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2024.12.4
2019年9月27日
海外鉄鋼事情【米国編】カリフォルニア・スチール・インダストリーズの経営戦略(上) マルセロ・ボテロ社長兼CEO 23―24年に生産220万トンへ 効率化投資テーマ
カリフォルニア・スチール・インダストリーズ(CSI、本社工場=カリフォルニア州フォンタナ市)はJFEスチール(設立当時は川崎製鉄)とブラジルのヴァーレ(同CVRD)の折半出資による合弁事業。一貫製鉄所だった旧カイザー・スチールのフォンタナ・スチールワークス閉鎖後の熱延以降の下工程を買収して1984年11月に操業を開始した。本年、操業開始35周年を迎えるが、リーマン・ショック後の2009年と油価や鋼材価格が急落した2015年を除いて黒字経営を継続している。約20年ぶりにCSIを訪問し、マルセロ・ボテロ社長兼CEOに足元の経営状況、今後の課題と展望を聞いた。
――足元の経営状況から。
「アメリカ西海岸の鋼板市場は、CSIとUPI(USS・POSCO・Industries)、スチールスケープの3社のみで、ロッキー山脈が中西部ミルの参入を阻止している。アジアなどからの輸入鋼材の脅威には晒されているが、比較的恵まれた経営環境にある。CSIは操業開始35周年を迎えるが、日本、ブラジル、メキシコなどから安定的にスラブを輸入してきた。私はCEOに16年8月に就任したが、当時はスラブを日本やメキシコからも安定調達でき、鋼材市況も上昇局面にあった。このため17年は過去3番目の好業績となった。ところが通商拡大法232条が18年3月に発動され、鉄鋼製品や半製品に25%の追加関税が課せられたことでスラブの安定調達が困難になった。18年は非関税枠内でのブラジルからの調達と米国内鋼材市況の上昇によって高収益を残すことができた。ただし18年央から19年にかけては一転して鋼材市況の下落が続いており、経営環境は悪化している」
――18年の収益額は。
「公表していないが、10―14年の平均と比較すると18年のEBITDAは約2・5倍だった」
――18年の生産実績を。
「生産・販売数量は前年比5%増の139万トン(以下、すべてショートトン)だった。品種構成はホットコイル35%、冷延7%、亜鉛メッキ47%、電縫溶接管11%」
――19年の計画は。
「西海岸の鉄鋼需要は建材分野など総じて堅調。28年のロス五輪に向けてインフラ関連需要が出てくると期待しているが、米中貿易摩擦の行方や株価の変動など不安材料が増え、企業が投資を手控え始めており、足元の需要は停滞気味。19年上期は鋼材市況の軟化が続き、ようやく7月に底入れしたが、下期は先行きの不透明感が強まっている。現時点で販売量を予測することは難しいが、前年並みの140万トン前後と想定している」
――改めて主要設備と年産能力を。
「熱延ミル、連続酸洗ライン、冷延ミル、溶融亜鉛めっきライン2基の体制で、中径電縫管ミルが2基ある。熱延ミルは旧カイザー・スチールから引き継いだ1950年代に稼働した設備だが段階的に近代化投資を行ってきている。第2亜鉛めっきライン、電縫管ミルはCSIとなってから稼働させた。公称年産能力は熱延ミルが300万トン、連続酸洗ラインは150万トン、5スタンドの冷延が150万トン、めっきラインはトータル80万トンで、焼鈍炉は36万トン、調質ミルが43万8000トン。電縫管はトータル64万トン」
――20年前、電縫管は16インチミルの1基体制だった。
「第2電縫管ミルは1億4400万ドルを投じて14年に導入した。世界最新鋭の技術を盛り込んだ24インチミルで、エネルギー分野などの厚肉化・高強度化ニーズに対応した。電縫管は油価の変動に左右されやすい側面があり、輸入材の流入もあって伸び悩んでいるが、投資効果を引き出していかなければならない」
――中期経営計画について。
「24インチミルをフル操業に引き上げつつ、23―24年に向けてトータルの生産・販売量を220万トンまで段階的に引き上げていきたいと考えている」
――設備投資計画は。
「赤字となった15年を除いて年間3000万ドル規模の設備投資を継続している。熱延ミルは年産能力の50%程度、冷延ミル、亜鉛めっきライン、電縫管ミルも余力を残している。大型投資は計画していないが、効率化投資は一つのテーマで、スラブヤードのセミオート化を検討している。ロサンゼルス港からのレール引き込み線の改善も検討している。調達を始めたUSスチールのスラブが通常より荷役に手間がかかるので、貨車からのマグネット式の荷役設備の導入も検討中」
――鋼材市況について、主力のホットコイルの動向を。
「指標となっているCRUのホットコイル価格はショートトン当たり600ドル前後だったが、232条発動前から上昇に転じ、2018年7月に920ドルのピークをつけた。流通在庫が積み上がり、購買意欲が後退する中、国内ミルの増産、休止設備の再稼働などもあって2018年秋に反落し、本年6月下旬に505ドルまで下落した。CSI、ニューコアなど主要ミルが6月末からトン40ドルの値上げを3回続けて実施したが、反発したのは一時期で、その後は弱含んでいる。USSがCRU指数連動の価格設定を見直し、20年1月から価格交渉方式に戻すと発表しており、他社の動きを注目している」
――スラブ調達の制約条件が増えており、安定供給責任を果たすにはCSIにとっても価格交渉方式が望ましいのではないか。
「製品のCRU価格連動販売は15―30%程度にとどまっている」(谷藤 真澄)
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――足元の経営状況から。
「アメリカ西海岸の鋼板市場は、CSIとUPI(USS・POSCO・Industries)、スチールスケープの3社のみで、ロッキー山脈が中西部ミルの参入を阻止している。アジアなどからの輸入鋼材の脅威には晒されているが、比較的恵まれた経営環境にある。CSIは操業開始35周年を迎えるが、日本、ブラジル、メキシコなどから安定的にスラブを輸入してきた。私はCEOに16年8月に就任したが、当時はスラブを日本やメキシコからも安定調達でき、鋼材市況も上昇局面にあった。このため17年は過去3番目の好業績となった。ところが通商拡大法232条が18年3月に発動され、鉄鋼製品や半製品に25%の追加関税が課せられたことでスラブの安定調達が困難になった。18年は非関税枠内でのブラジルからの調達と米国内鋼材市況の上昇によって高収益を残すことができた。ただし18年央から19年にかけては一転して鋼材市況の下落が続いており、経営環境は悪化している」
――18年の収益額は。
「公表していないが、10―14年の平均と比較すると18年のEBITDAは約2・5倍だった」
――18年の生産実績を。
「生産・販売数量は前年比5%増の139万トン(以下、すべてショートトン)だった。品種構成はホットコイル35%、冷延7%、亜鉛メッキ47%、電縫溶接管11%」
――19年の計画は。
「西海岸の鉄鋼需要は建材分野など総じて堅調。28年のロス五輪に向けてインフラ関連需要が出てくると期待しているが、米中貿易摩擦の行方や株価の変動など不安材料が増え、企業が投資を手控え始めており、足元の需要は停滞気味。19年上期は鋼材市況の軟化が続き、ようやく7月に底入れしたが、下期は先行きの不透明感が強まっている。現時点で販売量を予測することは難しいが、前年並みの140万トン前後と想定している」
――改めて主要設備と年産能力を。
「熱延ミル、連続酸洗ライン、冷延ミル、溶融亜鉛めっきライン2基の体制で、中径電縫管ミルが2基ある。熱延ミルは旧カイザー・スチールから引き継いだ1950年代に稼働した設備だが段階的に近代化投資を行ってきている。第2亜鉛めっきライン、電縫管ミルはCSIとなってから稼働させた。公称年産能力は熱延ミルが300万トン、連続酸洗ラインは150万トン、5スタンドの冷延が150万トン、めっきラインはトータル80万トンで、焼鈍炉は36万トン、調質ミルが43万8000トン。電縫管はトータル64万トン」
――20年前、電縫管は16インチミルの1基体制だった。
「第2電縫管ミルは1億4400万ドルを投じて14年に導入した。世界最新鋭の技術を盛り込んだ24インチミルで、エネルギー分野などの厚肉化・高強度化ニーズに対応した。電縫管は油価の変動に左右されやすい側面があり、輸入材の流入もあって伸び悩んでいるが、投資効果を引き出していかなければならない」
――中期経営計画について。
「24インチミルをフル操業に引き上げつつ、23―24年に向けてトータルの生産・販売量を220万トンまで段階的に引き上げていきたいと考えている」
――設備投資計画は。
「赤字となった15年を除いて年間3000万ドル規模の設備投資を継続している。熱延ミルは年産能力の50%程度、冷延ミル、亜鉛めっきライン、電縫管ミルも余力を残している。大型投資は計画していないが、効率化投資は一つのテーマで、スラブヤードのセミオート化を検討している。ロサンゼルス港からのレール引き込み線の改善も検討している。調達を始めたUSスチールのスラブが通常より荷役に手間がかかるので、貨車からのマグネット式の荷役設備の導入も検討中」
――鋼材市況について、主力のホットコイルの動向を。
「指標となっているCRUのホットコイル価格はショートトン当たり600ドル前後だったが、232条発動前から上昇に転じ、2018年7月に920ドルのピークをつけた。流通在庫が積み上がり、購買意欲が後退する中、国内ミルの増産、休止設備の再稼働などもあって2018年秋に反落し、本年6月下旬に505ドルまで下落した。CSI、ニューコアなど主要ミルが6月末からトン40ドルの値上げを3回続けて実施したが、反発したのは一時期で、その後は弱含んでいる。USSがCRU指数連動の価格設定を見直し、20年1月から価格交渉方式に戻すと発表しており、他社の動きを注目している」
――スラブ調達の制約条件が増えており、安定供給責任を果たすにはCSIにとっても価格交渉方式が望ましいのではないか。
「製品のCRU価格連動販売は15―30%程度にとどまっている」(谷藤 真澄)
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