2022年10月20日

新生リバー 松岡直人社長に聞く 経営効率化へグループ会社統合 リバーHDと統合構想も

金属リサイクル大手のリバーホールディングスは、子会社のリバー(本社=東京都墨田区)を中核企業としてグループ企業3社(中田屋、フェニックスメタル、NNY)を7月に吸収合併させ、最大8社あったグループ会社を3社に集約した。あわせて新たに事業部制を導入。リバーHDの親会社のTREホールディングスはこの10月に設立1周年を迎えたが、その前にグループ経営の効率化を加速させた格好だ。リバーの新社長に就任した、TRE会長でリバーHD社長の松岡直人氏に話を聞いた。

【経緯】
リバーの前身企業の鈴徳は、2001年にメタルリサイクルをグループ会社化し、03年に中田屋、サニーメタル、フェニックスメタル、NNY、イツモをそれぞれ子会社化した。06年には新生を子会社化。07年にスズトクホールディングスを設立、17年にリバーHDに社名変更した。鈴徳は21年1月にリバーに社名変更し、同年7月にメタルリサイクルと新生を吸収。同年10月にリバーの親会社のリバーHDが建設系廃棄物処理大手のタケエイと経営統合してTREホールディングスを設立してからは事業の合理化をさらに加速し、今年7月に中田屋、フェニックスメタル、NNY3社の吸収に至った。



――2021年から22年7月にかけて、リバーがグループ5社(メタルリサイクル、新生、中田屋、フェニックスメタル、NNY)を統合した狙いは。

「関東という一つの大きなエリアの中に、金属スクラップを中心とした中間処理業のグループ会社がリバーを含め8社あったが、07年にホールディングスができて10年以上たったこのタイミングで、経営効率の観点から統合することが良いと判断した」

――統合して、具体的に何が変わったのか。

「現時点で特に大きく変わった点はないが、今後変えるべきなのは各事業所の業務品質の標準化だと考えている。会社が一つになることにより、より良い業務品質に統一化することが可能になると思う」

――事業規模が大きくなった分、企業としての判断が遅くなるようなことがあるのでは。

「リバーの事業所は17拠点に増えたが、第一事業部と第二事業部とに分け、二つの事業部を通して17事業所を(私が)管掌しており、本社と事業所との距離間を短くし企業としてのレスポンスを早めることができると考えている」

――事業部制の導入とともに、運輸統括室を新設した。

「近年、輸送のオペレーションコストが高まっており、関東で最適な輸送体系を作るために新設した」

――サニーメタルとイツモは統合しなかった。

「今回の統合は関東エリアを対象としたもので、大阪に拠点のあるサニーメタルを統合するシナジーは現時点では大きくないと判断した。ただ、今後別の観点から検討して統合を決める可能性はあるかもしれない。一方でグループの輸送を担うイツモは、金属リサイクル業と業務内容が異なり別企業として連携するほうがよいと判断した」

――統合にあたっての経営効率のメリットをもう少し詳しく。

「今までのグループ会社にはそれぞれに社長をトップとする企業組織があったが、各社をリバーの事業所としたことで本社と事業所との距離が近くなった。意思伝達がスピーディーになったともいえる。鉄スクラップのビジネスは基本的に地産地消と呼ばれ、事業所の周辺で発生した鉄スクラップを各事業所で中間処理し、近隣の電炉メーカー等に販売する。このスタイルは今後も当社グループの中核業務だが、それとは別の社会の大きな潮流――循環型社会を念頭に置いた動静脈連携への社会的ニーズ――を無視できなくなってきた。そのためには個社でそれぞれにというより、グループ全体で対応したほうが良く、全体最適の観点からグループ各社を統合した」

――昨年10月のTRE発足時も、動静脈連携に向けて資本力と社会的信用力を高める目的があったとのお話があった。

「動静脈連携やカーボンニュートラルなど、事業環境が大きく変化しているが、われわれ静脈企業がメーカーなど大きな動脈企業の要望に応えていくには静脈企業のスケールを大きくする必要がある。残念ながらわれわれ静脈産業は動脈産業に比べるとまだまだ規模感においては劣る部分があり、昨年10月にリバーHDがタケエイと統合したことで、その後、動脈産業からのいろいろなビジネスの提案等が増え、動脈産業から見た静脈産業への期待感が大きいことを再認識している」

――動脈産業からの反応が変わったとの話があったが、このたびのリバー統合前後で金属リサイクル系の同業他社からの目に変化は。

「もう20年近くグループ経営をしているので、グループ8社が3社になっただけで、同業他社からの見え方は大きく変わることはないと思う。企業の経営のやり方が変わっただけで、基本的な方針は何も変わっていない」



――昨年来、社外から経営幹部の採用があるが。

「これにはグループの将来構想が絡んでいる。現在はTREの下にリバーHDがあって、さらにその下にリバーがあるという三重構造になっている。将来的にリバーHDと事業会社であるリバーをまとめたいという考えもある。こうした構想を遠景ににらんだうえで、経営人材の補強を考えている」

――同じ関東圏とはいえ、各事業所の鉄スクラップの品質を均一にするには、かなりの設備投資が必要なのでは。

「各事業所でシュレッダー関連設備の更新投資を進めている。当社グループだけでなく、鉄スクラップ業界では90年前後に相当な数のシュレッダーが導入されてから約30年が経過し、設備更新の時期に来ている。またグループ企業で発生するミックスメタルを二次処理するリバー那須事業所では、既に設備投資を行い8月には新たな設備が稼働している。非鉄の選別精度のみならず、廃プラスチックを取り出す精度も上げる。当社の金属スクラップ戦略をひとことでいえば『集荷力と選別機能の強化』ということになるが、どちらかというと重点は選別の方に傾く。今後は国内の鉄スクラップ発生は大きく増えてこないと予想しており、その増えない鉄スクラップを同業他社と価格の面で集荷競争していくのでなく、一定量を集荷し、高い選別機能で有価物をより多く取り出す方向性で事業を進めたいと考えている」

――カーボンニュートラルの潮流のなかで国外の高炉メーカーは鉄スクラップ調達戦略を立てているが、購買対象は上級品種が中心になるようだ。

「これもひとつの事業環境の変化だといえる。当社グループの鉄スクラップ事業はこれまで内需に軸足を置いてきて、今後もその方針は変えないつもり。高炉メーカー、電炉メーカーの動きに真正面で対応するのはわれわれの使命であり、変化する(鉄スクラップの)ニーズに対応していくことは非常に大きなテーマ。このテーマについても選別機能が重要で、例えば上級スクラップのニーズに応えるには、母材から不純物などを取り除く選別技術を高めて、高品位な鉄スクラップにして出荷することが必要。こうした設備投資を進めていくことが重要と考えている」

――関東以外の地方に進出していく考えは。

「今のところない。先ほど述べた選別機能の強化など、関東でやるべきことがまだ多くある」

――鉄スクラップの輸出に注力する可能性は。

「国内最大の鉄スクラップ発生地かつ最大の需要地である関東で事業を展開しているので、国内に軸足を置いて事業を進めていく姿勢は変わらない。品質や納期といった取引品質を高め、それらを評価頂きながら、貴重な資源である鉄スクラップをできるだけ国内で還流させることが重要だと思う」

――最後にメッセージを。

「カーボンニュートラルを達成しようとしている2050年は、そう遠い未来の話ではない。20-30代の若い社員は現役世代のうちに2050年を迎えることになる。事業環境の変化に当社を向き合わしていくという大きなチャレンジが今の私の仕事だと認識している」

(松井健人)

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