2025年12月12日
今井正・日本製鉄社長兼COO/一問一答/海外投資規模、国内上回る/脱炭素推進 電炉に重点
今井正・日本製鉄社長兼COOの会見一問一答は以下の通り。
――総合力世界ナンバーワンの鉄鋼メーカーを目指す意義をあらためて。
「総合力世界ナンバーワンへの復権を2030年までに実現する計画だ。中国の国営企業は一旦外に置いた上で生産規模や収益レベル、技術力、グローバル展開力など勘案しトータルでリーディングカンパニーになる。旧新日本製鉄はかつて世界のトップであり、日本製鉄の社員の中にそのDNAは流れている。国内の事業改革や海外の成長を推し進め、世界ナンバーワンに復権するピースは全て整っている。国内の収益力をベースにUSスチールの買収を実現し、世界ナンバーワンになるタイミングは今しかないと考えている」
――6兆円の投資の内訳は。
「2対1で海外4兆円程度、国内2兆円程度で国内をかなり絞り込む。意思決定ベースだが、海外4兆円のうち米国が圧倒的に多い。USSは100%子会社であり、インドは合弁事業ということもある。AM/NSインディアはハジラ製鉄所の能力拡張を進めており、(年産能力)1500万トン規模に26年度にも拡大する。インドの鉄鋼需要は30年に2億トンを超えるレベルに伸びるのは間違いないと言われている。マーケットの成長に合わせて生産能力を高めていく意味でハジラの能力拡張だけでは足りず、(確保した)南部のラジャヤペタは1000数百万トンの一貫製鉄所を建設できる土地があり、まずは700万トンレベルの生産構造を建設する投資を計画している」
――5年間の投資6兆円の資金をどうまかなうのか。
「過去の計画と異なり、国内投資を海外の投資が初めて上回る。国内外の事業環境は厳しい状況が続く前提なので、得られるキャッシュに対しこれだけの投資を行うとキャッシュアウトが先行する5年間になる。5年間トータルでフリーキャッシュフローはマイナスとなる。資金の調達は不可欠であり、どういう形でまかなうか最適なポートフォリオを検討している」
――2030年度目標の海外事業利益5000億円以上の内訳は。
「25年度見通しは1150億円で原料事業の750億円を含んでいる。30年度はラフな数字だが、原料事業とAM/NSインディアを中心としたインドで各1000億円、USSに代表される米国で3000億円、タイとその他のプラスアルファで5000億円以上の利益を実現する計画だ」
――30年度の国内高炉は八幡地区1基の電炉転換で9基体制となる計画に変わりはないのか。
「ご指摘の通りだ。これまでの5年間と26年度からの5年間は連続している。これまでの5年間は業界に先立って製鉄所を休止し、高炉や多くのラインを休止してきた。戦略投資を実行し、立ち上がってくる時期を踏まえ、国内生産拠点の十分な競争力を現行の中長期計画で実現できた。いかなる環境でも実力の連結事業利益6000億円以上を達成できる力がついた証左だ。これからの5年間は国内の再構築した競争力ある生産構造を最大限に活用し、国内需要を捕捉してコスト競争力を高めていく。追加的な高炉休止などは織り込んでいない」
――USSの経営体制や意思決定の進め方など経営のあり方は変わるのか。
「当社から派遣する役員と米国の役員とのベストミックスの姿はあると思うが、今の形から大きく変わることはないと考えている。執行とマネジメントで役割が明確に分けられ、米国企業らしいスタイルと思う。日本の伝統的な企業の当社のように執行から上がり役員になってトップマネジメントを行うスタイルとは異なるが、それぞれのマーケットに適したものがあり、尊重しながら長所と短所をみていく」
――脱炭素の取り組みについて。
「新たな中長期計画では八幡と広畑、周南の電炉投資に専念する。国の支援をいただいても6000億円規模の投資となり、割ける精一杯の財源を電炉に投じる。水素社会の実現に少し時間がかかるとみており、水素還元製鉄の技術は未確立なので技術開発に集中する。電炉で高級鋼を造る技術は海外に展開でき、米国やインドなど世界に脱炭素の技術を広げていくことになると考えている」
――国内生産能力を維持するようだが、内需は減少するのでは。
「国内鋼材需要は年5000万トンを下回るレベルだが、次の5年間は数百万トンレベルの需要減を前提としている。今の世界的な通商条件を勘案すると、日本の自動車生産が米国に移転するなど無視できない影響はあると考えている。複数の国内生産拠点を持つ強み、営業施策や商流、物流などグループ総合力を活用して内需を最大限捕捉する。国内でさらに需要を捕捉する、コスト競争力をさらに磨いて輸出を一定規模維持することが不可欠となる」
――内需が減っても国内で技術開発力を維持できるのか。
「研究開発のリソースはUSSと国内で10倍以上の開きがあり、国内の方が多い。インドは研究開発はほとんどなく、リソースは圧倒的に国内にある。国内の研究者が海外に出て、海外のマーケットに合わせたプロセス・プロダクトの開発をする5年間となる。USSの課題も、これまでの研究知見を活用することで問題解決できることが多々ある。世界で最も高度化している国内マーケットで磨いた技術は世界トップクラスであり、国内の研究開発拠点が世界を引っ張ることになる。国内は高級鋼だけではなく汎用品や店売りの分野もあきらめない。コスト競争力や安定操業の力などに研究リソースを投入する」
――総合的ソリューション展開でどう需要を深堀りするのか。
「自動車を例にとると、パーツに着目するのではなく、培ってきたいろいろな技術的な知見を総合化し、自動車全体をどう最適化するか、自動車の骨格・構造全体をどうするかなど説得力ある提案ができるようになっている。材料や工法のソリューション提案の対象を大きく捉え、全体を最適化する提案を行う。熱延ミルを6本持つなどお客様の工場に近いところにある製造拠点を生かす。新車の開発に、より早い段階から一緒に取り組めば開発工期を短縮できる。鋼材の機能だけで勝負するのではなく、いろいろな切り口で総合力を生かし、お客様に貢献することで圧倒的なポジションをとっていく。建材用やエネルギー用の鋼材もそうであり、技術の広がり、いろいろな製品・鋼種、、グループ会社も協業してワンストップで相談できるパートナーとして存在感を高めて需要を捕捉していく」
――総合力世界ナンバーワンの鉄鋼メーカーを目指す意義をあらためて。
「総合力世界ナンバーワンへの復権を2030年までに実現する計画だ。中国の国営企業は一旦外に置いた上で生産規模や収益レベル、技術力、グローバル展開力など勘案しトータルでリーディングカンパニーになる。旧新日本製鉄はかつて世界のトップであり、日本製鉄の社員の中にそのDNAは流れている。国内の事業改革や海外の成長を推し進め、世界ナンバーワンに復権するピースは全て整っている。国内の収益力をベースにUSスチールの買収を実現し、世界ナンバーワンになるタイミングは今しかないと考えている」
――6兆円の投資の内訳は。
「2対1で海外4兆円程度、国内2兆円程度で国内をかなり絞り込む。意思決定ベースだが、海外4兆円のうち米国が圧倒的に多い。USSは100%子会社であり、インドは合弁事業ということもある。AM/NSインディアはハジラ製鉄所の能力拡張を進めており、(年産能力)1500万トン規模に26年度にも拡大する。インドの鉄鋼需要は30年に2億トンを超えるレベルに伸びるのは間違いないと言われている。マーケットの成長に合わせて生産能力を高めていく意味でハジラの能力拡張だけでは足りず、(確保した)南部のラジャヤペタは1000数百万トンの一貫製鉄所を建設できる土地があり、まずは700万トンレベルの生産構造を建設する投資を計画している」
――5年間の投資6兆円の資金をどうまかなうのか。
「過去の計画と異なり、国内投資を海外の投資が初めて上回る。国内外の事業環境は厳しい状況が続く前提なので、得られるキャッシュに対しこれだけの投資を行うとキャッシュアウトが先行する5年間になる。5年間トータルでフリーキャッシュフローはマイナスとなる。資金の調達は不可欠であり、どういう形でまかなうか最適なポートフォリオを検討している」
――2030年度目標の海外事業利益5000億円以上の内訳は。
「25年度見通しは1150億円で原料事業の750億円を含んでいる。30年度はラフな数字だが、原料事業とAM/NSインディアを中心としたインドで各1000億円、USSに代表される米国で3000億円、タイとその他のプラスアルファで5000億円以上の利益を実現する計画だ」
――30年度の国内高炉は八幡地区1基の電炉転換で9基体制となる計画に変わりはないのか。
「ご指摘の通りだ。これまでの5年間と26年度からの5年間は連続している。これまでの5年間は業界に先立って製鉄所を休止し、高炉や多くのラインを休止してきた。戦略投資を実行し、立ち上がってくる時期を踏まえ、国内生産拠点の十分な競争力を現行の中長期計画で実現できた。いかなる環境でも実力の連結事業利益6000億円以上を達成できる力がついた証左だ。これからの5年間は国内の再構築した競争力ある生産構造を最大限に活用し、国内需要を捕捉してコスト競争力を高めていく。追加的な高炉休止などは織り込んでいない」
――USSの経営体制や意思決定の進め方など経営のあり方は変わるのか。
「当社から派遣する役員と米国の役員とのベストミックスの姿はあると思うが、今の形から大きく変わることはないと考えている。執行とマネジメントで役割が明確に分けられ、米国企業らしいスタイルと思う。日本の伝統的な企業の当社のように執行から上がり役員になってトップマネジメントを行うスタイルとは異なるが、それぞれのマーケットに適したものがあり、尊重しながら長所と短所をみていく」
――脱炭素の取り組みについて。
「新たな中長期計画では八幡と広畑、周南の電炉投資に専念する。国の支援をいただいても6000億円規模の投資となり、割ける精一杯の財源を電炉に投じる。水素社会の実現に少し時間がかかるとみており、水素還元製鉄の技術は未確立なので技術開発に集中する。電炉で高級鋼を造る技術は海外に展開でき、米国やインドなど世界に脱炭素の技術を広げていくことになると考えている」
――国内生産能力を維持するようだが、内需は減少するのでは。
「国内鋼材需要は年5000万トンを下回るレベルだが、次の5年間は数百万トンレベルの需要減を前提としている。今の世界的な通商条件を勘案すると、日本の自動車生産が米国に移転するなど無視できない影響はあると考えている。複数の国内生産拠点を持つ強み、営業施策や商流、物流などグループ総合力を活用して内需を最大限捕捉する。国内でさらに需要を捕捉する、コスト競争力をさらに磨いて輸出を一定規模維持することが不可欠となる」
――内需が減っても国内で技術開発力を維持できるのか。
「研究開発のリソースはUSSと国内で10倍以上の開きがあり、国内の方が多い。インドは研究開発はほとんどなく、リソースは圧倒的に国内にある。国内の研究者が海外に出て、海外のマーケットに合わせたプロセス・プロダクトの開発をする5年間となる。USSの課題も、これまでの研究知見を活用することで問題解決できることが多々ある。世界で最も高度化している国内マーケットで磨いた技術は世界トップクラスであり、国内の研究開発拠点が世界を引っ張ることになる。国内は高級鋼だけではなく汎用品や店売りの分野もあきらめない。コスト競争力や安定操業の力などに研究リソースを投入する」
――総合的ソリューション展開でどう需要を深堀りするのか。
「自動車を例にとると、パーツに着目するのではなく、培ってきたいろいろな技術的な知見を総合化し、自動車全体をどう最適化するか、自動車の骨格・構造全体をどうするかなど説得力ある提案ができるようになっている。材料や工法のソリューション提案の対象を大きく捉え、全体を最適化する提案を行う。熱延ミルを6本持つなどお客様の工場に近いところにある製造拠点を生かす。新車の開発に、より早い段階から一緒に取り組めば開発工期を短縮できる。鋼材の機能だけで勝負するのではなく、いろいろな切り口で総合力を生かし、お客様に貢献することで圧倒的なポジションをとっていく。建材用やエネルギー用の鋼材もそうであり、技術の広がり、いろいろな製品・鋼種、、グループ会社も協業してワンストップで相談できるパートナーとして存在感を高めて需要を捕捉していく」












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