今井「2025年12月のGX実行会議で、公共工事におけるグリーン鉄の活用方針が公表され、26年度以降の公共工事でのグリーン鉄の試行工事の実施や順次対象拡大、30年以降の本格活用の取り組み方針が示された。国交省や同省以外の省庁、地方自治体含め、公共工事での本格活用を着実に具体化し、実現させる必要がある。30年ごろに革新電炉が立ち上がり、鉄鋼業界全体で高炉鋼材国内市場の約1割相当規模のGXスチールが提供されるのに対し、初期需要創出措置や官需だけでは必要十分な規模のGXスチール市場は形成できない。鉄連は昨年に鉄鋼製品に関するCFP(カーボンフットプリント)製品別算定ガイドラインやGXスチールガイドラインなどを発行し、削減実績量を顧客の製品CFPに反映可能とするルールを定めた。今後も民需のGXスチール市場創出につなげる仕組みづくりが重要になる」
谷藤「大型電炉がこれから複数建設され、冷鉄源が必要となる。鉄スクラップと直接還元鉄など冷鉄源の安定供給体制をどのように整えていくべきか。鉄スクラップは国内循環が求められ、輸出に多く振り向けられている現状をどのように変えていく考えか」
今井「自家発生を除く鉄スクラップの国内発生量は年間約3000万トン。資源循環の観点では3000万トン規模の電炉生産は電力供給の制約がなければ将来的に一つの規模となる。粗鋼6000万トンとすれば、そのうち3000万トンが電炉生産、残りの3000万トンがCN(カーボンニュートラル)化された高炉生産という姿がモデルの一つとなる。鉄スクラップは日本にとって貴重な国内資源であり、GX推進、資源循環、経済安全保障の観点から、日本全体での最適・最大活用することが非常に重要と考えている。鉄鋼業としては国内循環の最大化を志向し、低品位スクラップの活用検討も進めている。今後もスクラップ業界との連携深化を図ると同時に必要な施策・支援を政府に求めていく」
谷藤「鉄鋼業だけでなくデータセンターや半導体産業向けなど、これから電力の需要が大幅に増える見通し。鉄連として原子力発電の活用を政府に求めているが、政府のエネルギー基本計画、原発の活用をどう評価し、これから望むこととは」
今井「GX基本方針、GX推進戦略に続き、第7次エネルギー基本計画において、原子力を最大限活用していく方針が明確に掲げられたことは高く評価している。引き続き、発電事業者ほか、ステークホルダーとの丁寧なコミュニケーションを通じ、実効性ある形で、原子力活用推進に向けた具体策を進めていただきたい。エネルギー基本計画で述べられているように、安全を前提とした原子力の最大活用がわが国として取り得る手段であり、加えて洋上風力など再生可能エネルギーを拡大していくことになる。ただ、水素を国内で大量に製造するには、もう一段の技術的なブレークスルーが必要になる。実現はかなり先のことになると思うが、CNに向かってエネルギー革命が起きるとすれば核融合発電などの技術的ブレークスルーが期待される。当面は原子力や洋上風力などを進め、CCUS(CO2の回収・貯留・利用)を組み合わせることになるだろう。脱炭素に対する産業政策的議論は欧州でもベクトルが修正されつつあり、米国ははっきりと脱炭素から遠ざかるスタンスだが、将来的には脱炭素化が産業界の競争要件になる可能性がある。単に地球環境保護だけでなく、産業競争力を維持するために脱炭素の技術を持たないと競争で劣後してしまう」
谷藤「人材の確保が大きな課題となっている。鉄鋼業や鉄鋼企業の魅力を高め、優秀な人材を確保することが国際競争力の維持・強化には不可欠」
今井「労働力人口の減少、労働市場の流動化などが進展する中で、人材不足は業界全体に関わる重要な課題であると認識している。鉄鋼業を世の中にポジティブにPRし、人々の興味・関心の対象にしてもらう努力はこれからも必要だ。日本製鉄やJFEスチールなどはグローバル展開を成長戦略としているが、日本の鉄鋼業がグローバル展開する中で勝負をするために必要なことを突き詰めて考えた時に最も大事なものは技術力であり、採用含めて人材の確保が欠かせない。中国は毎年千数百万人の大卒者がいて、その中でエンジニアが300万人規模いる。日本は大卒者が70万人程度で理工系は20万人程度。鉄鋼業に来ていただくよう、力を入れていかないといけない。現場のオペレーターも重要であり、鉄鋼業の魅力を業界として発信していく。人材の確保・定着の課題は、労使共通の認識として春季交渉を通じて議論され、賃金改善など処遇条件の向上にもつながってきている。鉄鋼業のみならず多くの企業において人的資本への投資は重要な視点の一つであり、そのための原資を生み出すため、継続的な生産性の向上に取り組んでいくことが業界全体として必要だ」