2000.07.14
神 鋼商事はこのほど米・サウスカロライナ州に軸受鋼の伸線加工工場を設置、伸線加工事業に進出した。工場を設置したのは、同社の現地法人である「神商アメリカン」で、現地ユーザーの要請にこたえる形で加工工場を設置した。

 立地はサウスカロライナ州エイケンで、設備投資額は200万ドル、主要設備として連続伸線機3基、試験設備などを設置、加工能力は月間600トン。来月からの稼働を予定しており、従業員は当初、10人程度を予定している。

 「神商アメリカン」は、1966年の設立以来、神戸製鋼所製の線材および線材加工品であるワイヤを、主力製品の一つとして輸入販売してきた。今回、伸線加工事業に進出したのは、現地大手ベアリングメーカーであるトーリントン社(本社=コネティカット州)から軸受鋼の伸線加工の肩代わり要請を受け、これにこたえる形で工場を設置したもの。

 トーリントン社は、米ローラーベアリングの最大手メーカーで、全米の軸受鋼需要月間8000トンのうち、2000トンを販売している。98年度売り上げは22億円、従業員8000人の規模。これまで同社の生産は、コネティカット州の同社工場で伸線加工を行い、サウスカロライナ州の製品工場で製造、出荷していた。しかし、コネティカット州からサウスカロライナ州までの輸送ロスが大きく、生産効率も悪いためコネティカット州の伸線加工工場を閉鎖、その肩代わりを神鋼商事に要請してきたもの。これを受けて「神商アメリカン」が、トーリントン社の製品工場に近い、サウスカロライナ州エイケンに工場を設置した。製造される600トンの製品は全量トーリントン社に納入される。

 工場の敷地、建屋はリースで借り受けているが、敷地は10エーカー、建屋面積は56000平方フィート(約2000坪)で、まだ敷地に余裕があるため、将来は工場を増設、他メーカーの加工需要にもこたえていく意向。

 神鋼商事は、97年7月からミシガン州グランブランで米テキストロン社と合弁で自動車ボルト・ネジ用線材の加工会社であるGBP社を設立、本格稼働させており、線材・ワイヤ部門での海外事業展開を積極的に進めている。今回の軸受鋼の伸線加工事業進出を機に、一段と線材・ワイヤ部門に経営資源を集中、同部門の事業拡大を図っていく方針である。 。

新 日本製鉄の粗鋼増産が急激に進んでいる。前期(4―6月)で700万トン台に乗ったのに続き、今期(7―9月)は710万トンに迫る水準が見込まれている。このままいけば、年間2800万トンが十分視野に入る状況で、バブル期の90年度、91年度に近い水準に達する。背景にあるのは輸出ロールの増加で、少なくとも年内分はメドが付いたと言われている。国内は、景気回復による需要拡大がプラスに働いている。加えて、日産自動車向けのシェア60%への引き上げによる供給量のアップといった新しい要因も、粗鋼拡大に貢献している。

 新日鉄は国内9製鉄所体制で、粗鋼レベルは90年度の2899万トンを直近のピークに、低下傾向にある。特に92年度以降は2500万トン台の推移が多く、国内の粗鋼シェアも25%台にとどまっている。

 粗鋼拡大路線に転換したのは、輸出の急拡大と国内の他高炉の粗鋼増産に対応した面が強い。設備面でも先の名古屋製鉄所3高炉の巻き替え工事で、容積を4300立方メートルに拡大。これで実質10%以上の容積アップを進めるなど、ネックとなっていた上工程の拡充に向かっている。

 4月以降は国内需要の回復傾向もあり、粗鋼水準は、700万トン台とバブル期のレベルまでアップしている。特に薄板関係はホットコイルを中心に超フル体制にある。君津、大分、八幡など薄板主体の製鉄所では、輸出比率が40%を大きく上回っている。

 今期も好調な輸出が継続するのに加え、国内需要の回復傾向が明確になっていることもあり、710万トンに迫る高水準が見込まれている。日産向けの増量など個別の事情もこれに加わっている。特に八幡は日産向けのシェアが高くなっていると言われる。このままいけば上期1400万トン台は十分で、ほぼ90年レベルに戻る。

 国内では、基本的には価格重視の経営姿勢は崩していない。しかしNKK、川鉄などの他高炉との販売競争で、量的に売り負けるのは問題という雰囲気もある。

 基本的には需要見合いの生産姿勢は継続されるが、粗鋼の量的水準の拡大は、これまでの横にらみの姿勢からは、やや違った側面が見えてきている。

山 陽特殊製鋼は、SCM(サプライチェーン・マネジメント)のための新しい営業・生産基幹業務システム(名称・STEP生産システム)を構築、5月から本格運用を開始した、と13日発表した。このシステムは商社・問屋とオンラインネットワークを構築、受注・納品形態に応じて仕掛量、在庫量を最適値に制御しながら、顧客に対してジャストイン・短納期の納品を行うもの。さらに、来年3月までには、このシステムと連携した「出荷・物流システム」を構築し、総合的なSCM体制を仕上げる。

 同社は、95年から「SUNUP―21プロジェクト」を発足させ、見積もり・受注から納品に至る営業・生産業務システムの抜本的な構造改革に着手した。97年に「顧客情報管理システム」を完成、今回これに引き続き生産システムを構築した。

 このシステムは、商社・問屋とオンラインネットワークを構築して鋼材の使用予定・在庫・納品実績情報をリアルタイムに把握すると同時に、自社の生産予定・仕掛かり情報をリアルタイムに提供する。

 ジャストインタイムの納品が主流の自動車・ベアリングなどの顧客に対しては、オンラインネットワークにより使用予定・在庫・納品実績情報をリアルタイムに把握し、生産予定・仕掛かり情報を加え納入品のMRP(資材所要量)計算・製造指令を製鋼・圧延・処理の各工程に対し15日サイクルで行う。

 また、二次加工業・問屋などの顧客に対しては、独自の受注予測システムにより受注前に圧延素材を製造する。

 これらにより、各工程の生産量を納入状況に同期・連動させることで、顧客の使用予定に対し欠品や在庫不足が解消でき、自社および流通の在庫量・仕掛量を最適化できる。また、顧客指定納期から最適製造日を求め、製造指令を行うシステムも備えているため、顧客納期を満たし、出荷待ち在庫を大幅に減らせる。

 同社ではこのシステム運用により、自社および流通の在庫量を従来比60%削減、受注から納品までの工期を従来比50%以上短縮することを最終的に目指す。すでに、6月末時点では在庫量は約20%削減、受注から納品までの工期は代表的品種で40%短縮(棒鋼ホット品は40日から25日に、鋼管コールド品は80日から50日にそれぞれ短縮)している。同社としては、従来まで1・5カ月持っていた在庫を0・65カ月まで最終的に削減する計画。

 また、同社では出荷・物流システム構築のため、分散している倉庫の集約を図り、10月には休止している本社工場第一棒線工場内に完成する。来年3月までに総合的なSCM体制を整備するが、これにより年間8億円のコスト削減および40億円の資産圧縮を実現する。



通 産省の岡本巖・基礎産業局長は12日、独・デュッセルドルフで、EUROFER(欧州鉄鋼連盟)のシュルツ会長(ティッセン・クルップ会長)と同連盟のヒルゼン専務理事と会談、鉄鋼貿易摩擦問題や日・EU(欧州連合)鉄鋼対話の開催合意などについて、意見交換した。日・EU鉄鋼対話についてシ会長は「鉄鋼対話の実施は有意義」と評価。また、鉄鋼貿易摩擦では、岡本局長が米国の熱延鋼板アンチ・ダンピング(AD)問題で日本への支援を要請、これに対してシ会長は日本に対する理解を示したうえで「難しい問題もあるが、日本の立場にたって欧州委員会などにはたらきかけていく」と答え、日本支持を明示した。

 岡本局長は9日から15日までの日程で、ベルギー、ドイツ、英国を訪問、EUのカール対外総局長などと会い、鉄鋼貿易摩擦問題、日・EU鉄鋼対話の開催要請や、環境税の取り組み状況などの情報交換を行うことになっている。

 EUROFER首脳との会談は、デュッセルドルフのティッセン・クルップ本社で開かれた。日本側からは、先にEUとの間で合意した日・EU官民鉄鋼対話の開催について説明。併せて日本政府の世界貿易機関(WTO)提訴を受けて設置された熱延鋼板ADをめぐるパネル(小委員会)開催を来月末に控え、日本の主張を説明するとともに、今後の協力、支援を求めた。 これに対して、シ会長は鉄鋼対話の実施を評価するとともに、熱延鋼板ADの支援を明らかにした。キャプティブ(中間製品)の扱いなど幾分かの温度差はあるものの、おおむね日本側の主張に関して理解を示し、EUROFERとして欧州委員会などに日本の立場の側からプッシュしていく考えが伝えられた。

神 戸製鋼所は、IPP事業を事業収益の中核に位置付け強化する。現在2000億円を投じて神戸製鉄所内に2系列140万kWの発電所を建設しているが、全機稼働する2004年度以降、年間600億円から700億円の売り上げが見込まれている。これをベースに、年間120億円前後の経常利益を見込んでいる。環境対策や安定供給面での責任は重いが、操業が定常化すれば収益面でのリスクは比較的少ない。神戸製鋼では、規模のメリットと神戸市にある広大な土地の収益性の顕在化という位置付けで、当面15年間の供給契約に対応していく。

 神戸製鋼は、製鉄事業で培った操業ノウハウと用地、石炭受け入れ施設などの基礎的なインフラを活用してIPP事業に参入。関電の入札で、加古川と神戸製鉄所の2カ所で供給の権利を取得している。加古川製鉄所は、CDQ排熱を活用した発電で5万6000kWを契約。神戸製鉄所は、70万kW×2系列で同様ベース電源として関電と契約している。加古川分の5万6000kWは、すでに昨年度から供給を開始。続けて神戸製鉄所の石炭火力2系列分も、2002年4月から順次供給を開始する。

 神戸の発電所建設は1系列分が先行しており、2001年3月から部分ランを開始。9月から全ラインの試運転が開始される。この後、2002年4月から営業運転。2系列目は2004年4月からの供給開始で、これで関電と契約しているベース電源としてのIPP事業は軌道に乗る。

 神戸の分は全面完成の段階で、直の従業員50―60人を中心に、全体300―350人の要員を見込んでいる。

 燃料は輸入一般炭。これまでPCIの原料として実績があるため、このノウハウの活用で年間300万トンの石炭を購入する。

 投資額2000億円で、従来の郊外型発電所では25%が環境投資に充てられているが、都市型であるため環境対策投資は30%の高率になっている。償却は15年の定額。このため供給契約している15年間は、初年度から一定額の経常利益(2系列フル稼働で年間120億円前後)が見込まれている。償却負担は大きいが、投資抑制を続けてきているため、年間の償却レベル800億円に対し、支払いベースの投資はこのところ300億円程度にとどまっている。

 このためIPP投資関係の支払いが本格化しても、償却面ではそれほど大きな負担増にはならない。契約期間の15年が経過した後は、再度関電と交渉して再契約の見通し。

 IPP事業が比較的高い収益性を見込めるのは、神戸地区で都市型の大型発電所を建設できる用地がないのが最大の理由となっている。いわゆる土地の潜在的な収益性を、IPPの収益という形に還元した格好だ。公有水面埋め立てからスタートすれば、1平方メートル当たり15万円かかると言われている。このため同規模の発電所を建設するには、数千億円の投資が必要と言われている。これから判断する限り、関電にとっても有利な卸電力の購入になる。そういう意味で、高炉の持つストックの巨大さが改めて評価できる。また発電事業自体、原料調達からプラントの操業まで一貫した巨大システムのノウハウが必要だが、この分でも製鉄業のこれまでの蓄積がそのまま活用できる利点がある。

 関電は、主要な消費地である神戸市に発電所を保有していなかった。その神戸市に、初の消費地立地型の大型発電所ができる利点は大きい。

 市内全体で年間180万kWの消費に対し、神戸製鋼のIPPでほぼその大半が供給できる。現在、若狭の発電所から供給されている分は、神戸製鉄所からの電気に切り替えられ、送電ロスが解消できるメリットもある。

 巨大な製鉄所のインフラと、大型プラントを動かすノウハウがあってのIPP事業であり、高炉にとってはリスクの少ない多角化と言える。

6 月の日本造船業の新造船受注量は59万総トンで、前月比6・3%減となった。上期累計は476万総トンで99年同期比横ばい。円高傾向の中で、大手を中心に採算重視の受注姿勢が強まっており、このところの受注は停滞感が強い。

 これに対し、韓国はウォン安傾向の中で受注拡大を進めており、上期の受注実績は1040万総トン強と、半期ベースでは初の1000万総トンに乗った。日本の倍のペースで受注している。下期は選別受注の姿勢が出てくるとみられているが、年ベースの受注量は、99年に続き韓国が世界一の座に付くことは確実。

 6月の受注実績は大型のVLCCの受注がなく、バルク主体ということもあり伸び悩んだ。月次の59万総トンは、3月の40万総トンに次ぐ低い水準。前年同月比では23・4%の減。

 日本造船業の新造船受注は、大手の再編問題もあり、採算重視に転換している。特に円高の定着から無理な受注を敬遠するメーカーが多い。こうした中でウォン安と過大な設備を背景に、受注拡大を進める韓国の攻勢で、VLCCで7000万ドル前後が定着するなど、低価格化が進んでいる。

 日本勢は韓国との競合物件を避けながら受注を進めているため、全体にスローダウンしている。このまま推移すれば、99年実績の970万総トンの維持も難しい局面になっている。

関 西地区のコイルセンターの滋賀コイルセンター(本社=滋賀県愛知郡秦荘町島川、佐竹俊二社長)は5月末から、シャーリング設備の増設、およびこれに付随するクレーンの設置作業を進めていたが、このほど、テストを含めた作業を完了、今月から増設設備の本格稼働に入った。今回のシャーリング設備の増設はこれまで外注に出していた二次加工を内製化し、内製化比率を引き上げるとともに、地域周辺の薄板の小ロット・多品種の対応を強化するのが狙い。

 同社は伊藤忠商事系のコイルセンターで、本社工場のこれまでの加工設備は大型レベラー1基、大型スリッター1基、ミニレベラー2台、ミニスリッター、セミオートシャー2台で、家電、OA機器、鋼製家具、建材向けに受注、酸洗鋼板、冷延鋼板、表面処理鋼板の一・二次加工を手掛けている。現在、加工量は月間7000―8000トン。

 このうち、自社の二次加工は全体の加工量の10%に相当する月間700―800トンで、これ以外に、月間150―180トンのシャーリング加工を周辺の外注先に出していた。ただ、この特定の外注先も自社の主力取引先からの注文が増えると、滋賀コイルセンター向けの加工が対応しづらい状況となっていた。

 その一方で、滋賀コイルセンターとしても周辺ユーザーの小口・多品種の二次加工のニーズに対応するには設備の増強が必要となっていた。このため、今年春に本社工場にシャーリング設備2台の増設を決めた。

 今回、増設に当たっては既存のスキット製作場を隣接地に移動させ、旧スキット製作場にシャーリング2台を増設、および門型クレーン(2・8トンクレーン)とクレーンガータの据え付けを行った。また、新しいスキット製作場に壁を据え付けるともに、新旧のスキット製作場の間にテントを付け、二次加工した製品が雨に濡れないようにした。

 なお、増設したシャーリングの加工能力は、加工可能な幅が1台が2500ミリ、1台が600ミリ。



東 京地区の等辺山形鋼は6×50で3万1000―3万2000円、溝形鋼は5×50×100で3万4000―3万5000円と強含み。荷動きが小口中心で低迷しており、市況は停滞しているが、メーカーの追加値上げ含みの情勢で流通は月内に3万2000円を固めたい意向。

 日々の動きは6月並みで、倉出し対象物件が少なく、今後も増える見通しは立っていない。ただ、僚品H形鋼市況の上昇などで一時の弱気ムードは消えており、流通は3万2000円を唱えて過去のメーカー値上げ分の転嫁を図っている。

 メーカー側は追加値上げしたい意向を示しており、H形鋼など多品種を含めて夏季減産の場面で直近の値上げ圧力が強まっている。需要面で大きな変化がないため、引き続きメーカーの生産・価格動向が市況を左右するとみられ、来週の東京製鉄の発表価格が当面の焦点になる。