2021年6月29日

新社長に聞く 朝日工業 中村紀之氏 合鉄グループの価値向上

合同製鉄グループの大手電炉メーカー、朝日工業(本社=東京都豊島区)は、6月28日付で中村紀之・専務取締役が社長に昇格した。前身である西武化学工業時代から数えて9代目の社長になる。新社長の抱負、方針などを聞いた。

――新社長就任の抱負から。

「当社は株式公開買い付けで19年3月に合同製鉄グループに入り、独立系電炉メーカーから再スタートを切った。元々は鉄鋼建設資材と農業資材両事業を展開してきたが、将来の発展を見据えて独自性を強めるため、20年4月に農業資材事業を分社し、現在は鉄鋼建設資材事業に特化している。前社長の村上政徳・取締役相談役とともに進めてきた新たな方向性の第1段階が完了し、後事を引き受けた。生え抜きの社長は5代目の茅根煕昭氏以来で、ほぼ四半世紀ぶり。歴史を含めて隅々まで理解するプロパートップとして将来を考え、強固な企業基盤の構築への取り組みを継承しながら、足腰の強い会社にするとともに、合鉄グループの一員として存在感のある会社にしていきたい。『企業は人なり』で、人材育成にも力を注ぐ」

――中・長期的なマーケット展望を。

「当社は鉄筋棒鋼と構造用鋼を扱い、鉄筋棒鋼は高強度、太径、ねじ節鉄筋『ネジエーコン』の得意分野に特化。構造用鋼は普通鋼に加えてSC材(機械構造用炭素鋼鋼材)とSCM材(クロムモリブデン鋼鋼材)も手掛ける。鉄筋棒鋼は鉄スクラップ価格が高止まりしている状況を踏まえ、事業継続が可能な利益水準の販売価格を目指していく。今後のマーケット展望として、関東地域は再開発やインフラ整備案件を中心に展開されていくと考えるが、当社はもとより、合鉄グループが持つ幅広い製品ラインナップを活かし供給をしていきたいと考える。構造用鋼の特殊鋼棒鋼は14年3月の生産休止前の扱い数量に近づけるよう取り組む。将来的には鉄筋棒鋼、特殊鋼棒鋼ともに市場が大きく拡大するとは考えにくく、いずれ競争が激しくなる。マーケット動向、多品種・小ロットの品種構成、埼玉工場の生産能力などを考慮しながら、合鉄グループで存在意義を示し、将来にわたって安定的に事業運営が可能になる最適なポートフォリオへの転換を推進する」

――鉄筋棒鋼の方針と、合鉄との鉄筋棒鋼共同販売会社である関東デーバースチールの展開については。

「KDS(関東デーバースチール)の発足によって、関東ベース市場で核になり、流れを作ることができる販売会社が誕生し、大手2グループに収斂された。これが早いタイミングで認知され始めたことには価値があり、状況変化に敏感に反応・対応し、マーケットの安定化に繋がっている。KDSは合鉄と朝日の鉄筋棒鋼、合鉄の機械式鉄筋継手(『EGジョイント』、『EG定着板』)、朝日の『ネジエーコン』をラインナップ。『ネジエーコン』は各建設関連認定を追加取得して適用範囲を広げ、業界から注目されるよう、存在感を一層高め、受注拡大を着実に進めていく」

――特殊鋼棒鋼は。

「埼玉工場で手掛けるサイズは直径50㍉以下で、細径市場を確実に押さえる。営業を強化した結果、生産休止前に供給していた需要家の7割程度と取引を再開していただいており、安定的にリピート受注できるようになった。品質及び価格などで当社製品を採用するメリットを理解していただき、一歩一歩進んでいる。新型コロナウイルス感染症影響が続く中でSC材、SCM材は主力の自動車を中心に産業機械など需要が復調し、需給がひっ迫している。当社も供給面でサポートできるよう力を尽くす」

――埼玉工場の方針は。

「埼玉工場は工場全体の最適化とともに、現行シフト体制下で製鋼・圧延・精整の各工程単位で業務改善に取り組み、作業生産性を追求し、歩留まりを上げる。電力やガス、電極の原単位を下げてコストダウンを図る。また脱炭素社会実現に向けた動きが加速しており、引き続きCO2排出削減などに取り組む。設備投資計画は切断精度向上と生産性アップをめざし、圧延工場コールドシャーの更新を進めており、22年夏の完工を計画している。その他投資は老朽化対策が中心になる」

――合鉄とのシナジーをどう発揮するか。

「合鉄グループの企業価値向上、業績アップに繋げる。KDSの戦略製品は『ネジエーコン』で、これをどのように生かすかが販売数量増のポイント。特殊鋼棒鋼は両社の製造、営業両部門で情報交換を密にしており、サイズでの生産棲み分けなど、ウイン・ウインの関係になれるよう早期シナジーを発揮したい」(濱坂浩司)

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▽中村紀之(なかむら・のりゆき)氏=81年法政大経営学部卒、西武化学工業(現・朝日工業)に入社。01年取締役企画室長兼経理財務部長、02年取締役管理本部経理財務部長、06年常務取締役管理本部長、15年常務取締役鉄鋼建設資材本部長、17年専務取締役鉄鋼建設資材本部長、20年専務取締役事業本部長。19年10月からは関東デーバースチール取締役副社長も務めた。

管理畑を32年歩んだ。00年に東洋製鋼から鉄筋棒鋼の営業権を譲り受けた際の裏方業務を担い、人員受け入れも含めて成し遂げたことが印象深い。

時代小説が好きで、2日に1冊のペース。休日はドライブでリフレッシュ。座右の銘は、「日々前進」で、自分自身を日々磨き、一歩でも前に出ることを心掛ける。57年9月16日生まれ、東京都出身。

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