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レアメタル新世紀/<1> 中国が輸出規制強化
日本の資源確保困難に

日刊産業新聞 07/04/25

<最終回>  

 日本の基幹産業である鉄鋼、自動車、家電産業にとって「ビタミン」の役割を担うレアメタル。日本国内に採掘可能なレアメタル資源はなく、ほぼ全量を海外から輸入している。ただ、日本のレアメタル貿易は現在、大きな転換点に差し掛かっている。世界最大の供給国である中国の輸出規制強化を受け、資源確保が困難になっている。レアメタル消費国の日本は今後、需要拡大にどう対応していくのか。

  「レアメタルは日本にとっても世界全体の産業発展にとっても必要不可欠な資源」

  甘利明・経済産業大臣は今月12日、中国の温家宝首相と共に来日した馬凱・中国国家発展改革委員会主任と会談し、レアメタルの安定確保が重要な課題であることを強調した。

  馬主任もレアメタルの重要性を認め、今後は日中レアアース交流会議などを通じて、議論を深めていく方向性を確認した。

  温家宝首相の来日により雪解けが期待される日中関係。ただ、資源分野、とくにレアメタルに関しては一筋縄ではいかないようだ。

  日本は世界最大のレアメタル消費国だが、ほぼ全量を海外から輸入している。とくに希土類、タングステン、アンチモンは90%以上を中国から輸入している。バナジウム、モリブデン、インジウムなども中国への依存度が高い品種だ。

  これらのレアメタルは、製品の特性を向上させる目的で、鉄鋼や電子部品材料などに使われる。鉄鋼、自動車、家電など日本の基幹産業は、レアメタルに支えられているといっても過言ではない。

  中国のレアメタル輸出政策はここ数年、「促進」から「規制」へと大きく舵を切った。

  その一つが輸出増値税の還付撤廃。レアメタル輸出による外貨獲得を目的に設置された増値税の還付は、05年以降段階的に引き下げられ、昨年12月に完全撤廃された。

  還付撤廃は輸出業者にとって増税となるため、その分が国際価格に上乗せされた。アンチモンやタングステンの国際価格は05年以降2倍以上になった。輸出業者の便乗値上げも加わったことから、「中国政府の高値誘導策」との見方もあった。

  さらに、昨年10月の委託加工貿易の禁止や本年1月の輸出税導入。「規制強化の流れは止まらない」と、アドバンストマテリアルジャパン(AMJ、東京・港)の中村繁夫社長は指摘する。

  中国の生産シェアが80%以上の希土類、タングステン、アンチモンには毎年、輸出割当量(EL)が設定される。タングステンとアンチモンは今年も約3%削減が決まった。希土類も昨年に続き10%削減が濃厚で、「輸出禁止の動きもある」(AMJの中村社長)という。

  中国政府は3月9日、インジウムとモリブデン輸出を申告制にすることを正式に通達した。「今後はEL制が導入されるだろう」と、国内モリブデン生産者は警戒感を強める。

  EL制が導入されている希土類、タングステン、アンチモンは中国の寡占状態。それ以外に大きな供給元がないため、国際価格は中国の思惑次第で大きく変動する。

  たとえば希土類元素のネオジムは、永久磁石の材料で需要が急増している。電装化が進む自動車やハードディスク駆動装置の用途拡大が背景にある。

  中国の供給が減少傾向にあるため、国際価格は急騰。現在の酸化ネオジムはキロ25ドル(FOB)と05年比3・5倍になっている。

  インジウムやモリブデンの世界シェアも高いが、カナダ、韓国、チリなどの生産国があり、価格への影響はそれほど大きくない。

  「両高一資」。中国語でエネルギー消費や環境汚染の度合いが高く、資源に関係したものという意味だ。これが現在の中国の輸出規制のキーワードになっている。

  1年前は価格上昇を意図する側面もみられた中国の輸出政策。昨秋以降の政策では自国資源の「保護」をより鮮明に打ち出している。それは日本のレアメタル資源確保が、一段と難しくなることを意味している。(増田正則)

<最終回>  

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