2026年2月16日

鉄鋼業界で働く/女性管理職編 インタビュー/船舶設計 調整は常に密

長らく構造不況業種といわれていた日本の造船業界は、安全保障の観点から再び注目を浴びており、受注残高も増加傾向にあるなど追い風が吹いている。造船大手、常石造船の設計本部商品企画部機電計画グループの杉山紀代子さんは、船の心臓部といわれる機関室の設計を行うグループのリーダーとして、また同社初の次長職として、日々奮闘している。入社のきっかけや業務内容、やりがいについて聞いた。

――現在の職務は。

「ばら積み船(鉱石やセメントなど梱包されていない貨物を大量に輸送する貨物船)を中心とした造船の基本設計を行う部署で、グループリーダーとして、メンバーの仕事のサポートやマネジメントを行っています。担当する機関室(エンジンルーム)は、船を推進させるための主機、発電機やポンプ類などの補機で構成されており、それらを国内外グループ会社のメンバー含めて17人で設計しています」

――入社するきっかけは。

「神戸商船大学(現神戸大学)商船学部で船の勉強をしていました。卒業後、船乗りになる人も多いですが、当時は女性が船乗りになることは難しく、就職先を選択する中で、船の勉強を生かせ、なおかつものづくりが好きだったことから、ゼミの教授の勧めもあって、当社に1997年に入社しました。設計部門では女性の採用は初でしたが、不思議と気負うことや女性ということを意識することはありませんでした。『何でもチャレンジすればいい』という社風のおかげでしょうか」

――入社後の職務は。

「船の機関室の配管システムの機能設計を長らく担当しました。2018年にグループ長になり、その後現在の部署に異動してグループ長として3年目になります」

――印象に残った仕事は。

「設計した船に不具合などがあれば、船主との話し合いになりますが、自分が担当した船であればいくら若くても対応を任せてもらえました。それらの積み重ねが自信につながっていったと思います」

――設計という仕事の面白さ、難しさ。

「使用目的や用途によって船の大きさや形はさまざまです。そのため船主と何度も打ち合わせを行い、CADシステムなどを使って設計を行います。いかに安全で顧客の希望に応じた価格で船の設計ができるのか、そこが設計者の腕の見せどころです。大きくて緻密な構造物だけに、設計には各部門との調整は常に密に行われ、計画からデリバリーまでの期間も3―4年、長ければ5年以上かかる場合もあります。顧客の意向に沿った船を作るため、課題について皆でより良い解決策を見いだし、時間をかけて形になっていくことに大変やりがいを感じます」

――仕事に対するこだわりは。

「『やるといったことは、とことんやる』。現在グループ長として、グループ内のメンバーの仕事をとりまとめる業務が多いですが、自分はリーダーシップを取ることに向いている方ではないので(笑)、皆が気持ち良く仕事に取り組める場を作りたいと思っています。職場内はベテランと若手で構成され、中堅層がいないため、自分が潤滑油となって双方のコミュニケーションがうまくいくように心掛けています」

――担当部署および自身における課題は。

「会社の経営方針に沿ったグループ計画をしっかり遂行し、グループ全体の評価アップにつなげていくよう、いかにメンバーを導いていくかが常に課題です。国内の造船業界は現在繁忙状態にあり、今後ますます人材確保の重要性が高まる中で、常石グループでは『徹底的にひと重視』という方針の下、本年度から人事制度を改定しました。給与をはじめ待遇改善にも反映されているので、特に若手の仕事へのモチベーションに寄与していると思います」

「また、最近の20―30代は男性も育児や家事を優先したいと考える人が増えているが、実際には仕事との両立にはまだまだ不安を感じているかもしれない。その点は相談してもらうことで、一緒に考え、フォローしていきたいです」

――自身も仕事と育児を両立をしてきた。

「男子3人の子育ては、特に小学生の頃は大変でした。私たち夫婦の実家がいずれも遠距離のため頻繁に手伝ってもらうことは難しく、周囲の協力の下、いろいろと工夫しながら対処してきました。その際、『人のせいにして仕事を辞めない』『やりたいと思うのであれば、納得いくまで続ける』という思いで頑張ってきました」

「育児を終えたことで、仕事との向き合い方も変えていかねばならず、現在模索中です。今後は親の介護という新たな課題も出てきます。自身のキャリアプランを考えながら、仕事との両立をどうしていくか、不安もありますが、国や会社の制度を活用しながらしっかりと取り組んでいきたいと思います」

(福岡 紀子)





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