2019年7月18日

Daigasグループ・大阪ガスリキッド 川本健一社長インタビュー 炭酸ガス供給強化 水素社会実現に貢献

Daigasグループの大阪ガスリキッド(本社=大阪市中央区、川本健一社長)は、大阪ガスのLNG(液化天然ガス)冷熱を利用した産業ガス・炭酸事業や粉体事業を中心に展開し、産業ガスではオンサイト水素製造装置に注力している。同社の水素への取り組みや事業の特色について、川本社長に聞いた。

■産業ガスを軸に

――主な事業内容について。

「大きく2つの分野の事業を行っており、1つは産業ガスに関する事業、もう1つは液化窒素を活用した粉体事業がある。産業ガスは卸販売業を中心とし、大阪ガス泉北製造所のLNG冷熱を利用したアルゴン、酸素、窒素などの各種液化ガスや液化炭酸ガス、ドライアイスを製造・販売している」

――産業ガス事業の中身や注力する取り組みは。

「大阪ガスリキッドの産業ガスの中でポイントとなるのは、水素と炭酸ガスと考えている。水素に関しては、オンサイト水素製造装置『HYSERVE』(以後、ハイサーブ)シリーズを製造・販売し、各種製造業のプロセスで利用されていたが、昨年度にはトヨタ自動車元町工場の燃料電池式フォークリフト(FCフォーク)向け水素充填所用としてハイサーブ30を2台設置するなど水素エネルギーの普及を見据えて取り組んでいる」

「炭酸ガス事業に関しては、需要は微増傾向であるのに対し、国内供給は慢性的に不足する状況にある。そうした中、新潟県長岡市で新たに、国際石油開発帝石(INPEX)さんから原料供給を受け、液化炭酸ガス・ドライアイスの製造工場を建設することとなった」

■オンサイト水素

――水素の取り組みと商品メニューについて。

「水素を供給する方法は、工場で製造して需要地へ輸送するという方法が1つ、もう1つは需要地で直接製造、供給するオンサイトがある。当社は、Daigasグループで長年培った高性能触媒技術をベースに、省スペースで簡単に、安定的に高純度水素を提供する、オンサイト水素製造装置『ハイサーブ』をシリーズ化している」

「1時間当たりの水素製造量ごとに30N立方メートル(ノルマル立方メートル)、100N立方メートル、300N立方メートルのタイプをラインアップしており、さらに小容量の5N立方メートルの『ハイサーブ―5』を新たに開発、今年4月から販売を開始した。このサイズの燃料(都市ガス・プロパンガス)改質型オンサイト水素製造装置はおそらく世界初となる」

――適用分野や各サイズの展開は。

「工業用水素は、金属分野では還元雰囲気炉などの熱処理や粉末冶金に使われ、ステンレス鋼板の光輝焼鈍、亜鉛めっき鋼板の還元処理、溶断に用いられる。そのほかにも半導体やガラス、光ファイバー、化学製品や油脂の製造など用途は幅広い」

「『ハイサーブ』シリーズはこれまで『30』から始まり、『100』『300』を開発・実用化してきた。実績とともにお客様の評価、信頼が高まってきたと実感している。海外からも評価、引き合いをいただいており、水素ステーションの設置も含め、今後も多くのニーズに応えていきたい」

「また、当社はオンサイト水素製造装置だけでなく、還元雰囲気炉で使用しきれなかった排ガスに含まれる水素を回収・再生する装置も製造しており、製造・回収再生の両面から水素利用の高効率化と、工場のコスト低減、環境改善に貢献している」

――ハイサーブ事業の特徴は。

「単に機器の販売を行うのではなく、機器リースや保守契約(突発トラブル対応修理含む)など、お客さまにご採用していただきやすい環境を提供してきた。当社と保守契約を締結していただいているお客さまのハイサーブには遠隔監視装置を全数装着し、オンラインで装置の運転状況をモニターしている。15年以上の運転データをもとに過去の不具合事例のデータ解析を行うことで、ある程度の故障に関しては不具合予兆を見つけることができており、装置信頼性の向上を図っている」

――「ハイサーブ―5」の開発経緯と狙いについて。

「シリーズ4機種目となる『5』は、小容量の水素供給ニーズを受けて開発したもの。小容量の水素を使用するお客様には、容器での供給に比べて、需要に応じて効率よく水素を製造、使用いただける。容器受け入れ作業も不要となり、省力化できる」

「業界初となる5N立方メートルタイプの燃料(都市ガス・プロパンガス)改質型オンサイト水素製造装置であり、工業用途はもちろん、分散型エネルギー源としても利用できる。燃料電池自動車(FCV)や燃料電池式フォークリフト(FCフォーク)の普及など、事業所や公共団体など今後、広く小容量水素の需要は増加していくと予想される」

■炭酸ガス新工場

――水素と並行して注力する炭酸ガス事業は。

「液化炭酸ガスやドライアイスは、主に石油精製施設やアンモニア製造工程における副生ガスを原料として製造される。しかし、日本国内では石油精製プラントが減少し、アンモニアも生産縮小となり原料供給源が減少しつつある。先進国には共通して供給不足の状況が見られる」

「当社は昨年9月に100%出資の事業運営会社、長岡炭酸を設立した。新たに液化炭酸ガス・ドライアイス製造設備(製造能力1日当たり150トン)を、INPEX長岡鉱場の隣接地に建設するもので、近く着工する。Daigasグループの産業ガス分野では、初めての関西域外での事業化となる」

――その他の特色ある事業は。

「粉体事業は、液化窒素の超低温(マイナス196℃)を利用して、樹脂や食品を低温・凍結粉砕するもの。お客様の実材料を用いたテスト粉砕を通じて、ニーズに合わせた粉体製品づくりに取り組んでいる」

■水素社会に貢献

――あらためて水素の可能性と今後の事業活動に向けて。

「水素は産業ガスとしてだけではなく、エネルギーとしての利用拡大が注目される。当社としては『ハイサーブ』シリーズを、より多くのユーザーへ提供し、水素社会の実現に貢献していきたい」

「装置のクオリティー向上やコスト低減、改良に向けた研究開発は継続していく。親会社である大阪ガスの技術協力や連携も大切。産業ガスのお客様への紹介に加えて、Daigasグループのネットワークを活かした営業活動も強化したい。水素エネルギーの普及は将来、大きく加速する可能性がある。当社は、水素や炭酸ガスの特長を持ったエネルギープロバイダーを目指し、社会に貢献していきたい」(戸次 達也)





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