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2024.12.4
2024年1月17日
商社の経営戦略 物流・人材対策/メタルワン 北村京介社長/人材最適配置、成長後押し/北中米で「市場対応型」ビジネス
――2023年を振り返りつつ、鉄鋼業を取り巻く環境から。
「長期化したコロナ禍が終息に向かう中、各国政府のインフラ投資や製造業の復調を背景に海外の鋼材需要は増加に転じたが、中国の不動産不況の影響が広がり、回復ペースは鈍化。国内の鋼材需要は、自動車分野が回復する一方、人手不足や資材価格高騰の影響で建設分野が低迷。鋼材価格は、需要回復と原料価格の高止まりを背景に国内は高位で安定したが、海外は中国からの鋼材輸出が攪乱要因となって下落した」
――2023年4-9月期の連結純利益は前年同期比25%減の168億円だった。
「収益は2%増の1兆2025億円、取扱数量はほぼ横ばいと、総じて堅調に推移した。純利益の減少は、前年同期の一過性の利益の反動が響いた。連結対象会社102社のうちの直接連結79社は黒字67社、赤字12社。赤字会社には撤退を決めているところや事実上の休眠会社を含んでおり、グループ会社の収益は底堅く推移した」
――国内外のバランスは。
「収益ベースで国内が43%、海外・輸出・輸入は57%。前年同期はそれぞれ37%、63%だった。国内は自動車関連生産の回復、鋼材価格の高止まりが追い風となった。海外は鋼材価格の下落が響いた」
――事業部の動向は。
「営業は5事業部10ビジネスユニットに分かれており、どこの事業部が取り立てて好調であったということはないが、国内自動車・電機・薄板BUが核となる薄板事業部は相対的に好調だった。メタルワンネジの油井管市場への拡販による利益貢献が進展し、エネルギープロジェクトBUがある鉄鋼貿易・エネルギー事業部も堅調に推移した。リスクの感度を少し下げながらチャンスを捕捉していこうとする、トレード拡充に向けての姿勢変化の成果が出始めている」
――事業会社について。
「自動車関連ビジネスが中心となる国内外のコイルセンターは好調に推移。土木・建築分野では人手不足・物価高の影響で厳しい環境が続いた。海外では前年同期に鋼材価格高騰の恩恵を受けた米国事業投資先のコイルプラスが大幅減益を余儀なくされた」
――実力ベースの利益、稼ぐ力をどう評価しているのか。
「収益は鋼材価格や数量に大きく左右され、純利益も一過性の要因が影響する。収益力については、トン当たりの売上総利益額を重要視しているが、上期は海外を中心に事業環境が悪化する中、一定のトン当たり総利益額を維持している。19年度末に128社あった連結対象会社が102社となり、かつて20億-30億円だった赤字幅も一桁に縮小。撤退案件も一巡し、成長投資に向けた整備が出来てきた。コロナ禍の影響もあって操業率が落ち込んでいたタイ、インドネシアなど東南アジアの事業会社も回復途上にある。経営判断の軸を守りから攻めにシフトし、収益基盤を拡充していく」
――「中期経営計画2024」(22-24年度)は折り返し地点を過ぎた。
「『変革』と『成長』をテーマに掲げている。社会構造や需要環境が大きく変化する中で、デジタル技術を活用して、国内鉄鋼流通サプライチェーンの効率化・高度化・先鋭化を図る必要があり、自ら『変革』し、取引先に選んで頂ける商社機能を作り上げていく。『成長』は『海外』『カーボンニュートラル』がキーワード。自動車、建機、部品メーカーなど『顧客対応型』のビジネスモデルを得意とするが、加工・物流などの設備能力が収益の限界となっている。『顧客対応型モデル』を磨きつつ、建材分野など『市場対応型』のビジネスモデルを創出し、収益拡大のチャンスを広げていく。極めて数多くの対応策が俎上に上っており、内容を吟味し、優先順位をつけながら具現化しつつある」
――「変革」を具現化するにあたって、デジタルトランスフォーメーション(DX)が重要なツールとなる。
「DXは、トランスフォーメーションつまり業務フローの改善や企業風土の改革、新たなビジネスモデルの創出が目的。デジタル技術は有効なツールとなり得るが、解決策が湧き出てくるわけではない。前向きな自己否定、現状否定から始まる議論を重ねてきた成果が積み上がってきている。一例を挙げれば、日本IBMとともに開発した自動車鋼板流通のデジタル・プラットフォーム『Metal X』は取引先から多くの引き合いを頂いている」
――「Metal X」の機能を。
以上、約1800字、全文約5600字は読者専用ページ以上、約1800字、全文約5600字は有料
「長期化したコロナ禍が終息に向かう中、各国政府のインフラ投資や製造業の復調を背景に海外の鋼材需要は増加に転じたが、中国の不動産不況の影響が広がり、回復ペースは鈍化。国内の鋼材需要は、自動車分野が回復する一方、人手不足や資材価格高騰の影響で建設分野が低迷。鋼材価格は、需要回復と原料価格の高止まりを背景に国内は高位で安定したが、海外は中国からの鋼材輸出が攪乱要因となって下落した」
――2023年4-9月期の連結純利益は前年同期比25%減の168億円だった。
「収益は2%増の1兆2025億円、取扱数量はほぼ横ばいと、総じて堅調に推移した。純利益の減少は、前年同期の一過性の利益の反動が響いた。連結対象会社102社のうちの直接連結79社は黒字67社、赤字12社。赤字会社には撤退を決めているところや事実上の休眠会社を含んでおり、グループ会社の収益は底堅く推移した」
――国内外のバランスは。
「収益ベースで国内が43%、海外・輸出・輸入は57%。前年同期はそれぞれ37%、63%だった。国内は自動車関連生産の回復、鋼材価格の高止まりが追い風となった。海外は鋼材価格の下落が響いた」
――事業部の動向は。
「営業は5事業部10ビジネスユニットに分かれており、どこの事業部が取り立てて好調であったということはないが、国内自動車・電機・薄板BUが核となる薄板事業部は相対的に好調だった。メタルワンネジの油井管市場への拡販による利益貢献が進展し、エネルギープロジェクトBUがある鉄鋼貿易・エネルギー事業部も堅調に推移した。リスクの感度を少し下げながらチャンスを捕捉していこうとする、トレード拡充に向けての姿勢変化の成果が出始めている」
――事業会社について。
「自動車関連ビジネスが中心となる国内外のコイルセンターは好調に推移。土木・建築分野では人手不足・物価高の影響で厳しい環境が続いた。海外では前年同期に鋼材価格高騰の恩恵を受けた米国事業投資先のコイルプラスが大幅減益を余儀なくされた」
――実力ベースの利益、稼ぐ力をどう評価しているのか。
「収益は鋼材価格や数量に大きく左右され、純利益も一過性の要因が影響する。収益力については、トン当たりの売上総利益額を重要視しているが、上期は海外を中心に事業環境が悪化する中、一定のトン当たり総利益額を維持している。19年度末に128社あった連結対象会社が102社となり、かつて20億-30億円だった赤字幅も一桁に縮小。撤退案件も一巡し、成長投資に向けた整備が出来てきた。コロナ禍の影響もあって操業率が落ち込んでいたタイ、インドネシアなど東南アジアの事業会社も回復途上にある。経営判断の軸を守りから攻めにシフトし、収益基盤を拡充していく」
――「中期経営計画2024」(22-24年度)は折り返し地点を過ぎた。
「『変革』と『成長』をテーマに掲げている。社会構造や需要環境が大きく変化する中で、デジタル技術を活用して、国内鉄鋼流通サプライチェーンの効率化・高度化・先鋭化を図る必要があり、自ら『変革』し、取引先に選んで頂ける商社機能を作り上げていく。『成長』は『海外』『カーボンニュートラル』がキーワード。自動車、建機、部品メーカーなど『顧客対応型』のビジネスモデルを得意とするが、加工・物流などの設備能力が収益の限界となっている。『顧客対応型モデル』を磨きつつ、建材分野など『市場対応型』のビジネスモデルを創出し、収益拡大のチャンスを広げていく。極めて数多くの対応策が俎上に上っており、内容を吟味し、優先順位をつけながら具現化しつつある」
――「変革」を具現化するにあたって、デジタルトランスフォーメーション(DX)が重要なツールとなる。
「DXは、トランスフォーメーションつまり業務フローの改善や企業風土の改革、新たなビジネスモデルの創出が目的。デジタル技術は有効なツールとなり得るが、解決策が湧き出てくるわけではない。前向きな自己否定、現状否定から始まる議論を重ねてきた成果が積み上がってきている。一例を挙げれば、日本IBMとともに開発した自動車鋼板流通のデジタル・プラットフォーム『Metal X』は取引先から多くの引き合いを頂いている」
――「Metal X」の機能を。
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