2021年9月8日

「TREHD」10月発足へトップ対談/タケエイ 阿部光男社長/リバーHD 松岡直人社長/社会的意義ある発電事業 動・静脈連携へ規模拡大

建設廃棄物処理のタケエイと金属リサイクルのリバーホールディングスの業界大手2社は10月1日に経営統合する。両社が設立する共同持株会社「TREホールディングス」(以下TRE)は同日付で東証一部に上場する予定で、業界を超えて「静脈産業のメジャー企業」を立ち上げ、循環型社会構築に向けて動脈産業の大手企業と協力していくためだ。業界内外から注目が集まるなか、産業新聞社はタケエイの阿部社長(TRE社長就任予定)と、リバーHDの松岡直人社長(同会長就任予定)の対談を実施。両社の挑戦について話を聞いた。



――今回の経営統合に至った経緯を。

松岡「タケエイさんの三本(守)会長と当社の鈴木(孝雄)会長がもともと長年にわたって懇意な関係にありました。両社は静脈産業の大手企業同士であり、地球環境の保全という大きな共通の理念を持っています。当社が昨年上場し、秋頃から経営統合の本格的な検討に入りました。循環型社会を構築するためには動脈産業と静脈産業とが連携する必要があると長年思っていたのですが、我々静脈産業の規模は動脈産業に比べると小さく、スケールアップをするのが課題と考えていました。晩秋以降、互いの主力工場を視察しあって検討する中で、シナジーが期待できると確信し、静脈産業の中核企業になるために経営統合の合意に至ったわけです。たしかに合意に至るまでの期間が短く、スピード感のある経営統合ですが、両会長の関係を含め、下地が数年来ありましたし、その分検討段階の密度は濃かったのです」



――経営統合の強みは。

阿部「両社の主力業務が被っていない点が一番よいと思いますね。リバーHDさんは金属リサイクルや家電・自動車リサイクルが中心で、我々は建設系の廃棄物処理やバイオマス(発電)が業務の中心ですから。実はタケエイのなかでは、もし経営統合などの業務拡大を考えるなら、同業者以外で、という意識がありました。同業者と経営統合してもシナジーはないと思っていたからです。今回の経営統合は現場や実務部隊も含め、大きな問題もなく本当にスムーズに動いたと感じます。その背景には環境問題に早急に対応しないといけない、待ったなしだ、という国際的な危機感があるわけです。M&Aなどではなく持株会社方式を選んだのは、対等にやるということが前提にあるからで、新しく立ち上げるホールディングスの機能はシンプルなほうがよいと松岡社長も私も思っていました。両社はそれぞれ許認可を持っていますから、その許認可を残せるというメリットもあります」



松岡「阿部社長が仰った『被っていない』という点を金属リサイクルの側からお話しします。ひとくちに産業廃棄物業界といっても分野は広く、タケエイさんは建設系廃棄物が主体で展開されており、金属リサイクルとの親和性という点ではやはり建設系廃棄物とのシナジーがもっとも大きいと思います。例えば建物解体する場合、金属系のスクラップは当社が処理し、その他建設廃材等についてはタケエイさんが処理します。我々よりも現場の従業員のほうが、両社に親和性があると理解しているはずです」





――シナジーとして掲げているリサイクル事業の深化・発展についての手応えは。

松岡「真っ先にシナジー効果に挙がったのは、シュレッダーダストの活用です。我々は各拠点でシュレッダー設備を多数稼動させていますから、シュレッダーダストも大量に排出されます。現状ではダストは処理費を払って処分しているわけですが、統合によって、タケエイさんに発電事業の燃料として活用して頂き大きな効果が期待できます」



阿部「やはり手応えがあるのは発電事業。マテリアルリサイクルに向かないものはサーマルリサイクルに活用するわけです。まだ不透明ではありますが、今後のプランとしては、コンパクトシティでカーボンニュートラルを制限しているようなところで、TREとしてなにかビジネスできればと思っています。街はどうしても廃棄物が出るものですので、その廃棄物を何らかの方法で処理するような取り組みを目指したい。環境負荷低減の方法を我々なりに提案していければ」





――発電事業は今後特に育てていきたい分野ということか。

阿部「大手の電力はもちろん必要ですが、これからは地域電力の役割も必要になってくると考えています。今稼働している全発電所の1時間当たりの発電出力は 、合計8万5000キロワットです。内訳は、昨年M&Aした市原グリーン電力が5万キロワットで、津軽、花巻などタケエイが各地に設立したバイオマス発電所の合計が3万5000キロワット。市の焼却施設に発電施設をつけるとか、そういう提案も可能だと思います。社会的に存在意義のある事業に育てていきたいですね」



――今後も国内企業との統合・資本参加を進めていくのか。

松岡「統合の目的のひとつは、静脈側をスケールアップすることですから、我々の理念に賛同する企業があれば、ぜひ一緒にやっていきたいと考えております」



――産業廃棄物大手と鉄リサイクル大手の企業同士が垣根を超えることについて、一部の鉄リサイクル業者は懸念や不安を抱えているようだが。

松岡「『鉄スクラップの回収量を増やそう』という視点だと、確かにいま指摘されたような不安が生まれるかもしれません。しかし私どもは、選別加工技術を上げて有価物の取り出し率を高めるという点に重きを置いています。シェア拡大指向は価格競争を引き起こしますし、我々の目指す方向性ではありません。昨年5月に経済産業省が出した『循環経済ビジョン2020』によると、静脈側に期待されるのは良質な再生材を安定的に動脈側に戻すことです。今のやり方で企業価値をどう上げるかを考えた時の我々なりの答えが、動静脈連携による資源循環の加速です。同業者の方が不安や脅威に感じるようなことにはならないと思います」



――今後『静脈産業プラットフォーム』として、行政にメッセージを発信したり業界団体を作ったりなどのプランは。

松岡「私自身はそこまで明確なプランは持っていませんが、昨年10月の『2050年カーボンニュートラル宣言』以降、私どもの業界よりも政府自身が舵を切りはじめたと思っており、結果としてそれは我々にとっても追い風になるでしょう」



――両社の拠点の活用のシナジーは。

松岡「タケエイさんは、首都圏を中心に約5000カ所の建設現場を常時お持ちです。そこで発生する金属スクラップを当社で請け負うことを考えると、シナジー効果は非常に大きい。10月に発表する3カ年計画で、両社の具体的な相乗効果を示すつもりです」



――各社製造業とのアプローチは具体的にどう変わるか。

松岡「動静脈連携は我々静脈側だけでできることではありません。動脈産業側も考え方を変えてリサイクルしやすいような製品を作る仕組みが必要になると思います。我々が連携を通して何らかの御提案をしていくケースが今後出てくると思います」



阿部「建設材料は、解体したときに分別をしやすいような設計ではありません。いま解体している建築物は、30―40年前のものです。たとえばアスベストは現在、非常に気を使いながら処分しますが、その建物を作っていた当時は耐火性がある非常によい機能素材とされて多用されていました。いま建設しているビルなどは40―50年保ちます。そういう長い時間軸のなかで、動静脈連携というか、いかに効率的に再利用するのかという点を考える必要がありそうです」



――家電や自動車からは非鉄金属も資源として取り出すことができる。非鉄産業との連携の方向は。

松岡「現時点では、鉄と同様に選別加工技術を高めるという点を重視するつもりです。集荷量を増やすのではなく、集めたものの中からいかに多くの資源を取り出すかということに注力する考えであり、選別技術などへの投資は重要と考えています」





――リサイクル技術や国民意識が高いとされる欧州諸国と比較して、日本の制度・意識についてどう見ているか。

阿部「欧州が環境問題の面で先進的なのは間違いないですね。国際的なスタンダードを見誤らないよう、日本も歩調を合わせて国内でしっかりとリサイクルすべきだと思います。日本にはこれまで、処理できないゴミを廃プラだとか資源と称して東アジアの国々に輸出してきた歴史がありました。そして輸入した国ではその中から2―3割の資源を取り出して、残りは活用されず、適切な管理もされないで放置され、そのゴミが海に流れて来ているという現実もあります。私は、大前提として、自国で出したものは自国できちんとリサイクルすることが大事と考えています。ただ、リサイクルに必要な技術を他国が必要としているのであれば、技術を提供することには賛成しています」



――企業の経済活動と、カーボンニュートラルやSDGsに向けての取り組みは相容れない部分もあるのでは。

松岡「経済性を抜きにしても、地球環境問題は人類共通の課題です。投資家のトレンドもその方向に向かっており、そのトレンドに対応できないと我々も生き残れないと思います」



阿部「私も同意見です。いま、各国と各企業とが試されていますね。教育の面から思うこともあります。我々は『環境』の授業を受けてこなかった世代ですが、今の教育課程は環境問題やリサイクル、SDGsなどを授業にしっかり組み込んでおり、子供たちの環境への意識はかなり高いです。そういう子供時代からの教育が非常に重要ですし、子供たちは大人を見ていますから、我々も手本にならなければいけませんね」





――各方面からESG投資を呼び込むための、資金調達の手法や説明責任のあり方は。

阿部「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資は確かに世界的に拡大傾向にあります。ただ、タケエイもリバーもやっていることがそのまま『E(環境)』のど真ん中。だからあえてそこのところ(を訴求するの)は……とも思うのですが、株主や世間に対して情報発信をしていくのは重要ですね。様々な投資商品があるなか、『環境にいい取り組みを継続しているか』という判断基準で投資先を選ぶような人も増えてくると思います。その層に訴求するような取り組みはやっていきたいです。決算説明会や株主総会以外の方法も考えていかないといけないでしょうね」



――今後、動静脈連携できたとき、その技術は独占するのか。

松岡「動脈産業側と一緒にビジネスをするにあたって、技術を共有するということはあるかもしれないですね」



――鉄スクラップは需給バランスなどによって相場の地域間格差がある。建築系廃棄物はどうか。

阿部「企業の考え方で変わりますね。リサイクルを推進する業者もありますが、排出事業者のために処理費をできるだけ抑えようと、埋め立てや焼却を中心に考える業者もある。強いていえば、東日本はリサイクル、西日本は焼却がメインという印象を持っています。タケエイとしては環境負荷低減という点を基軸に考えていますが、コストが合わないと企業としては難しい部分がありますから、そのなかで最適な道を探しています。排出事業者や動脈産業にもESGの概念が広まっていけばいいですね。昔はただ消費者にとって良い製品を作って売ればよかったのかもしれませんが、今はそれに加えて『この製品をリサイクルする際はどうすればよいのか』ということをメーカーや消費者が考える時代になっています。そこにビジネスチャンスがあるわけです」



――鉄スクラップ企業が電炉メーカーの製鋼時の鉄スクラップ配合作業を請け負ったり、産業廃棄物の業者が一般廃棄物事業も展開したりといった事例がある。今後そのように川上/川下に展開していくことは考えているか。

阿部「タケエイグループでは、すでに関東の複数地区で一般廃棄物の収集運搬や中間処理業を実施しています。環境にいいことであれば協業を考えることはあるでしょうが、むりやり他社の仕事を奪いたいとは思いません。特に一般廃棄物のカテゴリ分けは行政の判断によるところが大きいですし。ただ、今の質問を受けて思いついたのが、災害時のことです。被災して使い物にならなくなった畳や家電は、一般廃棄物の扱いです。つまり、我々産業廃棄物業者はどんなに収集するトラックがあっても、それを運べない。非常時に速やかにお手伝いできるように行政と協力することは検討の余地があるかもしれません。松岡社長はいかがですか。電炉メーカーの鉄スクラップ配合作業を受託、という話をお聞きしましたけど」



松岡「カーボンニュートラルの流れで高炉もスクラップの使用比率を上げてきて、高炉や電炉が高度な選別技術を我々に要求してきますから、縦のバリューチェーンのなかで機能を拡大していくということは大いに考えられるでしょうね。その場合も、選別技術への投資が必要になると思います」



――SDGsの17の目標のなかには、ジェンダー平等の実現も掲げられている。現時点の両社の正社員における女性の比率と、10年後の目標値は。

松岡「リバーグループの全正社員のうち女性の割合は14%ですが、私自身は女性だから採用するというのは逆に女性差別になるという考えです。男女関係なく能力や意欲のある人に事業に参加してもらい、結果として女性が増えるというのが一番理想です」



阿部「タケエイ単体、グループ連結とも、女性比率は約20%です。ただタケエイ側で考えると10年後は男女比が逆転すると思います。確かに、3Kの現場といわれていたのは事実です。でも今はむしろ現場に行きたいっていう女性が入社してきますよ。これはすごくいいことです。新たに入ってくる女性社員が、先輩社員を見て、自分のキャリアが瞬時に描けるわけですから」



――特に女性向けの企業アピールをしていたのか。

阿部「いえ、そういうわけではありません。ただ、環境への意識は女性のほうが高いと感じます。大学の環境学部とか学科の学生は、女性比率のほうが高いそうですよ」



――TREは高収益企業を目指していくが、ROS(経常利益率)の目標値は。



松岡「ある一定の利益率は求めていきますが、詳細は10月に発表予定です。以前データを調べたら、鉄スクラップ業界のROSは多くの企業が約1・5-2%なのに対し、産廃業界はROSが10%くらいありました。もちろん、市況変動の要因が大きいのですが、その際の社内メッセージとして『我々も将来的に金属リッチな廃棄物のウエイトをあげないとROSが上がらない。単に鉄スクラップを買って処理して売るだけでは……』と発信したのを覚えています」



阿部「利益はやはり大事です。タケエイとしてはROSでなく営業利益率で見ていまして、常時10%くらいはあります。統合によって生まれる無駄は省くつもりですが、リストラは考えてないですね。なにせ人は足りませんので。それは松岡社長も同じお考えだと思います」



松岡「そうですね。コストシナジーよりも事業シナジーを求めての統合ですから。だからダストの処理コストを除き、コストが削減されるってことはないかもしれないですね」



――最後に読者にメッセージを。



阿部「ぜひTREを応援してください。自分でいうのもなんですが、環境に貢献するリーディングカンパニーとなれる、いい会社だと思います。全従業員が自信を持って世間に誇れる会社にしたいです」



松岡「地球環境の保全は今回の経営統合の大テーマ。そのテーマのもと、ESGやSDGsを体現する先駆的な企業になれればと思います」(松井健人)

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