2019年3月26日

2025年大阪・関西万博 ■日本国際博覧会協会 榮野正夫総務局長 開催に向けオールジャパン体制整う/関西の強み伸ばす機会/会場着工は22年度ごろに

一般社団法人2025年日本国際博覧会協会(会長=中西宏明・日本経済団体連合会会長)が今年2月に事務局を立ち上げ、大阪・関西万博(略称)の開催に向けて、官民が動き出した。70年大阪万博から半世紀以上を経たビッグ・イベントで、関西だけでなく、日本全体への経済の波及効果が期待される。また、会場となる夢洲はIR誘致の有力候補となっており、実現すれば、夢洲を中心にした大阪ベイエリア開発、さらには関西地区の大型の都市再開発やインフラ整備などが加速するとみられる。国内経済の起爆剤となる大阪・関西万博のコンセプト、その波及効果などについて、2025年日本国際博覧会協会の榮野正夫総務局長に聞いた。

――昨年11月に大阪・関西での万博開催が決定し、今年2月に2025年日本国際博覧協会の事務局が立ち上がり、開催に向けた動きを実感しているが、あらためて開催決定と協会設立の思いから。

「中西経団連会長に協会トップに就任していただき、まさにオールジャパンで万博の開催準備、運営していく体制が整った。これからは国、地元自治体、経済界が『これまでにない新しい万博を実現しよう』という共有の思いを持ち、一体となって作業を進めていく。協会は万博の全体構想、実際の会場建設、運営主体として機能を果たし、世界の問題解決やSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献していきたいと思っている」


――大阪・関西万博の基本コンセプトをうかがいたい。

「コンセプトは『未来社会の実験場"People‘s Living Lab"』。世界中から最先端技術など英知を結集し、新しい技術やサービスを創出、共創(Co―creation)していく。言い換えれば、未来社会のデザインを皆で一緒に創っていこうということ。その結果、内外からの投資拡大にもつながり、地域経済の活性化や地元中小企業の活性化にも寄与し、日本の魅力発信の場となることも期待している」

――万博のパビリオン・施設はどのようになるのか。

「『いのち輝く未来社会へのデザイン』というテーマを体感できる会場を目指したいと思っている。このため、各分野の方々からご意見を幅広くお聞きしながら、経済産業省、大阪府、大阪市、関西の自治体、経済界とも連携し、事業を進めていく。あくまでも、協会はグランドデザインを描き、それに沿った形で、万博に参加するそれぞれの国や地域、各企業が独自のアイデアを出して、災害にも配慮した建造物の建設を進めていく」

――現段階の開催計画の概要を。

「大阪市・夢洲内の155ヘクタールの敷地に、パビリオンワールド、ウォーターワールド、グリーンワールドの3つのワールドを造る予定。パビリオンワールドは各国・各企業の展示施設を集め、ウォーターワールドは水辺を利用して、水と共生した世界を造り、グリーンワールドは太陽光などを利用した施設、緑の広場、キャンプ場などを造る。会場の建設費は1250億円で、国、地元自治体、経済界がそれぞれ3分の1を負担する。各国に参加招請する際に、BIE(博覧会国際事務局)の承認が必要であるため、開催計画を記した登録申請書を、年内を目標にBIEに提出し、来年承認を得る予定。その後、より具体的な会場計画を検討していく。これ以外に、会場建設予定地の埋め立ては大阪市が行うが、すでに、契約手続きが進められている。万博会場への交通インフラ整備も大阪市などが行う。実際の会場建設の着工は22年度ごろとみており、25年春には完成させたい」

――現在の協会のメンバー数、さらに今後のピーク時の人数はどの程度となるのか。

「2月1日に、26人の職員(経済界6人、大阪府12人、大阪市8人)でスタートした。現在の体制は法人の発足に伴う必要最小限の人数であり、今後は開催計画の具体化など、業務を本格化させていくことに伴い、業務量も増大するので、必要な人員を確保していく。最終的には500人程度になると見込んでいる」

――万博への参加国、来場者はどの程度を見込んでいるのか。

「参加国は、150カ国のほか、国際機関からの参加も見込んでいる。来場者数は、約6400万人が来場した1970年の大阪万博には及ばないが、185日間の開催期間中、国内来場者2470万人、海外来場者350万人の合計2820万人を見込んでいる。これは2005年に開催した愛知万博の来場者実績もベースに算出したものだ」

――万博開催により、関西経済や国内経済に大きな波及効果が期待でる。

「今回の万博ではAI、ロボットなど画期的な技術を活用した未来社会の実現を提示するが、そうした取り組みが新たなる効果を産み出すと思っている。日本全国への波及効果は約2兆円を想定している。その内訳は建設関連で4000億円、運営費関連で5000億円、消費支出関連で1兆1000億円。これ以外に、技術革新など二次波及効果も期待できる」

――夢洲は万博会場だけでなく、IR誘致の候補にもなっている。今回の万博が大阪のベイエリア開発にもつながる。

「今回の万博は大阪・関西の強みをさらに伸ばす絶好の機会と認識している。万博開催により、夢洲の認知度が世界的に向上するとみており、夢洲まちづくり構想の具体化がスムーズに進むことで夢洲全体が発展することを期待している。1970年の大阪万博を超えるような、来場者がびっくりし、未来を感じさせるものにしたい。そのために、官民が一体となって頑張っていきたいと思っている」

(天野 充造)

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