2021年9月30日

安全衛生大会・東京開催に向けて 竹越徹・中災防理事長に聞く はさまれ 巻き込まれ 防止対策を提案 APOSHO35 アジアの最新情報も

中央労働災害防止協会は10月27―29日に全国産業安全衛生大会2021in東京(東京国際フォーラム)を開催する。テーマは「働く人の安全・健康・幸せを 未来に伝える人づくり」。現地とオンラインの開催で幅広い参加を募り、安全衛生の重要性を訴える。同時にアジア太平洋地域の主要各国に一部の欧米諸国を加えた21カ国・地域の加盟39団体が参画するアジア太平洋安全衛生大会(APOSHO35)を開く。竹越徹理事長(前・日本製鉄常任顧問)に両大会への抱負を聞いた。

――東京大会のテーマ・内容は。

「初日の特別講演で落語家の三遊亭円楽氏が「笑顔の日本語 ユーモアコミュニケーション」と題して人と人をつなぐ言葉とユーモアの大切さをテーマに登壇する。2、3日目に現地で渋澤健氏(シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役CEO)、オンデマンド配信限定で中川恵一氏(東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)、浜田敬子氏(ジャーナリスト、元AERA編集長)が講演し、他にも多数の企業による研究発表や対談、パネルディスカッションなどさまざまなプログラムを用意している」

「鉄鋼・非鉄金属の関係の方にお勧めしたいのが、2日目の製造業安全対策官民協議会の特別セッション。向殿政男・明治大学名誉教授が指揮を執るチームが『リスクアセスメント(危険源の特定)に関する調査結果』、田村昌三・東京大学名誉教授が指揮を執るチームが『産業安全の経済効果および体感安全教育の体系化と共有化』について調査の進捗を報告する。官民協議会会長と向殿先生、田村先生、厚生労働省、経済産業省、そして中災防がパネリストになり、『コロナ禍で経営者が考える安全衛生の人づくり』をテーマにパネルディスカッションを行う。コロナ禍の中で安全衛生活動をどのように行っていけばよいか悩んでいる経営者、安全衛生担当者も多いと思うのでヒントを得ていただきたい」

――過去の大会と違っている点は。

「現地開催に加えてオンライン開催も併用した。『全国大会には参加したいけど新型コロナが心配』『コロナの状況が見通せないため、参加をためらっている』『会社方針で出張は難しい』などの思いから参加に二の足を踏んでいる方が多くいらっしゃるのではないか。オンラインでの参加であればコロナ感染を心配することなく、安全衛生に関する講演・パネルディスカッションや創意工夫を凝らした企業での取組事例など200件以上のプログラムを、ライブ配信とオンデマンド配信の両方で視聴できる。オンデマンド配信は現地開催終了後の1カ月間(11月30日まで)は視聴可能なので時間を選ばず自由に何度でも視聴できる。今回の参加申し込みはオンラインのみでこれまでの申し込みと違い、戸惑っている方もいると見受けられるが、中災防Webサイト内にある全国大会の特設サイトに詳しく申し込み方法が記載されているのでぜひ、ためらわずに申し込んでいただきたい」

――昨今の労災の発生状況と関連して今東京大会で訴えるポイントは。

「製造業の労災、とりわけ鉄鋼・非鉄金属業界における労働災害の発生状況を事故の型別で見ると、鉄鋼・非鉄金属ともに『はさまれ・巻き込まれ』が約3割を占め、早急に対応すべき課題だ。製造業安全対策官民協議会では、体感安全教育の『はさまれ・巻き込まれ』に関するとりまとめを行い、全国大会中の製造業安全対策官民協議会特別セッションで発表を行う予定。各企業の『はさまれ・巻き込まれ』災害防止対策の参考にしていただきたい」

――APOSHO35のテーマ・内容は。

「アジア太平洋地域の労働安全衛生分野の活動を促進する非営利団体で構成された国際組織のアジア太平洋労働安全衛生機構(APOSHO)の年次総会が32年ぶりに日本で開催され、中災防が事務局を担当する。具体的には全国大会と同時期の10月27、28日に『アジア太平洋安全衛生大会(APOSHO35)』として開催する。テーマは『全ての人のための持続可能な開発に向けた安全衛生を考える』。アトラクション「日本の大衆芸能 日英によるチンドンパフォーマンス」を皮切りに厚生労働省労働基準局による基調講演、東瀬朗・新潟大学准教授や川上剛・ILO労働監督上級専門家による特別講演、リチャード・ハルバーシュタット・石巻市復興まちづくり情報交流館中央館館長による東日本大震災体験の語り部、その他多くの技術発表を予定している。APOSHO会員を除く一般参加者はオンラインもしくは全国大会の会場内のAPOSHO35サテライト会場でライブ中継が無料で視聴できる。オンラインは事前登録が必要だが、大会期間中から1カ月程度のオンマンド配信も利用できる。アジアなど各国の安全衛生に関する最新情報を得ることができる」

――東京大会では第三次産業にも焦点を当てる。

「第三次産業の労働災害発生状況に注視していく必要がある。第三次産業の中で小売業、社会福祉施設、飲食店の労働災害の状況を事故の型別による死傷者数で見ると、いずれの業種も『転倒』が全数の約3割となっており、転倒災害防止は喫緊の課題となっている。小売業、社会福祉施設では死傷者数のうち60歳以上の占める割合が約3割となっており、労働者の高年齢化が問題となっている。第三次産業の業務をもう少し広い目で見ると、インターネット上のプラットホームを通じて単発の仕事を請け負う労働者である『ギグワーカー』の問題がある。全国大会ではギグワーカーたちを対象としたアプリを運営しているタイミーの小川嶺社長、石橋孝宜執行役員と厚生労働省労働基準局安全衛生部の安達栄安全課長、中災防による対談を予定しており、そこで第三次産業の就業への課題などを取り上げる予定だ」

――来年以降の大会についての構想を。

「新型コロナウイルス感染症拡大が落ち着かない限りは、引き続き今回の大会のように現地とオンラインの両方での開催となると考えている。今後はオンラインを活用した開催形式がスタンダードな形になるのではないか。どんな形になろうとも毎年必ず開催していく必要がある。全国大会は日本の労働安全衛生の水準を向上させるため、年に一度、安全衛生に携わる人たちが一堂に会して安全衛生に関する情報・取り組みを共有する場。その場だからこそ話し合うべきことがあると思う。具体例でいうと、私は当協会の理事長に就任後、各種業界団体に出向き、その折に聞いた話で共通の話題があったが、それはコロナ禍の状況下ではこれまで実施していた安全衛生活動、例えば安全パトロールのようにどうしても密になってしまう可能性のある活動が一部、従来通りにできていないとのこと。今後、コロナ禍が収束に向かい、現場の状況が一気に変わった時にどのような変化が生じるのか想像もつかず危惧していると、異口同音におっしゃっていたことが記憶に残っている。コロナ禍で抱えている問題を共有し、対策を考えていくことが、全国大会を開催する意義であると感じている。目まぐるしく変化する社会情勢の中で全国大会を開催し続けることは、中災防の使命だ」

――コロナ禍で取り組むべき協会の活動は。

「中災防としてはどのような状況においても全国大会をはじめとした安全衛生活動に関する事業・サービスの提供を行っていかなくてはいけないという使命を持っている。我々は労働安全衛生を取り巻く環境の変化に、より迅速かつ的確に対応し、それらに応える事業・サービスの提供を通じて各業界・企業の安全衛生活動の推進、安全衛生水準の向上を支援する役割を担っていきたいと考えている。今は何よりもコロナ対策を施した上で事業を進めていくことが大事だ。中災防では現在、急ピッチで事業のオンライン化のブラッシュアップを進めている。『事業のオンライン化』と言っても、今まで実施してきた研修・セミナーを単にオンライン化すればよいわけではない。従来の研修・セミナーのオンライ化はもちろんのこと、今まで実施していなかった新規の研修・セミナーを立ち上げたり、研修・セミナーで講師の話すスピードをゆっくりとしたり、スライドの分量を変えたり、スライドのフォントを大きくしたりという試行錯誤を繰り返しながら顧客のニーズに合わせたオンライン事業を進めている。さらに安全衛生に関する動画のオンデマンド配信事業の展開を計画している。第三次産業の中でも比較的労働災害が多い小売業、社会福祉施設、飲食店で働く労働者に向けて、労働災害防止や安全衛生に関する内容が簡潔に理解できる啓発動画を制作し、第三次産業の労働災害防止に貢献していきたいと考えている」

――5年先、10年先に向け、協会の活動や安全衛生大会に求められることとは。

「時代が変わろうとも中災防は経営理念である『全ての働く人々に安全・健康を-Safe Work,Safe Life』を推進していくことが使命だと認識している。具体的には『全ての働く人々に安全・健康を提供できるように職員全員が"オール中災防"で企業・労働者をサポートしていき、多様性のある社会に貢献していくこと』が中災防の役割だと思っており、この使命の下、中災防の事業である技術サービス、研修・セミナー、全国大会など安全衛生に関する事業を実施していくつもりだ。労働安全衛生を取り巻く環境の変化により迅速かつ的確に対応し、それらに応える事業・サービスの提供を通じて各業界・企業の安全衛生活動の推進、安全衛生水準の向上を支援する役割を担っていきたい」(植木美知也)

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