2025年10月14日

非鉄業界で働く/女性技術者編 インタビュー/科学を身近な存在に

SWCCの電力システム部電力機器技術課に在籍する田渡未沙さんは本業にいそしむ傍ら、ダイバーシティ推進プロジェクトのメンバーとして次世代の人材育成や人材確保に貢献できるようにと活動する女性技術者の一人だ。これまでに内閣府などが進める「理工チャレンジ(リコチャレ)」や大学生向けのイベントの企画運営などを担当。人材不足で工業界に人が集まらない実情を踏まえ、「次世代に私たちの仕事がいい仕事と知ってもらいたい」「理工学は男女がいて当たり前という環境にしたい」といった思いとともに行動する田渡さんに、日々の業務や将来に対する考えを聞いた。

――現在の職務は。

「電力技術チームのリーダーとしてメンバーのサポートなどに励んでいます。業務自体は基本的に電力会社に納入する製品の型式を申請したり、お客さまに技術文書で根拠を示したりするといったことが多いですね。これまでは製品設計や開発といったことをしていましたが、最近の仕事はどちらかと言えばマネジメント寄りになってきています」

――学生時代について。

「大学は理工学部電気電子工学科に進み、電子事象研究室でカオス解析などを行っていました」

――理系を目指そうと思った理由。

「幼少期から化石や考古学に興味があったほか、中学で数学が楽しい、高校で物理が面白いと思ったこと、電気のことを学んだらどこでも仕事できると考えたことなどがきっかけになります。私の場合は、父が理系に行くのは女性だろうが男性だろうが関係ないと言ってくれる人だったこと、また親が科学体験を結構させてくれたことが大きかったですね。トライアンドエラーを繰り返してやっていけば何かしらの成果が得られるといった、工業界の偉人の話に励まされたことも影響しています」

――SWCC社への入社のきっかけ。

「在籍していた研究室に供給されていた材料のふたに(前の社名である)『昭和電線電纜』って書いてあって、よく話を聞いたら大学の先生が仲良くしていた高電圧の講師がOBの方だったんです。面接を受けてみて、他の会社からも内定をもらっていましたが、最終的には会社のカラーで当社を選びました。内々定の時にあった工場見学と先輩社員との懇親会でお会いした人たちも素朴で優しく、この会社にしてよかったと思ったことを今も覚えています」

――これまでの職務について。

「電機システム機器部技術課に配属されて以来、途中1年ほど営業技術に携わりましたが、その後は技術課(エクシム兼任)、電力機器事業開発PJ(プロジェクト)、現在の電力機器技術課とずっと電力機器部品の開発にかかわってきました」

――印象に残っている出来事が2つある。

「一つは入社3年目ぐらいに初めて造った製品に俗称が付けられていたことです。形がいかやUFOに見えたそうで、『あのUFOね』といったようにかわいがられていました。もう一つが当社主力製品の規格変更に伴う対応になります。開発の仕事と言いながら、製造技術や品質保証にも取り組みました。一緒に現場にいた係長と実験したり、製造条件を出したものを現場の作業員と一緒に試験したりと繰り返し行い、製法に落とし込むまでに3年近くかかりましたが、安定生産ができるようになったときはうれしかったです」

――さまざまな経験ができるのがSWCC社の特長だ。

「大手企業のように仕事に境目がない部分があるのが実態になります。過去には自分で使う材料の見積もりをとったり、製造技術の代わりにデータをとって相談したりしたこともありました。一方で技術課の社員でありながら技術課以外の仕事が分かるということは自分の強みであると常々感じています」

――工事現場の作業員らと一緒に現場に赴き、組み立て作業に立ち会ったこともある。

「自分が手掛けた製品がどうやって使われているかというところまでを見守れる、あるいは自分たちがどういう製品に携わり、どういった人たちが働いているかを直に見られることはとても大きなことと捉えています」

――昨年6月からダイバーシティ推進プロジェクトのメンバーとしても活動している。

「次世代の理工学人材の育成担当として、中学・高校生、大学生向けの講座やイベントの企画運営などを担っています。科学の世界が身近な存在にならないと理系を志す人は増えないだろうと思っている中、参加者にいかに興味を持ってもらうかといったことを意識しながら企画を考えるようにしています。おかげさまで参加者数は増加傾向にあります」

――意気込みを。

「身近にいる大人の後押しが大きい中、親御さんや保護者に私たちの仕事を理解してもらう、また次世代にいい仕事だということを知ってもらうことが大切であり、重要であると考えています。今冬には他社と大学生向けのコラボレーション企画も予定しています。今後は当社だけの活動にとどまらず社会全体として、企業としていかに貢献していくかというところに注力していければと思います」

――歌舞伎鑑賞が趣味。

「元々は亡き祖母が好きで、10年ぐらい前に母と見に行ってからはまりました。年に5―6回は足を運んでいます」

(松田 元樹)











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