2026年1月15日

三井物産 鉄鋼製品・金属資源の戦略/福田哲也専務に聞く/原料―製品一貫の強み発揮/既存強化と新規開拓の二兎追う

三井物産は強い事業を強化しながら、新たな社会ニーズに応じる新規事業を加える全社方針に沿って金属セグメントを強化している。鉄鋼製品、金属資源両本部を管掌する福田哲也専務に戦略を聞いた。

――鉄鋼製品、金属資源の位置付けを。

「金属セグメントとして一気通貫で見る。鉄はグローバルで20億トン近い。代わる素材はない。関係会社を含め、Feを上流から製品、リサイクルまで対応できる一貫体制を取る。ヒト・モノ・カネの配分をバリューチェーン全体で捉え、機動的に配分することで変化に即応できるのが特長だ。1つの産業に身を置きバリューチェーンの課題にどう応じるかは、トレードか、事業そのものに資金を投下する方がいいかは課題によって異なる。バリューチェーン全体を俯瞰することで、鉄鋼製品も金属資源もトレードの事業規模が伸び、相乗効果が出ている。トレードと事業投資を完全に分けるのは当社ではそぐわない」

「鉄鋼製品は当社事業ポートフォリオの中核を担うど真ん中の商品群であり、三井物産にとって極めて重要な戦略分野であることを強調したい。チェーンの中で機能を磨き続ける。この機能が競争力であり、機能がないと生き残る余地はない。国内の流通再編も含め何ができるか常に考えている。去年4月に管掌してから鉄は産業のすそ野が広いと感じる。市場もグローバルで300兆円。鉄鉱石は約30兆円。鋼材の売買を初め、鋼材の加工だけでなくIMR(検査、補修、修理)や港湾運営まで、従来やってきた分野を磨き続けつつ、新たな付加価値分野も含めて先進的にやろうとしている。例えば、インフラの老朽化は世界的に深刻化する中、スタッツのパイプラインのメンテナンス事業は、既存のトレード事業とのシナジーを図りながら、より付加価値の高いサービスモデルへの広がりが期待できる」

――鉄鋼製品はくくりを変えた。

「1900年代は例えば『鋼管部』と言った製品名が部名であり、かつ、部の数が非常に多かった。組織を大括り化して産業を見渡す時に分野を見た方が顧客を含めて効果があるというのが今の仮説だ。4つの事業領域に分けている。三井物産スチールもマトリックスで一体運営をする形で組み込んでいる。金属資源との連携に関しては、3年前に(金属資源)本部長をやっていた時と比較にならないくらい進んでいる。Jクレジットの電炉事業者向け販売や、金属資源と船舶と共同で脱炭素に向けた取り組みも出てきている。上流資源から製品、リサイクルまでカバーしている強みをもっと生かす。我々も長年北米でOEM向けが主体だが製鉄産業に長年携わってきた。スチールテクノロジーズは300万トン規模を扱い、USスチールとの関係も深い。日本製鉄の買収を機に更に連携できる余地がある」

――金属資源は鉄鉱石に巨額投資した。

「鉄鉱石の事業は追加投資せずとも盤石であるという誤解があるかもしれないが、そこまで単純ではない。資源は採掘すれば当然枯渇に向かう。故に中長期的な計画を立て最適採掘方法を取り、経済合理性を担保しながら資本を投じて資源を補充する必要がある。技術的な知見・専門性もチームにある。ローズリッジは何十年もかけて権益保有者と関係を作り、機会を捕捉する体制を整えてきた。強いものをより強く、収益性を高める究極のミドルゲームだ。資源は銅も原料炭もミドルゲームを全社的に進める中で重視している」

――鉄鉱石に巨額投資しても余力はあるか。

「全社的な財布は1つなのであれだけの資金を1事業部門で使うことになったので結果を出さないといけない。一方で、金属資源は打ち止めかというと全社最適で見ている。当社の攻め筋はインダストリアルビジネスソリューション(IBS)、グローバルエナジートランジション(GET)、ウェルネスエコシステムクリエーション(WEC)だ。この2本部はIBSがメインだがGETも電力含めチェーンで銅、電池原材料含め大事だ。攻め筋のなかで意義を見い出せるものをやる」

――銅は優良資産、有力提携先もあり拡大の余地がある。

「銅は注力分野の一つ。究極のミドルゲームの1つがコデルコとアングロ・アメリカン・スールのロスブロンセスとアンディーナの一体開発だ。長年の悲願だった。中経3年目だが金属資源でローズリッジに並ぶ大きなイベントだった。私が07年に銅を担当した時から『次は銅』と言い続け、困難もあり今に至るが、当時考えていた銅資源の希少性はますます高まっている。採掘条件が良い、品位が高い、競争力が高い案件から開発が進み、難易度の高いものが残る。既存資産とシナジーがある形で開発できるか見る。許認可、地政学的な要因も今まで以上に緊張が高まる中で採算性も厳しくなる。過去と比較すると、生産能力トン当たりの投資額が数倍に膨れ上がっている。資産の生産力を高め、コスト削減しながら価値を高める取り組みが重要になる。一方で、新規案件は常に視野に入っており、リストを作って優先順位付けをしながら、いい案件があれば動ける体制は準備している」

――銅の買鉱条件が製錬に厳しい。

「製錬あっての鉱石。あまり極端な条件は誰も望まない。鉱山側の収益が増えれば良いわけではなく、今の状況は健全ではない」

――重要鉱物は。

「電池のチェーンの上流は引き続き重点分野としてやる。正極材の原料であるリチウムはブラジルのアトラスに足掛かりを付けたが、引き続き塩湖系を含めて優良案件を見定める。ニッケルは同じく正極材及びステンレスに使用される重要鉱物であり、フィリピンにてタガニートニッケル案件及び日向製錬所に出資しミドルゲームに注力している。ニッケル価格が低迷している為投資するには悪くない時期という見方もできるが、良い案件が市場に限定的。ニッケルはインドネシアに偏重している状況を考えると新規案件は難易度が高い。これらは必ずしも投資に限らず、安定供給を最上位として取り組んでいる。リサイクルで期待しているのがJサイクル。まだ規模は決して大きくはないが、ブラックマスの回収事業であり、試験段階からスタートするがもっと事業の幹を太くしたい。レアアースは経済安保上の観点からも研究している。鉱山から精製し磁石になるまで様々なプロセスがあり、もう少し自信が持てるまでは検証を続ける」

――グリーンアルミの調達拡大などは。

「アルミも重点分野。我々が入っているアルノルテ、アルブラスはグリーンアルミだ。グリーンアルミの供給体制は重要な戦略と位置付けており、既存出資先以外の案件も検証を重ねている。地域によってボーキサイトやアルミナの需給が異なり簡単ではないが、ターゲットを絞りタイミングが来た時にすぐ動けるようにしている。あとは中国のアルミ二次合金メーカーであるアルコムに25%出資参画しており、アルミバリューチェーンで取り組む証左だ。また鉄鋼製品と金属資源が協働して中国でアルミのスクラップのクローズドループ取り組み、即ち発生スクラップを当社が回収し製品に仕立て自動車会社に戻す仕組みを構築したこともある。本部横断的な協業案件だ」

――グリーンスチールとか自動車会社にアルミと鋼材が一緒に行くのか。

「自動車OEM向けの対話力とかラインアップだと一日の長があるので、鉄鋼製品でアルミ製品も含めてワンストップショップ的な形で対応する。アルミの建材とか鉄鋼製品本部が普段活動していない領域でのアルミ製品販売はアルミ部隊がやった方が良い。三井物産メタルズがアルミ製品を取り扱っているが、取締役も両本部から三井物産スチールと三井物産メタルズに差し入れ、両領域で最大限ビジネスを拡大することが出来るようにしている」

――直接還元鉄(DRI)は。

「オマーンの事業は神戸製鋼所と一緒にやっている。還元鉄需要の伸びは若干後ろ倒しになっているが、中長期的な観点から製鉄産業にて高級冷鉄源のニーズは必ずある。電炉業界が今後どのように変化していくか、両本部に跨ってグリーンスチールのタスクフォースを組成し新しい事業機会の捕捉の取り組みを行っている」

――原料炭はまだ必要だが位置付けは。

「当社の原料炭の権益生産量は現状年500万―600万トン程度。過去にはパートナーの撤退に合わせ誰がベストオーナーか考え一部権益を売却してきた経緯もあるが、鉄鉱石を強化していることと並び、原料炭は業界にとって重要であるという位置づけは変わらない。重要な資源として引き続き安定供給する。現状品質も含め比較的優位性が高い資産を持っているので、資産の最適化を目指していきたい」

――地上資源も大事。

「地下資源と地上資源を両立させる方針を踏襲してきた。取扱量が多く、かつスクラップの選別及び加工処理技術も先進性のあるシムズに出資している。また、インドのMTCに出資参画もしたが、国内外含めてまだ取り組む余地はあると考えている。日本含めスクラップのニーズが増える地域は課題だ。従来の取り組みに加え、先日出資したエバースチールの組み合わせも選択肢の一つであり、当社として産業課題を解決していく」(正清 俊夫、田島 義史)







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