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2024.12.4
2020年4月28日
コロナの渦中で―流通の現状と対策― 西日本(中国・四国・九州)需要後退、先行き不安増す
■九州 感染防止の取組み着々 ダイハツ九州 回復軌道先導か
「まさか当社に感染者が出るとは思わなかった」。福岡県の鉄鋼流通企業のある経営者は保健所から電話を受け、すぐに該当者の行動範囲を消毒した。幸いにも社内に濃厚接触者はおらず、業務を再開できたという。該当者も軽症で、2週間の待機を経て業務に復帰する予定。経営者は「どこか他人事のように感じていた」と自らを省みる。
福岡県は7日に緊急事態宣言の発令を受け、対象地域となった。宣言を受け、流通加工業者に変化が現れた。
それまで流通加工業者は事業拠点が郊外にあり多くがマイカー通勤のため、対策はせいぜいマスクの着用とうがいや手洗いの励行、過度な接触を避ける程度だった。
野島鉄鋼店は10日から営業部門や総務部門の8割を在宅勤務に切り替えた。ローテーションで2割は出勤している。同社は2016年の熊本地震で被災し、復興する過程でBCP対策を強化。リモートワークを行えるシステムを構築していたことから、同業他社の中でもいち早く反応した。
週明け13日から交代制で出勤と在宅勤務に切り替える流通加工業者が散見されはじめた。営業や事務職が中心で在宅と出社を班分けし交代で勤務する。このため博多駅は閑散としている。
一方で倉庫・輸送担当は取引先ユーザーの工場や現場が動いているため、通常出勤。それでも「建屋内で人ができる限り接触しないよう配慮している」(流通筋)という。
鋼材特約店の加工は一時よりも稼働は落ちているが、「以前の受注分の加工などが入っている。取引先が開けている中、仕事を止めるわけにはいかない」(別の流通筋)と操業を継続。一方、大型連休を控える中、加工を前倒しして休業期間の延長を検討する企業も見られる。
足元は納期対応などが中心で新規商談は連休明けに本格化するとみられるが、ゼネコンの建設工事中止の期間は見通せない。地区建築需要をけん引してきたホテル関連の需要減退や再開発案件の一部凍結など先行き不安は増している。
自動車関係は中国からの部品供給が2月から滞り、ラインの停止に追い込まれている。コイルセンター業界は、加工量が通常より10―30%は落ち込んでいる。「先が見えず、どこまで落ち込むか分からない」(コイルセンター幹部)。そのような中、ダイハツ九州が近く、新型車の生産を始める見通しだ。コロナ収束後、需要の回復軌道を先導するのは、ダイハツ九州かもしれない。
■中国・四国 自動車関連産業に打撃 鋼材流通、貸し倒れ懸念
中国・四国地区でも新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響が広がっている。
製造業の中では自動車関連産業が特に強い打撃を受けている。マツダは広島、山口両県に置く国内2工場の生産調整を5月29日まで延長。三菱自動車も4月に岡山県の工場の組み立てラインを休止した。部品メーカーも生産を休止しており、鋼材を供給するコイルセンターは加工量の落ち込みから一部ラインの停止を余儀なくされている。
「社員の不安を考えると一時帰休はできるだけ避けたい。今は工場清掃や社員研修に時間を充てているが、長期化した場合には踏み切らざるを得ない」と、あるコイルセンターのトップは苦境を語る。
瀬戸内の主要産業である造船業では足元、大きな影響は出ていないようだ。新造船の建造や引き渡しは滞りなく進んでいる。ただ大手を中心に造船所の手持ち工事量の減少が続き、国内造船全体ではすでに2年分を割り込み、1年半強の水準。流通関係者は「ここまで造船各社の新造船受注は思うように進んでいなかった。新型コロナの影響で商談が停滞すれば、ますます厳しくなる」と危機感を隠さない。
地場の鋼材流通は、営業担当者を在宅勤務に切り替えるなど対応策を採っているものの、情報インフラが整わず管理部門のテレワーク化や倉庫・工場の稼働停止も難しい状況。交代勤務など手探りで業務を行っている。
新型コロナの感染リスクと同程度、あるいはそれ以上に懸念するのが貸し倒れだ。ある特約店の幹部は「新型コロナの影響で取引先の状況がつかみづらく、与信管理の問題は頭が痛い」と語る。
大手企業の営業拠点は全面的な在宅勤務体制へと移行しているが、慣れない勤務形態のため課題も多いようだ。「事務所内で一声かければ済む内容でもメールなどで連絡しなくてはならない。慣れもあるのだろうが、決して効率の良いものではない。落ち着いた段階で改善策を検討する必要がある」との声も聞かれる。
金属リサイクルを手掛ける企業は社会の静脈インフラとしての機能を担うことから、休業に踏み切るのが難しく、多くが細心の注意を払いながら業務を継続している。「商売上の問題もそうだが、社会的な責任もある」(ヤード関係者)ため、解体現場からの引き取りやヤードへの持ち込みは拒めないという。行政関連の廃棄物を受け入れる企業は、「万が一、社員が新型コロナにかかり、事業休止すると市民生活に影響が出かねない。取引先にも対策の徹底をお願いしている」と話す。
新型コロナ終息の見通しは立たず、長期戦の様相を呈しているが、一方で製造業の国内回帰、テレワークなど柔軟な勤務体制の広がり、東京一極集中の緩和、大規模な公共投資など、“コロナ後”に言及する声も出始めている。
「まさか当社に感染者が出るとは思わなかった」。福岡県の鉄鋼流通企業のある経営者は保健所から電話を受け、すぐに該当者の行動範囲を消毒した。幸いにも社内に濃厚接触者はおらず、業務を再開できたという。該当者も軽症で、2週間の待機を経て業務に復帰する予定。経営者は「どこか他人事のように感じていた」と自らを省みる。
福岡県は7日に緊急事態宣言の発令を受け、対象地域となった。宣言を受け、流通加工業者に変化が現れた。
それまで流通加工業者は事業拠点が郊外にあり多くがマイカー通勤のため、対策はせいぜいマスクの着用とうがいや手洗いの励行、過度な接触を避ける程度だった。
野島鉄鋼店は10日から営業部門や総務部門の8割を在宅勤務に切り替えた。ローテーションで2割は出勤している。同社は2016年の熊本地震で被災し、復興する過程でBCP対策を強化。リモートワークを行えるシステムを構築していたことから、同業他社の中でもいち早く反応した。
週明け13日から交代制で出勤と在宅勤務に切り替える流通加工業者が散見されはじめた。営業や事務職が中心で在宅と出社を班分けし交代で勤務する。このため博多駅は閑散としている。
一方で倉庫・輸送担当は取引先ユーザーの工場や現場が動いているため、通常出勤。それでも「建屋内で人ができる限り接触しないよう配慮している」(流通筋)という。
鋼材特約店の加工は一時よりも稼働は落ちているが、「以前の受注分の加工などが入っている。取引先が開けている中、仕事を止めるわけにはいかない」(別の流通筋)と操業を継続。一方、大型連休を控える中、加工を前倒しして休業期間の延長を検討する企業も見られる。
足元は納期対応などが中心で新規商談は連休明けに本格化するとみられるが、ゼネコンの建設工事中止の期間は見通せない。地区建築需要をけん引してきたホテル関連の需要減退や再開発案件の一部凍結など先行き不安は増している。
自動車関係は中国からの部品供給が2月から滞り、ラインの停止に追い込まれている。コイルセンター業界は、加工量が通常より10―30%は落ち込んでいる。「先が見えず、どこまで落ち込むか分からない」(コイルセンター幹部)。そのような中、ダイハツ九州が近く、新型車の生産を始める見通しだ。コロナ収束後、需要の回復軌道を先導するのは、ダイハツ九州かもしれない。
■中国・四国 自動車関連産業に打撃 鋼材流通、貸し倒れ懸念
中国・四国地区でも新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響が広がっている。
製造業の中では自動車関連産業が特に強い打撃を受けている。マツダは広島、山口両県に置く国内2工場の生産調整を5月29日まで延長。三菱自動車も4月に岡山県の工場の組み立てラインを休止した。部品メーカーも生産を休止しており、鋼材を供給するコイルセンターは加工量の落ち込みから一部ラインの停止を余儀なくされている。
「社員の不安を考えると一時帰休はできるだけ避けたい。今は工場清掃や社員研修に時間を充てているが、長期化した場合には踏み切らざるを得ない」と、あるコイルセンターのトップは苦境を語る。
瀬戸内の主要産業である造船業では足元、大きな影響は出ていないようだ。新造船の建造や引き渡しは滞りなく進んでいる。ただ大手を中心に造船所の手持ち工事量の減少が続き、国内造船全体ではすでに2年分を割り込み、1年半強の水準。流通関係者は「ここまで造船各社の新造船受注は思うように進んでいなかった。新型コロナの影響で商談が停滞すれば、ますます厳しくなる」と危機感を隠さない。
地場の鋼材流通は、営業担当者を在宅勤務に切り替えるなど対応策を採っているものの、情報インフラが整わず管理部門のテレワーク化や倉庫・工場の稼働停止も難しい状況。交代勤務など手探りで業務を行っている。
新型コロナの感染リスクと同程度、あるいはそれ以上に懸念するのが貸し倒れだ。ある特約店の幹部は「新型コロナの影響で取引先の状況がつかみづらく、与信管理の問題は頭が痛い」と語る。
大手企業の営業拠点は全面的な在宅勤務体制へと移行しているが、慣れない勤務形態のため課題も多いようだ。「事務所内で一声かければ済む内容でもメールなどで連絡しなくてはならない。慣れもあるのだろうが、決して効率の良いものではない。落ち着いた段階で改善策を検討する必要がある」との声も聞かれる。
金属リサイクルを手掛ける企業は社会の静脈インフラとしての機能を担うことから、休業に踏み切るのが難しく、多くが細心の注意を払いながら業務を継続している。「商売上の問題もそうだが、社会的な責任もある」(ヤード関係者)ため、解体現場からの引き取りやヤードへの持ち込みは拒めないという。行政関連の廃棄物を受け入れる企業は、「万が一、社員が新型コロナにかかり、事業休止すると市民生活に影響が出かねない。取引先にも対策の徹底をお願いしている」と話す。
新型コロナ終息の見通しは立たず、長期戦の様相を呈しているが、一方で製造業の国内回帰、テレワークなど柔軟な勤務体制の広がり、東京一極集中の緩和、大規模な公共投資など、“コロナ後”に言及する声も出始めている。
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