2025年9月19日
人財戦略を聞く/高炉編/神戸製鋼所/執行役員/森田大三氏/働きがいと成果を両立/組織の多様性、新たな価値に
神戸製鋼所はグループ全体の重要課題として人材戦略の強化に取り組んでいる。多様性の尊重、個人の成長・挑戦の支援、誰もが活躍できる環境の整備を通じて企業価値の向上を目指す。人材の確保・育成の戦略を森田大三執行役員に聞いた。
――人材戦略を。
「社員一人一人の個性と能力を尊重し、組織の多様性を高めることで新たな価値の創造につなげたいと考えている。2024年度からは魅力ある企業への変革を目指す中期経営計画の中核として、グループ全体で取り組む変革をKOBELCO―Xと名付け、7つのXを設定している。この中のEX(人材戦略・従業員体験向上)では社員の体験価値を高めることで働きがいと成果の両立を目指している。従来の人材公募制度をキャリアトライ制度と改称し、現部署に所属したまま他部署の業務に挑戦できる仕組みを導入した。社内副業の形で自らの意志で新たな業務に挑戦できるよう後押ししている。転勤頻度の低減に関するガイドラインも新たに設けた。職場環境の改善にも力を入れ、寮・社宅・厚生施設・事務所などへの投資として中期計画期間中に約450億円を予定。人材不足への対応として少人化・自動化に関連する投資も150億円規模で進めている。エンゲージメント向上策として7月にKOBELCOストック・プランの導入を決定。従業員持ち株会を通じて毎年30株相当の特別奨励金を支給し、社員の経営参画意識を高め、企業価値向上へ意識醸成を図る」
――人材の確保、育成では。
「特に技術系総合職は年々採用競争が激しくなっているが、入社率の高いインターンシップ受け入れ規模を拡大することで、採用数の増加につなげている。生産現場の技能系社員は、23年度から本格導入した社員の紹介によるリファラル採用が効果的な施策として機能し、累計100人以上が入社した。長期的には人口減少や職業志向の変化により、製造業を志望する人材確保が難しくなる可能性も見据えている。工場の自動化や職場環境の改善を計画的に進めることが重要だ。定着施策として勤務体系の見直しに取り組んでいる。真岡発電所では昨年から4直2交替制を導入。4直3交替制に比べて1日当たりの勤務時間は増えるが、休日や連休は増える。身体的な負担も見極めながら、連続操業の現場で働き方変革を進めている。専門性の高い人材の確保に向けてキャリア採用にも力を入れている。転職市場の活性化で即戦力人材を採用しやすくなり、採用者の約半数、社員全体の約3割がキャリア採用者だ。業務変革や新たな価値創出を促すためDX人材の育成にも力を入れている。DXテーマの企画・実行を担うDXけん引人材(ITエバンジェリスト・データサイエンティスト)、組織にDXを浸透させるDX環境整備人材、全社員が対象のデジタル活用人材の3層に分けて育成し、技術革新や事業環境の変化に柔軟に対応できる組織を目指す」
――事業ごとに採用、育成など違いは。
「人材の採用や基本的な育成方針は全社共通だが、事業部門ごとの特性に応じた研修やOJTを通じてスキルを磨いている。社外との連携にも力を入れ、22年に大阪大学産業科学研究所と連携してKBELCO未来協働研究所を設立。24年に東北大学と先端半導体分野の素材プロセス技術の共創研究所を立ち上げた。産学連携を通じてグループの技術力を高めるとともに、日本の技術人材育成にも貢献したい」
――ダイバーシティに関しては。
「女性の活躍推進に向けて採用から管理職登用まで具体的な数値目標を掲げ、働きやすさ向上の施策も着実に進めている。女性向けの厚生施設の整備やマタニティー作業服の導入など、職場環境の改善を図っている。技能系の女性社員のネットワークづくりや情報共有の場として交流会を開いている。23年度からは30代の女性総合職を対象としたリーダーシップ研修も実施している。技術系総合職の女性社員向けに川崎重工業、住友ゴム工業と3社合同交流会も実施し、女性が安心して働き、キャリアを築けるよう支援している」
――外国人は。
「外国籍社員の採用を継続的に進めた結果、24年度末時点で100人を超える規模。海外グループ会社では主要ポストへの現地スタッフの登用を進め、地域の事業運営体制を強化している。米国・タイ・中国・ドイツのエリア統括会社には人事担当者の配置を進め、現地のニーズに応じた採用・育成を行っている。海外グループ会社の幹部を年1回日本に招いて開催するKOBELCOグローバル・セッションでは、企業理念や価値観の共有を図り、グループの連携と一体感を高めている」
――シニアの活用は。
「65歳定年の下ベテラン社員のキャリアの充実だけでなく、組織内の技能継承や人材確保の観点からもグループ全体でシニア人材の活用を継続的に検討する。健康経営にも力を入れ、人間ドック受診制度を拡充。50、60歳の節目に社員本人だけでなく配偶者も受診できるようにしており、社員と家族の健康保持、増進のための取り組みも充実化させている」
(正清俊夫、田島義史)
――人材戦略を。
「社員一人一人の個性と能力を尊重し、組織の多様性を高めることで新たな価値の創造につなげたいと考えている。2024年度からは魅力ある企業への変革を目指す中期経営計画の中核として、グループ全体で取り組む変革をKOBELCO―Xと名付け、7つのXを設定している。この中のEX(人材戦略・従業員体験向上)では社員の体験価値を高めることで働きがいと成果の両立を目指している。従来の人材公募制度をキャリアトライ制度と改称し、現部署に所属したまま他部署の業務に挑戦できる仕組みを導入した。社内副業の形で自らの意志で新たな業務に挑戦できるよう後押ししている。転勤頻度の低減に関するガイドラインも新たに設けた。職場環境の改善にも力を入れ、寮・社宅・厚生施設・事務所などへの投資として中期計画期間中に約450億円を予定。人材不足への対応として少人化・自動化に関連する投資も150億円規模で進めている。エンゲージメント向上策として7月にKOBELCOストック・プランの導入を決定。従業員持ち株会を通じて毎年30株相当の特別奨励金を支給し、社員の経営参画意識を高め、企業価値向上へ意識醸成を図る」
――人材の確保、育成では。
「特に技術系総合職は年々採用競争が激しくなっているが、入社率の高いインターンシップ受け入れ規模を拡大することで、採用数の増加につなげている。生産現場の技能系社員は、23年度から本格導入した社員の紹介によるリファラル採用が効果的な施策として機能し、累計100人以上が入社した。長期的には人口減少や職業志向の変化により、製造業を志望する人材確保が難しくなる可能性も見据えている。工場の自動化や職場環境の改善を計画的に進めることが重要だ。定着施策として勤務体系の見直しに取り組んでいる。真岡発電所では昨年から4直2交替制を導入。4直3交替制に比べて1日当たりの勤務時間は増えるが、休日や連休は増える。身体的な負担も見極めながら、連続操業の現場で働き方変革を進めている。専門性の高い人材の確保に向けてキャリア採用にも力を入れている。転職市場の活性化で即戦力人材を採用しやすくなり、採用者の約半数、社員全体の約3割がキャリア採用者だ。業務変革や新たな価値創出を促すためDX人材の育成にも力を入れている。DXテーマの企画・実行を担うDXけん引人材(ITエバンジェリスト・データサイエンティスト)、組織にDXを浸透させるDX環境整備人材、全社員が対象のデジタル活用人材の3層に分けて育成し、技術革新や事業環境の変化に柔軟に対応できる組織を目指す」
――事業ごとに採用、育成など違いは。
「人材の採用や基本的な育成方針は全社共通だが、事業部門ごとの特性に応じた研修やOJTを通じてスキルを磨いている。社外との連携にも力を入れ、22年に大阪大学産業科学研究所と連携してKBELCO未来協働研究所を設立。24年に東北大学と先端半導体分野の素材プロセス技術の共創研究所を立ち上げた。産学連携を通じてグループの技術力を高めるとともに、日本の技術人材育成にも貢献したい」
――ダイバーシティに関しては。
「女性の活躍推進に向けて採用から管理職登用まで具体的な数値目標を掲げ、働きやすさ向上の施策も着実に進めている。女性向けの厚生施設の整備やマタニティー作業服の導入など、職場環境の改善を図っている。技能系の女性社員のネットワークづくりや情報共有の場として交流会を開いている。23年度からは30代の女性総合職を対象としたリーダーシップ研修も実施している。技術系総合職の女性社員向けに川崎重工業、住友ゴム工業と3社合同交流会も実施し、女性が安心して働き、キャリアを築けるよう支援している」
――外国人は。
「外国籍社員の採用を継続的に進めた結果、24年度末時点で100人を超える規模。海外グループ会社では主要ポストへの現地スタッフの登用を進め、地域の事業運営体制を強化している。米国・タイ・中国・ドイツのエリア統括会社には人事担当者の配置を進め、現地のニーズに応じた採用・育成を行っている。海外グループ会社の幹部を年1回日本に招いて開催するKOBELCOグローバル・セッションでは、企業理念や価値観の共有を図り、グループの連携と一体感を高めている」
――シニアの活用は。
「65歳定年の下ベテラン社員のキャリアの充実だけでなく、組織内の技能継承や人材確保の観点からもグループ全体でシニア人材の活用を継続的に検討する。健康経営にも力を入れ、人間ドック受診制度を拡充。50、60歳の節目に社員本人だけでなく配偶者も受診できるようにしており、社員と家族の健康保持、増進のための取り組みも充実化させている」
(正清俊夫、田島義史)












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