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2024.12.4
2020年4月9日
コロナの渦中で―流通の現状と対策― 関東地区【下】収益圧迫じわり 経営ダメージ不安視
■条鋼 中長期の需要影響懸念 資金繰り悪化に備えも
形鋼類や異形棒鋼など条鋼市場の荷動きは低調だが「元々、今年前半は建築分野の仕事量が少なく、ある程度の落ち込みは織り込んでいた。一方、土木向けの引き合いは底堅い。足元の段階で新型コロナの影響は出ていない」(形鋼流通幹部)との声が多い。「建設現場、ファブリケーターの工場などが止まっている様子はない」(商社幹部)とし、現段階で流通各社の事業への影響も限定的となっている。
新型コロナの影響をめぐっては中長期の建築需要への影響を懸念する見方が多い。企業の投資意欲の後退を受け、関係者はホテルや工場・倉庫、店舗などの動向を懸念。東京五輪延期によって五輪開催後に予定されていた工事計画への影響も注視され、一部案件で前倒しの期待がある中で「今夏までの仕事は少ないまま。需要の端境期が長引くだけ」(商社筋)と意見が分かれている。感染防止策でもある在宅勤務やテレワークが浸透し「オフィスそのものの必要性が乏しくなり、ビルなどの建設規模が縮小、見直しとなる可能性も想定している」(別の商社筋)という。
感染防止に向け、ある大手流通は輪番による交代勤務、時差通勤などを実施。対面による商談は減っているものの、多くの流通が電話営業やマスク着用の義務化などの防止策を講じつつ、通常の入出庫、操業体制をおおむね保っている。ただ、緊急事態宣言の発令を受け、一部流通では入出庫時に運送ドライバーへのマスク着用徹底などを取引先各社に通達し始めているようだ。
既に一部流通の経営者はコロナ禍による中長期の景気低迷、信用不安拡大、資金繰り悪化の可能性を見据える。国や自治体の支援制度なども注視、活用しながら「特に従業員の雇用は守りたい。既に金融機関には融資の相談も始めている」と語る。足元の財務状況は良好でも最悪の事態を想定し、将来に向けた備えを始めている。
■特殊鋼ステンレス 荷動き停滞さらに悪化 通常の営業活動に支障
特殊鋼・ステンレス流通では新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今後の荷動き停滞や引き合いの落ち込み、資金繰りの悪化など不安の声が高まっている。構造用鋼や工具鋼では産業機械や建設機械向け需要の落ち込みが長引き、ステンレスでは薄板を中心に昨年末以降から出荷量への陰りが出始めていた中で、コロナ禍が追い打ちをかけるように流通各社の経営を揺さぶる。先行きの見通しがつかない中、流通筋からは「まだ序の口にすぎない」として事態の長期化を懸念する声も出ている。
ニッケル系ステンレス薄板、機械構造用炭素鋼の中心値はもちあいで推移するものの、一部では安値も散見される状況で「安易な値下げは収益を押し下げる」(大手流通筋)として多くの流通では価格引き下げに慎重な姿勢を示す。このため市況は「なんとか持ちこたえている」(大手流通筋)状況だ。店売りではステンレス・特殊鋼ともに昨年より荷動きが芳しくない状況が続いていたが、ここにきて「注文の電話が鳴らない」(大手流通筋)など状況は一段と悪化している。
商談の延期や出張の見合わせなどで営業活動の自粛も余儀なくされ「満足な営業活動ができない」(大手流通筋)など通常の業務への支障が出てきた。
感染拡大を防ぐための取り組みも進む。一部流通では、関東各地の拠点が持つ機能の一時的な集約や分散、輪番制での在宅勤務などの対応が始まった。加工設備の休止は難しいため、緊急事態宣言発令以降も通常通りの人員、加工規模で対応する。ただ、社内で感染者が確認された場合は「一時休止を考える必要がある」(大手流通筋)として状況に応じた対応をとっていく方針。
■厚板 需要回復見通せず 相場維持難しく
厚板流通・加工業でも新型コロナウイルスの打撃を受けている。建設分野は昨年来、長く端境期にあり、回復は見通せない。さらに米中貿易摩擦で建・産機需要が減退。コロナ禍で、さらに国内外とも減少を余儀なくされている。一方、各事業者によるコロナ対策は、その事業規模によって異なる。メーカー系や商社系の事業者では親会社の対応に合わせて、時差通勤や在宅勤務を実施している。しかし、事業者の中には「生きていくため、操業は止められない」といった声もあり、需要減の中でも稼働を続ける。こうした事業所では手洗い、うがいやアルコール消毒を徹底する動きも見られる。
東京地区の厚板市況は弱もちあい。定尺(19ミリ、5×10)が無規格品でトン当たり8万3000―8万5000円、切板が10万円どころ。需要低迷に加え、コロナショックと4月契約分からの東京製鉄のトン当たり7000円の値下げが、流通段階の相場維持を難しくしている。4月に入ってもコロナ感染の収束が見えず、基調が弱まる市場環境に変化は見られない。
製造業分野は新型コロナで建・産機など工場操業の停止を招いている情勢。工作機械などもサプライチェーンに支障を来す。ただ、この一方で、中国では産機分野などで生産が持ち直してきており、関連する厚板輸出を支えている。
建設分野は端境期から抜け出せておらず、店売りでの引き合いも伸展しないままだ。当該分野の需要回復は東京五輪延期で、当初は本夏に予定されていた五輪開催後から来年度初めとみられていたが、延期決定で、これらの計画が前倒しされるのではといった見方と二分されている。
コロナ対策について対応はマチマチ。営業などではテレワークや時差通勤などを行い、感染防止を図る動きもある一方、人的余裕のない事業者では手洗いなどの自己防衛を強化する動きも見られる。
形鋼類や異形棒鋼など条鋼市場の荷動きは低調だが「元々、今年前半は建築分野の仕事量が少なく、ある程度の落ち込みは織り込んでいた。一方、土木向けの引き合いは底堅い。足元の段階で新型コロナの影響は出ていない」(形鋼流通幹部)との声が多い。「建設現場、ファブリケーターの工場などが止まっている様子はない」(商社幹部)とし、現段階で流通各社の事業への影響も限定的となっている。
新型コロナの影響をめぐっては中長期の建築需要への影響を懸念する見方が多い。企業の投資意欲の後退を受け、関係者はホテルや工場・倉庫、店舗などの動向を懸念。東京五輪延期によって五輪開催後に予定されていた工事計画への影響も注視され、一部案件で前倒しの期待がある中で「今夏までの仕事は少ないまま。需要の端境期が長引くだけ」(商社筋)と意見が分かれている。感染防止策でもある在宅勤務やテレワークが浸透し「オフィスそのものの必要性が乏しくなり、ビルなどの建設規模が縮小、見直しとなる可能性も想定している」(別の商社筋)という。
感染防止に向け、ある大手流通は輪番による交代勤務、時差通勤などを実施。対面による商談は減っているものの、多くの流通が電話営業やマスク着用の義務化などの防止策を講じつつ、通常の入出庫、操業体制をおおむね保っている。ただ、緊急事態宣言の発令を受け、一部流通では入出庫時に運送ドライバーへのマスク着用徹底などを取引先各社に通達し始めているようだ。
既に一部流通の経営者はコロナ禍による中長期の景気低迷、信用不安拡大、資金繰り悪化の可能性を見据える。国や自治体の支援制度なども注視、活用しながら「特に従業員の雇用は守りたい。既に金融機関には融資の相談も始めている」と語る。足元の財務状況は良好でも最悪の事態を想定し、将来に向けた備えを始めている。
■特殊鋼ステンレス 荷動き停滞さらに悪化 通常の営業活動に支障
特殊鋼・ステンレス流通では新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今後の荷動き停滞や引き合いの落ち込み、資金繰りの悪化など不安の声が高まっている。構造用鋼や工具鋼では産業機械や建設機械向け需要の落ち込みが長引き、ステンレスでは薄板を中心に昨年末以降から出荷量への陰りが出始めていた中で、コロナ禍が追い打ちをかけるように流通各社の経営を揺さぶる。先行きの見通しがつかない中、流通筋からは「まだ序の口にすぎない」として事態の長期化を懸念する声も出ている。
ニッケル系ステンレス薄板、機械構造用炭素鋼の中心値はもちあいで推移するものの、一部では安値も散見される状況で「安易な値下げは収益を押し下げる」(大手流通筋)として多くの流通では価格引き下げに慎重な姿勢を示す。このため市況は「なんとか持ちこたえている」(大手流通筋)状況だ。店売りではステンレス・特殊鋼ともに昨年より荷動きが芳しくない状況が続いていたが、ここにきて「注文の電話が鳴らない」(大手流通筋)など状況は一段と悪化している。
商談の延期や出張の見合わせなどで営業活動の自粛も余儀なくされ「満足な営業活動ができない」(大手流通筋)など通常の業務への支障が出てきた。
感染拡大を防ぐための取り組みも進む。一部流通では、関東各地の拠点が持つ機能の一時的な集約や分散、輪番制での在宅勤務などの対応が始まった。加工設備の休止は難しいため、緊急事態宣言発令以降も通常通りの人員、加工規模で対応する。ただ、社内で感染者が確認された場合は「一時休止を考える必要がある」(大手流通筋)として状況に応じた対応をとっていく方針。
■厚板 需要回復見通せず 相場維持難しく
厚板流通・加工業でも新型コロナウイルスの打撃を受けている。建設分野は昨年来、長く端境期にあり、回復は見通せない。さらに米中貿易摩擦で建・産機需要が減退。コロナ禍で、さらに国内外とも減少を余儀なくされている。一方、各事業者によるコロナ対策は、その事業規模によって異なる。メーカー系や商社系の事業者では親会社の対応に合わせて、時差通勤や在宅勤務を実施している。しかし、事業者の中には「生きていくため、操業は止められない」といった声もあり、需要減の中でも稼働を続ける。こうした事業所では手洗い、うがいやアルコール消毒を徹底する動きも見られる。
東京地区の厚板市況は弱もちあい。定尺(19ミリ、5×10)が無規格品でトン当たり8万3000―8万5000円、切板が10万円どころ。需要低迷に加え、コロナショックと4月契約分からの東京製鉄のトン当たり7000円の値下げが、流通段階の相場維持を難しくしている。4月に入ってもコロナ感染の収束が見えず、基調が弱まる市場環境に変化は見られない。
製造業分野は新型コロナで建・産機など工場操業の停止を招いている情勢。工作機械などもサプライチェーンに支障を来す。ただ、この一方で、中国では産機分野などで生産が持ち直してきており、関連する厚板輸出を支えている。
建設分野は端境期から抜け出せておらず、店売りでの引き合いも伸展しないままだ。当該分野の需要回復は東京五輪延期で、当初は本夏に予定されていた五輪開催後から来年度初めとみられていたが、延期決定で、これらの計画が前倒しされるのではといった見方と二分されている。
コロナ対策について対応はマチマチ。営業などではテレワークや時差通勤などを行い、感染防止を図る動きもある一方、人的余裕のない事業者では手洗いなどの自己防衛を強化する動きも見られる。
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