2025年6月13日
非鉄新経営 描き挑む成長のビジョン/三井金属社長/納 武士氏/30年度経常益1000億円へ/成長投資を最優先
三井金属はこのほど、2027年度までの3カ年中期経営計画「25中計」を取りまとめた。機能材料と金属という2つのコア事業の稼ぐ力を高め、事業創造本部が開発・量産化を進める固体電解質や次世代半導体パッケージ用キャリアで収益をさらに底上げしていく成長戦略を描く。納武士社長に前中計(22中計)の振り返りと、25中計のポイントを聞いた。
――22中計の達成度合いをどうみるか。
「財務体質を含む数値面と、取り組みの進展という2つのポイントで振り返ると、数値目標はおおむねクリアできた。経常利益は600億円の目標に対し24年度実績が764億円と大きく上振れ。為替・金属相場などでフォローの風が吹いたが、それにうまく乗れたのも一つの実力だろう。ROE(自己資本利益率)は14%目標に対し21%、自己資本比率も50%の目標に対して50・4%とクリアした」
――取り組みは。
「機能材料は市況が計画よりもビハインドだったが、計画していた施策は実行できた。金属は400億円以上の利益を出し、二酸化炭素排出削減の30年度目標達成につながる打ち手を講じられたのも良かった。見極めの中計と位置づけていたモビリティー事業は本部を解散し、各事業の方向性を大まかに決めた。最も大きい自動車ドアロック事業の三井金属アクトは売却する方向で契約を結んだ。総合的に見て22中計はうまくいったと考えており、25中計はその延長という立て付けで策定した」
――人材戦略にも力を入れた。
「ジョブ型を導入し、同じ仕事内容であれば65歳まで処遇が下がらない体系にした。人材確保については、現在は7割くらいがキャリア採用で新卒採用より多い。事業創造本部や開発部門のほか本社部門もキャリア採用が多く、多様性が高まっている。女性管理職比率は24年度に5%を目指していたが、5・1%とクリアした。本年には初めてなでしこ銘柄に選ばれ、取り組みが外部からも認められた」
「ジョブ型に合わせて、採用区分を昨年撤廃した。高卒・大卒・修士卒で初任給は異なるが、その後は完全に個人の実力で評価が決まる。本社採用と地方採用の学卒の待遇差もなくした。以前は、総合職はどこでも転勤可能というのが当たり前だったが、いまは多様な働き方ができるようになり、必ずしもそうでなくても良いと考えている。個人の能力と、希望するキャリアパスを選べる雰囲気に変えてきた」
――25中計のポイントと数値目標を。
「『両利きの経営』と『統合思考経営』を引き続き推進する。そのために最も重要なのが人的資本だ。DXやICTをうまく取り入れ、社員が働きやすい職場づくりをさらに加速したい」
「30年度に経常利益1000億円を実現すべく、27年度は中間点として700億円を目標にした。ROE目標は前中計と同じ14%で30年度まで変えない。ROIC(投下資本利益率)は27年度に11%、30年度に14%を目指す。今中計では、自己資本比率とDEレシオ(負債資本倍率)の目標値は掲げない。自己資本比率が50%を超え、これ以上高めたり借入金を減らしたりという方向性はあまり良い目標ではないと考えたからだ。営業キャッシュフローは成長投資が最優先で、次が株主還元。成長投資は22中計の325億円から2・5倍に増やす方針だ」
――成長投資は全固体電池用固体電解質「A―SOLiD(Aソリッド)」や次世代半導体パッケージ用キャリア「HRDP」が中心になる。
「そのほかに電解銅箔や機能性粉体、レアマテリアルなどでも改善投資や量産のための投資を行う」
――M&Aとコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)も強化する。
「成長投資にはM&AとCVCも含む。M&Aに240億円、CVCに50億円の合計約300億円を投じる計画。これを使い切らない場合は自社株買いを検討する。M&Aは予算増額だけでなく、外部専門家を含む2人の増員も図る。ターゲットはエレクトロニクス、環境・エネルギー、モビリティー、資源、サーキュラーエコノミー、ライフサイエンスの6つの活動領域で、現業から少し遠くても成長が見込めるM&Aは狙う。CVCは19年の開始から6年の実績が14件で約50億円。新中計の3年で同額を使うということで倍のスピード感になる。1件あたりは多くて4億―5億円だが、必要なら10億円出しても構わない」
――それぞれの事業戦略を。まずは機能材料事業について。
「AI化が進み、情報通信はポスト5G、6Gと進化。自動運転も普及するだろう。当社はこれらに直結する機能性粉体、電解銅箔、セラミックスなどの商品があり、間違いなく右肩上がりで伸びていくと考えている。30年度には経常利益1000億円のうち、機能材で700億円を稼ぐ計画だ」
――キャリア付き極薄電解銅箔「マイクロシン(MT)」は増産を進める。
「27年度に月間520万平方㍍体制まで引き上げる。MTは需要の季節変動が大きいため、安定供給を考えると稼働率は70%くらいが理想。27年度時点で稼働率70%を超える想定だ」
――高周波基板用電解銅箔「VSP」は。
「VSPはミドルグレードからハイグレードまで手掛けるが、24年度はハイグレードが過半となり、25年には大部分を占める見通し。より製造難度が高く競合が少ない、マージンの高い構成にしていこうと考えている。生産する台湾工場の能力は月520トンだが、本年からマレーシアでも60トン程度生産を始める。27年度には稼働率が95%くらいになるとみており、あまり大きな投資はせず改善活動などによりキャパを増やしていきたい。台湾の開発部門では、ハイエンドVSPの次世代製品開発も行っている」
――吸収した日本イットリウムと機能性粉体事業部を統合して「レアマテリアル事業部」を創設した。
「日本イットリウムは国内レアアース企業の中でも老舗で、完全子会社化したいと考えていた。実現に時間はかかったが、全株式を取得して4月に吸収できた。同じ敷地にある機能性粉体事業とのシナジーを発揮したい。レアアースは中国の輸出管理強化で供給不安が強く、様々なところから引き合いがある。特に半導体製造装置でプラズマエッチングするときの保護膜となるYOF(オキシフッ化イットリウム)は当社が6割のシェアを有する。半導体製造装置の高度化に合わせてさらに伸ばしたい。JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)の資金援助を受けてレアアースリサイクルの高度化にも取り組む。レアマテリアル事業には期待しており、新商品が出て量が増えるなら惜しまず投資する」
――鉛製錬事業は副産物回収を強化する。
「神岡鉱業で原料となる廃バッテリーの前処理設備を増強し、竹原製錬所では溶鉱炉の処理能力を引き上げるほか、錫生産工程の採収率も高める。これらの施策により鉛処理量と副産物の錫・アンチモン・ビスマスの回収量を増やす。鉛系原料は、銅製錬所ではなかなか回収できず不純物として残る。当社は銅、亜鉛、鉛の製錬ネットワークを持つ強みを生かし、グループ内外から原料集荷を増やしていく」
――亜鉛製錬事業は買鉱条件が歴史的な悪さだ。
「目下のトン70―80ドル程度のTC(溶錬費)が続けば、世界中の亜鉛製錬所が立ち行かなくなる。当社はリサイクル原料比率が50%と世界トップだが、25年度は実力損益がかなり落ちる。26年のTCは、3桁までは戻すのではないか」
――低TC時代への対応を。
「リサイクル原料比率50%はしっかり維持する。当社はペルーに亜鉛鉱山権益もあり、実際に外部から調達する亜鉛鉱石は原料の40%程度。TCや為替の影響を受けても経常利益200億円レベルを出せるようにしたい。これでROICは7%くらいになり、同業他社と比べても悪くない」
――ペルーのアタラヤ鉱山の投資判断は。
「権益を持つワンサラ、パルカ鉱山は30年頃に寿命を迎える見通し。それまでに新しい鉱山での調達を確保することが必要で、25中計期間に判断しないといけない。1―2年でFS(事業性評価)を完了したい。プレFSの段階では、事業化の可能性は高い」
――事業創造本部の戦略を
「固体電解質『Aソリッド』は、総合研究所(埼玉県上尾市)でボトルネック解消により生産能力を現状の4倍に高める増強投資を実施している。上尾では初期量産工場の投資も決めた。投資額は200億円弱で、国から最大99億円の助成が受けられる。Aソリッドの需要予測は右肩上がり。22中計期間の有償サンプル収入は69億円だったが、国内外の自動車メーカーなどへの供給が増え、25中計では5倍の345億円程度まで伸びると見込む」
「HRDPは顧客のサンプル評価が進んでおり、今年度は協業先のジオマテックで第2ラインが立ち上がる。第2ラインはHRDP専用の設備で自動化も取り入れ、品質の安定とコスト低減につながると期待している。事業化を見据え、HRDPは早ければ10月にも事業創造本部から機能材料事業本部に移管する予定。26年度に黒字化し、27年度に営業利益15億円くらい出したい」
――事業ポートフォリオの見直しは続ける方針か。
「金属と機能材以外の事業は、当社内でのシナジーが小さいと判断している。シナジーがなくても、将来的な展望が描けて当社がマネジメントを続けられると判断した事業は良いが、そうでなければ人材配置や投資で思い切った決断がしにくい。このため、早めに見極めてベストオーナーに渡すということも考えねばならない。グループの機能会社である三井金属エンジニアリングや三井金属商事などは例外だ」
――三谷伸銅を売却したが、三井住友金属鉱山伸銅は。
「22中計はモビリティー事業の見直しが優先で、伸銅事業の見直しまで手が回らなかった。伸銅事業をどうしていくのか、25中計期間中に見極めないといけないと思っている。生産をやめるということはない」
――ITO(インジウム・錫酸化物)事業は。
「ITOはかつて日系企業が強く4社あったが、現在は当社だけになった。汎用品は苦戦しているが、長寿命なITOという特長ある商品を持つ。量は追わず、これらの価値を見出だしてくれるユーザー向けに供給を続ける。量産品の生産は台湾に順次移管し、日本は高付加価値品の生産・開発拠点とする。需要先としてはトランジスタに使う高電子移動度材料がある。ニッチな材料だが当社の技術を認めてもらえている。液晶関係ではIGZO(インジウム・ガリウム・亜鉛・酸素)のさらに高機能な製品開発などにも取り組み、設定したROICの基準を超える形で続けたい。それが達成できなければ薄膜事業もどうするか考えることになる」
(田島義史、鈴木大詩)
――22中計の達成度合いをどうみるか。
「財務体質を含む数値面と、取り組みの進展という2つのポイントで振り返ると、数値目標はおおむねクリアできた。経常利益は600億円の目標に対し24年度実績が764億円と大きく上振れ。為替・金属相場などでフォローの風が吹いたが、それにうまく乗れたのも一つの実力だろう。ROE(自己資本利益率)は14%目標に対し21%、自己資本比率も50%の目標に対して50・4%とクリアした」
――取り組みは。
「機能材料は市況が計画よりもビハインドだったが、計画していた施策は実行できた。金属は400億円以上の利益を出し、二酸化炭素排出削減の30年度目標達成につながる打ち手を講じられたのも良かった。見極めの中計と位置づけていたモビリティー事業は本部を解散し、各事業の方向性を大まかに決めた。最も大きい自動車ドアロック事業の三井金属アクトは売却する方向で契約を結んだ。総合的に見て22中計はうまくいったと考えており、25中計はその延長という立て付けで策定した」
――人材戦略にも力を入れた。
「ジョブ型を導入し、同じ仕事内容であれば65歳まで処遇が下がらない体系にした。人材確保については、現在は7割くらいがキャリア採用で新卒採用より多い。事業創造本部や開発部門のほか本社部門もキャリア採用が多く、多様性が高まっている。女性管理職比率は24年度に5%を目指していたが、5・1%とクリアした。本年には初めてなでしこ銘柄に選ばれ、取り組みが外部からも認められた」
「ジョブ型に合わせて、採用区分を昨年撤廃した。高卒・大卒・修士卒で初任給は異なるが、その後は完全に個人の実力で評価が決まる。本社採用と地方採用の学卒の待遇差もなくした。以前は、総合職はどこでも転勤可能というのが当たり前だったが、いまは多様な働き方ができるようになり、必ずしもそうでなくても良いと考えている。個人の能力と、希望するキャリアパスを選べる雰囲気に変えてきた」
――25中計のポイントと数値目標を。
「『両利きの経営』と『統合思考経営』を引き続き推進する。そのために最も重要なのが人的資本だ。DXやICTをうまく取り入れ、社員が働きやすい職場づくりをさらに加速したい」
「30年度に経常利益1000億円を実現すべく、27年度は中間点として700億円を目標にした。ROE目標は前中計と同じ14%で30年度まで変えない。ROIC(投下資本利益率)は27年度に11%、30年度に14%を目指す。今中計では、自己資本比率とDEレシオ(負債資本倍率)の目標値は掲げない。自己資本比率が50%を超え、これ以上高めたり借入金を減らしたりという方向性はあまり良い目標ではないと考えたからだ。営業キャッシュフローは成長投資が最優先で、次が株主還元。成長投資は22中計の325億円から2・5倍に増やす方針だ」
――成長投資は全固体電池用固体電解質「A―SOLiD(Aソリッド)」や次世代半導体パッケージ用キャリア「HRDP」が中心になる。「そのほかに電解銅箔や機能性粉体、レアマテリアルなどでも改善投資や量産のための投資を行う」
――M&Aとコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)も強化する。
「成長投資にはM&AとCVCも含む。M&Aに240億円、CVCに50億円の合計約300億円を投じる計画。これを使い切らない場合は自社株買いを検討する。M&Aは予算増額だけでなく、外部専門家を含む2人の増員も図る。ターゲットはエレクトロニクス、環境・エネルギー、モビリティー、資源、サーキュラーエコノミー、ライフサイエンスの6つの活動領域で、現業から少し遠くても成長が見込めるM&Aは狙う。CVCは19年の開始から6年の実績が14件で約50億円。新中計の3年で同額を使うということで倍のスピード感になる。1件あたりは多くて4億―5億円だが、必要なら10億円出しても構わない」
――それぞれの事業戦略を。まずは機能材料事業について。
「AI化が進み、情報通信はポスト5G、6Gと進化。自動運転も普及するだろう。当社はこれらに直結する機能性粉体、電解銅箔、セラミックスなどの商品があり、間違いなく右肩上がりで伸びていくと考えている。30年度には経常利益1000億円のうち、機能材で700億円を稼ぐ計画だ」
――キャリア付き極薄電解銅箔「マイクロシン(MT)」は増産を進める。
「27年度に月間520万平方㍍体制まで引き上げる。MTは需要の季節変動が大きいため、安定供給を考えると稼働率は70%くらいが理想。27年度時点で稼働率70%を超える想定だ」
――高周波基板用電解銅箔「VSP」は。
「VSPはミドルグレードからハイグレードまで手掛けるが、24年度はハイグレードが過半となり、25年には大部分を占める見通し。より製造難度が高く競合が少ない、マージンの高い構成にしていこうと考えている。生産する台湾工場の能力は月520トンだが、本年からマレーシアでも60トン程度生産を始める。27年度には稼働率が95%くらいになるとみており、あまり大きな投資はせず改善活動などによりキャパを増やしていきたい。台湾の開発部門では、ハイエンドVSPの次世代製品開発も行っている」
――吸収した日本イットリウムと機能性粉体事業部を統合して「レアマテリアル事業部」を創設した。
「日本イットリウムは国内レアアース企業の中でも老舗で、完全子会社化したいと考えていた。実現に時間はかかったが、全株式を取得して4月に吸収できた。同じ敷地にある機能性粉体事業とのシナジーを発揮したい。レアアースは中国の輸出管理強化で供給不安が強く、様々なところから引き合いがある。特に半導体製造装置でプラズマエッチングするときの保護膜となるYOF(オキシフッ化イットリウム)は当社が6割のシェアを有する。半導体製造装置の高度化に合わせてさらに伸ばしたい。JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)の資金援助を受けてレアアースリサイクルの高度化にも取り組む。レアマテリアル事業には期待しており、新商品が出て量が増えるなら惜しまず投資する」
――鉛製錬事業は副産物回収を強化する。
「神岡鉱業で原料となる廃バッテリーの前処理設備を増強し、竹原製錬所では溶鉱炉の処理能力を引き上げるほか、錫生産工程の採収率も高める。これらの施策により鉛処理量と副産物の錫・アンチモン・ビスマスの回収量を増やす。鉛系原料は、銅製錬所ではなかなか回収できず不純物として残る。当社は銅、亜鉛、鉛の製錬ネットワークを持つ強みを生かし、グループ内外から原料集荷を増やしていく」
――亜鉛製錬事業は買鉱条件が歴史的な悪さだ。
「目下のトン70―80ドル程度のTC(溶錬費)が続けば、世界中の亜鉛製錬所が立ち行かなくなる。当社はリサイクル原料比率が50%と世界トップだが、25年度は実力損益がかなり落ちる。26年のTCは、3桁までは戻すのではないか」
――低TC時代への対応を。「リサイクル原料比率50%はしっかり維持する。当社はペルーに亜鉛鉱山権益もあり、実際に外部から調達する亜鉛鉱石は原料の40%程度。TCや為替の影響を受けても経常利益200億円レベルを出せるようにしたい。これでROICは7%くらいになり、同業他社と比べても悪くない」
――ペルーのアタラヤ鉱山の投資判断は。
「権益を持つワンサラ、パルカ鉱山は30年頃に寿命を迎える見通し。それまでに新しい鉱山での調達を確保することが必要で、25中計期間に判断しないといけない。1―2年でFS(事業性評価)を完了したい。プレFSの段階では、事業化の可能性は高い」
――事業創造本部の戦略を
「固体電解質『Aソリッド』は、総合研究所(埼玉県上尾市)でボトルネック解消により生産能力を現状の4倍に高める増強投資を実施している。上尾では初期量産工場の投資も決めた。投資額は200億円弱で、国から最大99億円の助成が受けられる。Aソリッドの需要予測は右肩上がり。22中計期間の有償サンプル収入は69億円だったが、国内外の自動車メーカーなどへの供給が増え、25中計では5倍の345億円程度まで伸びると見込む」
「HRDPは顧客のサンプル評価が進んでおり、今年度は協業先のジオマテックで第2ラインが立ち上がる。第2ラインはHRDP専用の設備で自動化も取り入れ、品質の安定とコスト低減につながると期待している。事業化を見据え、HRDPは早ければ10月にも事業創造本部から機能材料事業本部に移管する予定。26年度に黒字化し、27年度に営業利益15億円くらい出したい」
――事業ポートフォリオの見直しは続ける方針か。
「金属と機能材以外の事業は、当社内でのシナジーが小さいと判断している。シナジーがなくても、将来的な展望が描けて当社がマネジメントを続けられると判断した事業は良いが、そうでなければ人材配置や投資で思い切った決断がしにくい。このため、早めに見極めてベストオーナーに渡すということも考えねばならない。グループの機能会社である三井金属エンジニアリングや三井金属商事などは例外だ」
――三谷伸銅を売却したが、三井住友金属鉱山伸銅は。
「22中計はモビリティー事業の見直しが優先で、伸銅事業の見直しまで手が回らなかった。伸銅事業をどうしていくのか、25中計期間中に見極めないといけないと思っている。生産をやめるということはない」
――ITO(インジウム・錫酸化物)事業は。
「ITOはかつて日系企業が強く4社あったが、現在は当社だけになった。汎用品は苦戦しているが、長寿命なITOという特長ある商品を持つ。量は追わず、これらの価値を見出だしてくれるユーザー向けに供給を続ける。量産品の生産は台湾に順次移管し、日本は高付加価値品の生産・開発拠点とする。需要先としてはトランジスタに使う高電子移動度材料がある。ニッチな材料だが当社の技術を認めてもらえている。液晶関係ではIGZO(インジウム・ガリウム・亜鉛・酸素)のさらに高機能な製品開発などにも取り組み、設定したROICの基準を超える形で続けたい。それが達成できなければ薄膜事業もどうするか考えることになる」
(田島義史、鈴木大詩)












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