2023年2月27日

財務・経営戦略を聞く JFEHD副社長 寺畑雅史氏 構造改革の効果を追求 数量増と販売改善に注力

――通期の連結事業利益予想を2350億円と前回見通しから200億円下方修正した。粗鋼生産の予想を2400万トンと前回から100万トン引き下げたことが大きい。

「前回に比べ国内は資材高騰などの影響を受け土木建築分野で需要の先送りが見られ、海外では鋼材市況の回復が遅れている。数量は追わず、価格にこだわった販売姿勢を堅持したことなどから粗鋼生産は落としている。連結事業利益は下方修正したが、棚卸資産評価差等除く実力の損益をみると、上期に比べ下期は改善する見通しだ。主原料価格はもちろん、諸物価の変動分をきっちり転嫁し、鉄鋼事業として実力がついてきている。今年9月に東日本製鉄所京浜地区の上工程を休止するが、これによってコスト削減の効果を発揮し、中期経営計画最終年の24年度に結びつけていきたい。中期経営計画で目指す鋼材トン当たり利益1万円の目標に向けて、着実に取り組んでいく」

――前年との比較では通期で43%減る見通しだ。

「棚卸資産評価差の影響が最も大きい。加えて内需や海外市況の停滞が見られ粗鋼生産が減少したこと、また為替の円安影響も受けた。さらに海外グループ会社は市況軟化などの影響を受け減益となった。インドのJSWスチールの業績は大幅に落ち込み、米国のCSIも鋼材市況の下落で業績は悪化した。東南アジアの自動車用鋼板製造拠点は通貨安の影響などで収益が鈍化した。一方で利益の内訳をみると販売価格・原料が大きく改善した。今年の上期は原料炭や諸物価の高騰によるマイナス影響が大きかったが、国内中心に販価の改善が進んだ」

「東日本製鉄所千葉地区の第6高炉の改修影響も含まれているが、高炉改修による一過性影響130億円と減産コスト100億円の合計230億円のマイナスについては、アクションベースのコスト削減230億円で相殺できる見込みだ。数量の減少は350億円のマイナスに効くが、構成差で50億円のプラスを得る。国内の建築・土木が低調で特に足元では建築関連が鈍く、一般薄板の販売が振るわない。海外市況の軟化も厳しいが、シームレス鋼管の販売が堅調なため、構成差はプラスとなる」

――需要をみると自動車の生産の回復が依然遅れている。

「今回の通期予想の修正に関して自動車生産の状況はさほど影響していない。粗鋼生産を100万トン下方に見直したが、国内は建設関連の需要動向を主に考慮した。都市部の再開発案件は堅調であるが、住宅関連が見通しにくい。海外は中国の鋼材市況が大きく下がり、東南アジアに波及した。メタルスプレッドは過去最低に近い水準になっており、そういう中で輸出を抑える必要がある。ただ、中国で不動産分野への支援的措置が見られ始め、ゼロコロナ政策も解除された。そうしたことを見据えて需要回復の期待から熱延コイルの市況も上がっている。中国経済は戻っていくと思うが実需にいかに結びつくか、よく注視する必要がある」

――販価は上期のトン13万1600円から第3四半期に13万6300円に上昇した。

「販価の見直しが進み、特に諸物価の上昇分についてかなりご理解をいただいた。マージンの改善によって実力の損益は上がっている。粗鋼生産の通期見通しは前々回予想の8月時点から200万トン減っているが、それでも利益予想は同水準の1500億円であり、数量が減っている中で利益を上げられる体質に変わり、着実に実力は向上している。第4四半期については、主原料価格は若干の修正となるが、諸物価は高水準で維持され、また至近では電力高騰の課題もある。適正な販価への反映については継続して取り組む」

――鉄鋼事業の実力利益は上期322億円。下期は450億円程度の予想だが、高炉改修によるコスト影響100億円を考慮すると550億円、年1100億円が現在の実力ということに。

「23年度は1100億円が実力利益のスタートとなるが、そこに年間150億円のコスト削減と構造改革効果450億円の一部発現分がプラスされる計算だ。22年度下期の粗鋼生産は年換算で2300万トンと水準が低く、一過性の減産コストもあり、2400万トンまで戻れば200億円ほどのプラスとなる。23年度の数量の予測は難しいが、粗鋼2600万トンの環境に戻れば実力利益2000億円が見えてくる。製造業は比較的堅調で自動車生産は回復基調にある。土木建築も都市部の再開発や物流倉庫は計画が多い。海外経済の影響を受けて受注の鈍化がみられる産業機械は中国経済が一定程度回復すれば状況は改善する。中国の正常化や東南アジアでも先送りされている建設需要がいずれ出てくる。数量の増と販売価格の改善、構造改革の効果の発現により利益のさらなる上積みを狙いたい」

――高級無方向性電磁鋼板の生産能力の追加増強の方針を決めた。

「24年度上期に能力を増強するが、さらに500億円を投じて26年度内に能力を現行の3倍にする。無方向性電磁鋼板の需要は25年には22年の3倍程度に増えると予想しているが、それ年以降も需要は増えていく見通しであり、さらなる増強を検討しなければならない。海外では、現在JSWと無方向性電磁鋼板の製造で協力しているが、能力増強については、電動車が増加するなど高級鋼が使用される市場の動向をにらみながら考えていく。JSWとは方向性電磁鋼板の合弁会社設立を検討しており、コロナ禍による中断もあったが、今年度内には決めていきたい」

――昨年に大きく変動した為替の影響はどの程度に。

「為替は一時期より上がり、足元は130円程度で安定している。2―3月は4億円の支払い超過だが、年度でも24億円程度と8月に予想していた40億円強からは影響が緩和されている」

――商社事業は過去最高益を更新する見通し。エンジニアリング事業は通期で利益を確保する。

「JFE商事は米国で鋼管販売会社や鋼製薄板建材メーカーへ投資を行い、また海外の加工拠点を充実させるなど事業を着実に強化している。中国のゼロコロナ政策の影響で苦労しつつも通期のセグメント利益600億円と過去最高となる見通しだ。JFEエンジニアリングは4―12月期に07年以来の赤字となった。通期は減益予想ではあるものの赤字をはね返して130億円の利益を確保する見通しであり、地力はついてきている」

――23年度は京浜地区の9月の上工程休止に向け、より重要な年になる。

「京浜地区の休止については計画通りに進んでいる。千葉地区中心に他地区へ移管するお客様のアプルーバル(品質承認)を取得することや半製品の輸送体制の確立などを進め、予定通り9月に休止することが重要だ。千葉地区ではカーボンニュートラルの実現に向けてカーボンリサイクル高炉や電炉の実証炉をスケジュール通りに建設し、実証実験の成果を上げて次のステップに進んでいくことが重要になる。西日本製鉄所倉敷地区での大型電炉の導入については千葉地区の実証炉で知見を深めた後に規模や仕様などを決めていく。グリーン鋼材についても価格設定など検討を進めており、23年度の販売開始を予定している」(植木 美知也)

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