2022年12月22日

鉄鋼新経営 新たな成長に向けて/王子製鉄社長/田邉孝治氏/「一貫力強化」で飛躍図る/操業支援システム構築、最適体制へ

――2022年を振り返って。

「2022暦年の普通鋼平鋼需要は月間ベースで5万9000トンになり、前年比で4%減少した。リーマン・ショック前の07年比で概ね半減となり、新型コロナウイルス感染影響前の19年に比べて18%減と、依然として厳しい環境下にある。分野別で土木向けは横ばい。建築向けは都市圏の大型プロジェクトや物流倉庫向けが堅調に推移したものの、平鋼の主要用途である中小建築物件向けは景況感の悪化に伴う出件の遅れや延期によって低迷した。製造業向けは半導体や部品の不足などの影響が一部で残っているが、コロナ禍からいち早く回復した海外需要がけん引し、回復傾向に入っている」

――王子製鉄の販売量はどうか。

「22年の販売量は月間2万7000トンペースで前年比4%減となり、普通鋼平鋼需要と同様の動きとなっている。群馬工場(群馬県太田市)の稼働率は8割程度で推移。圧延工場では600サイズを1カ月のロールサイクルで回しているが、1サイズ当たりの生産量は減少し、生産性や諸原単位が悪化しており、厳しい状況だ」

――鉄スクラップ価格が高止まりし、エネルギーをはじめ各種コストが増大している。

「20年は2月から年央にかけて、ロシア・ウクライナ情勢によって世界に鋼材や鉄スクラップの供給不安をもたらし、鉄スクラップ価格が急騰した。H2スクラップ価格は一時的にトン当たり6万7000円と20年の3倍近くまで値上がりし、至近は同5万円程度と高位である。また原油高や円安などの影響を受け、電力やガスの単価が前年比2倍にアップするとともに、その他資材も値上がりし、製造コスト上昇に歯止めがかかっていない。需要家も厳しい状況にあることは理解しているものの、安定供給を継続するため、製品を値上げせざるを得ない状況だ」。

――コスト上昇への対応策を。

「『電炉操業ナンバーワンの省エネ生産』を目指し、群馬工場では省エネ操業を徹底している。20年に実施した製鋼リフレッシュ工事と操業パターン最適化が奏功し、電力原単位を前年比5%程度改善。また製鋼の平日連続操業化と圧延のシフトアップを実行したことによって、SS400を主体とする製鋼―圧延直送圧延率(HR)は10%アップの45%に到達し、圧延加熱原単位も10%程度低減した。これによって、基準年に定める13年度に対し、工場諸原単位ベースで15%改善し、CO2排出量は25%程度まで削減している。ただ、原燃料価格の上昇幅は大きく、さらなる省エネを追求する」

――商品力の向上にも取り組んでいる。

「圧延ラインでは商品力向上対策を推進している。顧客から異形平鋼の特殊形状や、特殊鋼に対する検討依頼が増えている。ニーズの捕捉に取り組んでいるものの、異形平鋼は圧延ロールの孔型開発が難しく、また組替時間、検査や調整時間などで生産性が悪化する。21年には圧延中に異形形状を測定することが可能な断面検査装置を第2圧延工場で立ち上げたが、23年1月をめどに第1圧延工場にも導入する。特殊鋼については疵厳格材が多く、製造基準の厳格化を図りながら、22年で鋳片の疵研削機を増強し、高い品質が求められる特殊鋼ニーズを捕捉する体制を整えた。また、圧延検査ラインにAI活用による疵探傷装置をトライアル中で、基本品質を高める」

――カーボンニュートラル(CN)実現に向けた動きが加速している。講じる対策を。

「地球環境を保全し、原燃料高騰に対応するため、さらなる省エネ化を推進する。HRをさらに高めるべく、23年度下期をめどに、老朽化している第2圧延工場の粗圧延機とモーターを更新する。プライメタルズテクノロジーズ製で、投資額は約10億円。現在3台の粗2列圧延機を4台に増強する。第2圧延工場は小形平鋼までを手掛けており、特殊孔型を多く使用しているが、中間粗圧延機を4台に増やすことで孔型の組替などが容易になる。フリーサイズ化などを推進でき、生産調整がスムーズになり、生産回復時にも対応できる。これによって、HRを50%程度に引き上げ、25年にはCO2排出削減ベースで30%減を早期に達成させたい。至近で実行した設備投資によって生産性アップや業務効率化、省エネなどの効果が発揮されており、収益改善に繋がっている。顧客への安定供給を継続するためにも、必要な設備投資は継続実施する」

「新たな視点として、製造各工程での連携をより深化させる『一貫力強化』を考えている。600サイズの圧延で大小さまざまな形状があり、サイズ替えが頻繁で、サイズごとで生産性が異なるため、操業変動に対して作業者が順次調整している。ここに改善の余地があると考えており、スクラップヤードから製鋼、圧延、出荷までの各工程の連携がスムーズになる工場一貫での操業支援システムを構築して、生産トラブルや、組替による待機時間を最小限にするなど最適製造体制を確立し、鋳片在庫を低減することで熱ロスを減らすなど、さらなる省エネ化を図る。将来的には顧客の状況を考慮した形で出荷できるようなシステムに発展させたい。全ての対策の基本は実作業での3M(ムリ、ムダ、ムラ)を徹底することであり、さらに一貫力を高めることで、『製造実力世界一の電炉メーカー』に飛躍していきたい」

――CN加速で鉄スクラップ需要が増える。

「地球環境保全への対策として世界で電炉化が進み、電気炉で高級品種を製造する場合には上級スクラップが必要で、数量確保に向けた争奪戦が予想される。平鋼は顧客の品質要求レベルが高く、上級スクラップの使用割合が多いため、鉄スクラップ対策を講じることが重要だ。検査を強化してH2など標準スクラップの利用を促進するとともに、分別対策や嵩密度対策に注力。銅含有などトランプエレメント影響をミニマイズ化する製造プロセス開発にも取り組む」

――働き方改革も推進している。

「群馬工場は東京電力エナジーパートナーとの電力契約を変更し、21年4月から製鋼の操業形態を見直した。土曜・日曜・祝日と平日夜間の操業から、金曜日と土曜日を休日とし、日曜日から平日昼夜の連続操業に切り替えた。このほか、65歳定年延長を実施している。22年春に入社した大卒社員4人のうち3人は女性で、このうちシステムエンジニアも1人採用し、即戦力化している。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進すると同時に、デジタル対応など人材育成や内部統制にも注力する」

――DX(デジタルトランスフォーメーション)などの取り組みを。

「DXとして購買や貯蔵品在庫、経理の一貫システム化を図っている。購入品はすべてWEB化し、すべての購入品、貯蔵品がQR管理を通じて一元管理化できる。在庫品の場所や数量などを全て把握することが可能で、スタッフ業務の効率化、コンプライアンス強化に繋がっている。当社ホームページ内にあるWEB発注システム『e―Net』は使い勝手が向上したことで、全販売量に占める活用割合は約85%まで高まっている。注文から製造、出荷までのプロセスでミスを防ぐほか、業務効率化の観点からも23年中には活用割合を100%に引き上げる」

――23年の展望を。

「23年の普通鋼平鋼需要は22年比微増になると予想する。建設関連は大型都市再開発や物流倉庫などの大型物件は堅調。中小物件もコロナ規制緩和による景気回復や、インバウンド需要増が加わり、出件が進むだろう。産業関連は各国の金利引き上げが景気阻害要因になり、地政学的影響の長期化や中国の景気減速も懸念されるが、自動車は需要に追い付いていない生産状況にあり、部品不足の解消が産業全体の需要を下支えするとみている」

「一方、鉄スクラップ価格はCNの高まりやコロナ規制の緩和などによって、大幅に下落するとは考えにくい。さらに円安や地政学的影響に伴う原料需給バランスの不均衡によって電力及びガスの急騰や、輸送費や合金鉄、耐火物の価格上昇など、大幅な製造コスト上昇が懸念される。冬季や夏季には電力供給不安による節電要請など生産性低下も予想されるため、顧客には状況に見合った値上げをタイムリーにお願いせざるを得ない可能性が高い。いかなる状況下においても顧客ニーズとしっかり向き合い、求められる製品を絶えず安定供給し、『さすが王子は高品質、短納期、安定生産で超一流』と評価してもらえるよう、努力していきたいと考えている」(濱坂浩司)
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