拠点の閉鎖、サンタフェ、ヒューストン、フィラデルフィアなど主要拠点の土地自社保有化によるコスト削減などの手立てを講じてきているが、更なる対応策を考えていきたい。一方でEコマース拡大による物流倉庫の建設ラッシュもあって建設向けの鋼管需要が旺盛。西海岸にある溶接鋼管メーカーのVESTは10月に過去最高の生産を記録している。トレードを行う米国JFE商事も堅調に推移している」

――国内外で事業会社の構造改革を加速してきたが、今回国内では、さらに一歩踏み込んだ。

「新潟地区の薄板加工事業の最適生産体制を目的に、藤田金屬とグループ会社の新潟スチールでアライアンスを締結した。新潟スチールは主力の切板加工事業の強化に傾注し、スリット加工事業を藤田金屬に委託する。藤田金屬は、シャーリング加工の一部を新潟スチールに委託する。また、関西地区では、小野建グループから三協則武鋼業の一部株式を取得した。熱延鋼板の加工分野では、甲南スチールセンター、近江産業、大阪鋼圧などのグループ会社が事業を展開しているが、三協則武との連携によって、もう一段広い視点で最適生産体制を構築できる。国内の鉄鋼需要が縮小する中、それぞれが得意とする分野に経営資源を集中することで、エリアにおける過剰投資を避けつつ、各社の経営基盤強化を図る。機能を効率的に高め、勝ち残っていくには、従来と異なる次元に踏み込んで構造を変える必要があると判断した」

――16年4月に就任し、風土改革を加速し、JFEグループ全体最適の考え方も浸透してきたが、日本鉄鋼業は新たな構造問題に直面している。Post Corona時代も見据えた、JFE商事の次の経営課題は。

「まずはJFEグループの中核商社として、JFEスチール、JFEエンジニアリングとの連携をさらに強めていく。スチールは、収益基盤回復に向けて抜本的構造改革を加速する方針を打ち出している。スチールの戦略と同期化し、サプライチェーンの機能を拡充していくとともに、加工、物流などの重複機能の見直しを進めていくことで、グループの経営資源を効率的に活用していく。一方で、市場が拡大する海外では地産地消の動きが加速する。中計で方針を打ち出した通り、JFEグループの全体収益拡大に向けて、JFEスチール商品の拡販はもちろん、JFEスチール以外の商品の扱いも強化していく。また、エンジとの協業も強化していく。エンジがバイオマス発電事業を手掛けているが、我々はその燃料となるPKS(ヤシ殻)を安定的に供給していく。因みにJFE商事はPKSの輸入で国内2位のポジションにある。JFEグループのコーディネーターとしての意識を持ち社会的課題の解決に微力ながら貢献していきたい」

――得意の電磁鋼板分野は。

「カナダのコジェントは19年の買収後、仕入れソースの多様化、JSAとの連携等の効果を引き出し、すでに黒字が定着している。JSAのメキシコ拠点の機能を総合的に発揮し、北米市場をカバーしていく。さらに北米、中国、ASEAN、インドを含めたグローバル規模の電磁鋼板加工・物流ネットワークで情報、技術、ノウハウを共有し、存在感を一層高めていきたい」

――ESG経営も課題。

「スチール、エンジとともにESG経営課題への取り組みを本格化している。省エネルギーに貢献する電磁鋼板のグローバルネットワークの強化もさらに進めていく。また、『再生可能エネルギー鋼材貿易チーム』を新設し、風力発電などの関連ビジネスを一元管理して市場開拓に取り組んでいる。先ほど申し上げたバイオマス発電関連もこの中の一つであるし、スクラップ取引も我々の得意分野である。次期中計、さらにその先を見据え、地域・領域など従来の発想を超えた幅広い視点でチャンスを探り、新たなビジネスモデルに発展させていく」

――脱炭素社会への対応を迫られる中、リサイクルの観点から冷鉄源ビジネスも強化できる。

「鉄スクラップは日本国内からの輸出においてトップクラスの扱い量がある強いゾーン。JFEスチールの政策と同期化し、グローバル規模でビジネスを展開していく」

――自動車鋼板は重要なボリュームゾーン。

「JFEスチールとニューコアのメキシコ自動車鋼板合弁に隣接して建設中のコイルセンターは12月に完工する。自動車向けについては、中国、タイ、インドネシアにおけるコイルセンター事業を通じて、自動車鋼板ビジネスを拡充してきた。引き続き注力分野として経営資源を投入していく」

――世界最大の自動車生産国、中国が電気自動車の生産を拡大する。

「電磁鋼板の需要は確実に増える。主要拠点で展開するコイルセンターの加工能力・機能の拡充は、情勢を見極めながら前向きに対応していきたい」

――コロナ禍で、働き方改革が不可避となっている。

「国内外のグループ企業を含めWEB会議を自在に開催でき、一定の意思疎通も可能であることは確認しているが、対面でのコミュニケ―ションの重要性も改めて認識した。現場の意見や悩みを吸い上げ、コロナ禍及びその先の姿を冷静に見極めながら時代にふさわしい、商社ならではの働き方をメリハリをつけて整えていく」

――最後に目指す収益レベルとあり方を。

「今中計はセグメント利益目標を370億円に設定し、その先は400億円+アルファと表現していた。経営環境は大きく変わったが、このレベル感を意識して、JFEグループの持続的成長に貢献していく。そのためにもスチールとの協業、エンジとの連携強化、JFEスチール材以外のビジネスの拡大に注力し、独自の収益基盤を創出していきたい。21年度は収益回復をもう一段進め、その先を見据えて具体的な成長戦略を描いていくことが最大の経営課題となる」(谷藤 真澄)