2025年10月9日

経営戦略を聞く/東京貿易HD 坪内秀介社長/セグメント経営 視点高く/印現法設置、CIS向け営業強化

東京貿易ホールディングス(本社=東京都中央区)は、2025年2月にインドに現地法人を設立するなど海外への事業展開を加速させている。坪内秀介社長に今期の方針などを聞いた。

――前期決算の結果をどのように評価しているか。

「25年3月期決算は連結ベースで前期比増収となり、当期純利益は増益、また営業利益と経常利益は減益となった。営業利益は45億1500万円と前期比で2・3%減り、悔しい結果となった。増収はグループ各社による事業活動が功を奏したほか、TB播州電装や日本アドバンスロールといったM&Aによる収益効果が通期で発揮されたことも大きい。営業減益は為替が円安に振れたことによる仕入れ価格上昇や、人件費などのコストアップの影響が主な要因で、売価への転嫁までにタイムラグが生じ、利幅が縮小した」

――米国の関税引き上げ影響はどうか。

「直接的影響は少なく、間接的影響は未知数。例えば東京貿易テクノシステムが手掛ける三次元測定機は日系自動車メーカーが主要顧客で、米国で自動車販売台数が減少すれば影響を受ける。東京貿易マテリアル(TML)では製鉄所の耐火煉瓦を扱っているが、鋼材生産量の変化に販売量が連動する可能性がある。その一方で、米国の関税措置などに伴い、減・増産、あるいは撤退、工場新設など各メーカーで国毎に見直す動きがあり、設備を取り扱う当社グループにとって商機でもある」

――今期(26年3月期)の目標を。

「今期は売上高が681億円、営業利益は53億円を計画している。グループ企業がそれぞれの収益目標を達成するとともに、25年4月から本格始動したセグメント経営を推進することで収益力を高める。セグメント経営は従来の事業領域を見直し、グループ企業を4つのセグメントに再編したもので、セグメントCEOを配置している。個社では目の前のビジネスに注力するあまり、中長期的な視点や市場を大きく捉えた事業構想などへの視座が低く、視野が狭く、視点が集中する。セグメント経営で視座や視野、視点を高見に置き、顧客に提供する価値を見極め、戦略に落とし込んで実行することで増益を図り、成長に繋げていきたい」

――今期で2年目に入った第7次中期経営計画の進捗はどうか。

「米国関税措置などを受けて、世界経済で不透明感が漂う中、今期は4―6月期の収益が目標達成に向けて出遅れており、これからキャッチアップできるかが重要。最終である28年3月期では連結売上高1000億円、営業利益100億円を目標に設定しているが、現行事業のみでは達成が難しく、M&Aなどを講じる必要がある」

――鉄鋼分野や非鉄金属分野を事業領域とするマテリアルサプライセグメントの方針は。

「前期は売上高が67・2%増の176億6600万円、営業利益は30・5%増の15億5300万円。今期は売上高が205億円、営業利益は16億8000万円を目指す。TMLや日本アドバンスロール、TB播州電装が主体となり、収益目標達成に取り組んでいる。TMLは自動車部品用ステンレス製品のインド向け輸出に注力しており、実績は伸長。耐火煉瓦は現状、定型煉瓦が主体であるが、不定形煉瓦にも取り組んでおり、売り先拡大とともに規模の拡張を期待している。東京貿易テクノシステムとともに耐火煉瓦の消耗状態を測定する『耐火物残厚測定システム』や操業の合理化、省力化のためのDXを提案しており、顧客への付加価値アップにも力を注いでいる。日本アドバンスロールは製鉄用高付加価値ロールを強みとし、国内シェアが高い。海外を含めてTMLが持つ営業ルートを活用するなどグループ内でシナジーを高め、営業を強化する。TB播州電装は海外を主体に事業拡大のチャンスがある。インドネシアの企業とワイヤーハーネスを製造する合弁企業をインドに設置しており、拡大している需要を捕捉する。一方、インドネシアの工場では中国からリーズナブルなワイヤーハーネス用電線の輸入を検討するなど、高品質かつ競争力のある製品を提供していきたい」

――グループ企業の設備投資計画を。

「エネルギーインフラセグメントのTBグローバルテクノロジーズがマレーシアに工場を新設する。タンカーからエネルギーなどを荷揚げするローディングアームは国内でトップシェアを維持しているが、世界シェアを高めるべく、東南アジアで拡販するのが狙い。来秋の開設を計画する。既存工場を賃借し、メイン部材は長岡工場で製作して現地で組み上げるスタイルで、コストダウンに繋げる」

――海外ではインドに現地法人を設立した。

「インドは経済成長と産業需要が高まっており、まずはCIS向けのトレーディングビジネスなどを主体に営業を強化する。将来的にはインド製品を第3国に輸出するビジネスモデルを確立したい。米国は引き続き経済成長が期待されているが、当社は米国でのビジネスが少なく、物足りない。各セグメントで米国マーケットへのアプローチを検討しており、拠点設置を含めて現地調査を始めている」

――24年10月には新経営理念を策定した。

「従来の連邦経営から脱し、個社最適から全社最適へと考え方を変えるため、ハード面ではセグメント経営体制を構築し、ソフト面ではグループの経営理念を策定した。パーパスやビジョン、行動指針を通じて変化に向き合い、専門性を磨き続けることで、持続的な企業価値の創出と、社会を突き動かし貢献しうる存在であり続けることを目指す。コーポレート部門を強化し、効率化や高品質化に取り組みながら、事業を拡大していきたい」

――上場の可能性は。

「過去、上場を検討していた時期もあるが、今は成長する力を付けることに専念したい。上場はゴールではなく、上場した後にどのようにあるかが重要であり、そのビジョンを描くにはまだ実力が不足している」(濱坂浩司)









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