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2024.12.4
2018年4月25日
中国、スクラップ輸入規制を強化 失われた20年を取り戻せ ■上■ 基準厳格化、許可数も減
「目先2―3年で失われた20年を取り戻さなければならない」(国内大手シュレッダー業者)。中国が輸入スクラップに対して規制を強化した影響で、雑品や雑線、未解体の低品位スクラップ(通称・7類)などを同国向けに輸出しにくくなっており、国内の流通量が徐々に増えている。国内選別・加工のニーズは高まっているが、中国経済が拡大した1990年台後半以降、日本のスクラップ業者は中国側のニーズに基づき、これまで自国で解体・選別していた機械くずや被覆線などを、「雑品」や「雑線」などとして無選別で輸出してきたため、解体・選別のノウハウが蓄積されず、若手への継承も滞ったままだ。
中国の環境規制
中国は、再生原料として世界中から金属スクラップや廃プラスチック、古紙といった固体廃棄物を輸入し、旺盛な国内需要や、加工貿易を通じて世界の需要を満たしてきた。2016年の同国の固体廃棄物の総輸入量は4658万トンで、そのうち88・9%を金属スクラップと廃プラスチック、古紙が占める。
ただ、これら固体廃棄物に混ざって輸入される紙や木くずなどのダスト(ゴミ)が河川に不法投棄され、野焼きなどが横行した。選別や加工工程で発生する廃液や残渣なども適正に処理されず、環境汚染が深刻化。国民の健康リスクを低減するため、昨春から当局が本格的に環境規制に乗り出し、数々の施策を打ち出してきた。
輸入固体廃棄物に対する新基準
昨年4月、中国政府が、固体廃棄物の輸入管理制度改革の方案を認め、輸入固体廃棄物の種類を定めて管理目録を作成し、輸入量と種類を大幅に削減することを明言。7月には、環境保護省が金属スクラップや廃プラ、古紙など固体廃棄物4類24種の輸入を年末までに禁止する方針を表明した。スクラップの加工業者の取り締まりも同時強化し、年始から7月末までに1556社を調査し、6割に当たる954社を違法行為の疑いで処罰した。
さらに今年1月11日には、中国環境保護部(MEP)と国家品質監督検疫局が、輸入スクラップに含まれるダストに関する新基準を正式に発表。内容は、今年3月1日からスクラップに含まれるダストの許容量を、非鉄金属スクラップは1%以下、廃モーターや雑品、ケーブル・ワイヤ類、鉄スクラップなどは0・5%以下とし、従来基準の2%以下に比べて非常に厳しいものとなった。雑品は回収可能な金属量が総量の80%以上(従来は60%)。現地のスクラップ加工メーカーは「一般的なスクラップをダスト1%以下に抑えることは事実上不可能。税関サイドがどの程度、新基準を取り入れるか今後の動向を見守りたい」と語る。
スクラップに混在するゴミ
輸入スクラップのダスト基準は1996年に公布され、2005年に一部を改定。その後、昨年8月に中央政府が環境対策を強化した影響で、修正案として0・3%以下が提示されていた。
当局によると2013年以降、国内需要の拡大を背景にスクラップ輸入が拡大し、密輸が横行。取り締まりにより338件を摘発し、対象となった推定重量は125万トンと見積もられている。また、16年の固体廃棄物の輸入量のうち、主要3品種(金属くず・廃プラ・古紙)に含まれるダストの量は現行の基準に照らすと年間60万トンにも上る。
ダスト基準の厳格化や、昨年末に金属スクラップに関して廃棄物の加工処理設備と環境設備を備えた最終消費者(加工メーカー)だけに輸入許可を限定し輸入代行を排除したこともあり、関係筋は、2018年の固体廃棄物の輸入量を2500万トンと、16年実績から半数近く減少すると予想する。
目先も、当局は本年末までにスクラップ(固形廃棄物)の輸入港の限定や許可制度の見直し、密輸の罰則強化する計画で、さらには翌19年末までに国内の資源ごみで代替可能な固形廃棄物の輸入量を段階的に縮小する方針を明らかにしており、固形廃棄物の扱いはさらに厳しくなる。
輸入ライセンスの発行状況
昨年末から1月30日時点まで、4回にわたって2018年1―3月期分の輸入ライセンスが発行された。地区は台州、寧波、梧州などに限定され、企業数と許可数量は五金(雑品)関連が46社(銅やアルミの許可企業と一部重複)で約19万7000トン、銅系は46社(約17万2000トン)、アルミ系は5社(約1767トン)。許可企業、数量ともに昨年から大幅に減少しており、現地最大手の雑品リサイクラーの許可数量は3万トンと、昨年実績から半数以上減った。
加工貿易の一大集積地である広東地区の業者にはいまだに輸入ライセンスが発行されておらず、関係筋にとって懸念材料となっており、現地筋は「最終的な許可数量は台州で従来比4割、その他の地区は6割近く減る」と予想する。
2017年の日本の対中国輸出量は、雑品とみられる鉄くず(HSコード720449900)が162万トン、銅くずが29万4000トン、缶を除くアルミくずが7万9000トンあり、今後は規制の影響を受けて輸出量がかなり減るとみられる。
(石橋 栄作)
中国の環境規制
中国は、再生原料として世界中から金属スクラップや廃プラスチック、古紙といった固体廃棄物を輸入し、旺盛な国内需要や、加工貿易を通じて世界の需要を満たしてきた。2016年の同国の固体廃棄物の総輸入量は4658万トンで、そのうち88・9%を金属スクラップと廃プラスチック、古紙が占める。
ただ、これら固体廃棄物に混ざって輸入される紙や木くずなどのダスト(ゴミ)が河川に不法投棄され、野焼きなどが横行した。選別や加工工程で発生する廃液や残渣なども適正に処理されず、環境汚染が深刻化。国民の健康リスクを低減するため、昨春から当局が本格的に環境規制に乗り出し、数々の施策を打ち出してきた。
輸入固体廃棄物に対する新基準
昨年4月、中国政府が、固体廃棄物の輸入管理制度改革の方案を認め、輸入固体廃棄物の種類を定めて管理目録を作成し、輸入量と種類を大幅に削減することを明言。7月には、環境保護省が金属スクラップや廃プラ、古紙など固体廃棄物4類24種の輸入を年末までに禁止する方針を表明した。スクラップの加工業者の取り締まりも同時強化し、年始から7月末までに1556社を調査し、6割に当たる954社を違法行為の疑いで処罰した。
さらに今年1月11日には、中国環境保護部(MEP)と国家品質監督検疫局が、輸入スクラップに含まれるダストに関する新基準を正式に発表。内容は、今年3月1日からスクラップに含まれるダストの許容量を、非鉄金属スクラップは1%以下、廃モーターや雑品、ケーブル・ワイヤ類、鉄スクラップなどは0・5%以下とし、従来基準の2%以下に比べて非常に厳しいものとなった。雑品は回収可能な金属量が総量の80%以上(従来は60%)。現地のスクラップ加工メーカーは「一般的なスクラップをダスト1%以下に抑えることは事実上不可能。税関サイドがどの程度、新基準を取り入れるか今後の動向を見守りたい」と語る。
スクラップに混在するゴミ
輸入スクラップのダスト基準は1996年に公布され、2005年に一部を改定。その後、昨年8月に中央政府が環境対策を強化した影響で、修正案として0・3%以下が提示されていた。
当局によると2013年以降、国内需要の拡大を背景にスクラップ輸入が拡大し、密輸が横行。取り締まりにより338件を摘発し、対象となった推定重量は125万トンと見積もられている。また、16年の固体廃棄物の輸入量のうち、主要3品種(金属くず・廃プラ・古紙)に含まれるダストの量は現行の基準に照らすと年間60万トンにも上る。
ダスト基準の厳格化や、昨年末に金属スクラップに関して廃棄物の加工処理設備と環境設備を備えた最終消費者(加工メーカー)だけに輸入許可を限定し輸入代行を排除したこともあり、関係筋は、2018年の固体廃棄物の輸入量を2500万トンと、16年実績から半数近く減少すると予想する。
目先も、当局は本年末までにスクラップ(固形廃棄物)の輸入港の限定や許可制度の見直し、密輸の罰則強化する計画で、さらには翌19年末までに国内の資源ごみで代替可能な固形廃棄物の輸入量を段階的に縮小する方針を明らかにしており、固形廃棄物の扱いはさらに厳しくなる。
輸入ライセンスの発行状況
昨年末から1月30日時点まで、4回にわたって2018年1―3月期分の輸入ライセンスが発行された。地区は台州、寧波、梧州などに限定され、企業数と許可数量は五金(雑品)関連が46社(銅やアルミの許可企業と一部重複)で約19万7000トン、銅系は46社(約17万2000トン)、アルミ系は5社(約1767トン)。許可企業、数量ともに昨年から大幅に減少しており、現地最大手の雑品リサイクラーの許可数量は3万トンと、昨年実績から半数以上減った。
加工貿易の一大集積地である広東地区の業者にはいまだに輸入ライセンスが発行されておらず、関係筋にとって懸念材料となっており、現地筋は「最終的な許可数量は台州で従来比4割、その他の地区は6割近く減る」と予想する。
2017年の日本の対中国輸出量は、雑品とみられる鉄くず(HSコード720449900)が162万トン、銅くずが29万4000トン、缶を除くアルミくずが7万9000トンあり、今後は規制の影響を受けて輸出量がかなり減るとみられる。
(石橋 栄作)
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