2000.08.07
関 東地区の小棒メーカーのうち、ベースサイズと細物サイズの生産体制と価格に大きな不協和音が生じている。ベースはデリバリー遅れが台頭、足元の生産量を増やすことができない状況に突入。加工についても指定メーカー以外は不可侵とすることで、安値回避の体制が定着した。これに対して細物は、一部メーカーの減産緩和に加え、ベース分野である16ミリサイズのシェアも拡大。細物の価格がベースより安い『逆エキストラ現象』が本格化、全体の小棒価格の足枷(かせ)となっている。

 価格上伸が本格化した今年4月から7月までの4カ月間の関東地区のメーカーへの発注量は合計123万2000トン、月間平均では30万8000トン。この内訳はベースが12万トン前後、細物は20万トン弱とみられる。需要は確実に増加しているものの、サイズ別の需要比率はベースが50%弱、細物が50%強と推定されることからみても、細物の供給過剰は明らかだ。

 現在のメーカーの売り出し価格はベースが2万6000―2万7000円。これに対して細物は13ミリが2万5000―2万6000円、10ミリが2万7000―2万8000円。13ミリはベース比で1000円安く、10ミリでも同比で1000円高にとどまっている。従来まで関東地区の細物エキストラは13ミリが同比で1000円高、10ミリは同比で3000円高だったが、現状では細物エキストラ体系が完全に崩壊した。

 原因は一部の細物メーカーの減産緩和にある。足元の鉄スクラップ価格が9000円程度と安いため、2万5000円以上の価格で生産すれば黒字になる一部の細物メーカーが、数量を増やすことで収益を追求する手段を取り始めたことに起因する。さらにはベースメーカーの領域であり、ベースメーカー指定の16ミリサイズを、細物メーカーがベースより安い価格で受注していることでも、細物メーカーの『数量重視』の生産スタンスが読み取れる。

 ベースメーカーの契約残は平均して2カ月から2・5カ月程度だが、細物メーカーは平均で3・5カ月以上の安い契約残を持っているとみられる。この契約残から推定すると、細物メーカーは年内の生産分をほぼ確保しているため、減産緩和で既契約分の消化を早めると同時に、固定費を引き下げる狙いもある。

 一部細物メーカーによる減産緩和が続けば、価格を3万円に引き上げるための道程は遠い。今後はベースメーカーの取り組みに、細物メーカーの協調がなければ、関東地区の小棒全体の価格引き上げは困難だ。

 一方、ベースメーカーは「これまでは減産と販売枠制限の2本立てで、販売量を絞ることで価格を上げてきたが、現状では造りたくても造れない。増産余力はまったくない」(ベースメーカー首脳)と、減産を緩和することで黒字化を目指すことが不可能な状況に突入した。

阪 和興業は関東地区のH形鋼の在庫販売価格を、盆休み明けの14日から持ち込みで3万4000円下限に1000円値上げする。既に100Wなど一部サイズで歯抜けが出ており、大幅な減産によって在庫の減少が確実な情勢。今月下旬以降はメーカーの3000円値上げ分が入荷するのに加え、メーカーは9月契約以降の追加値上げを示唆しており、再販売価格の引き上げを急ぐ必要があると判断したようだ。

 市況は持ち込みで3万3000円がほぼ実勢化している状況。7月末の在庫は在庫は3%程度の減少だが、100Wや中幅、大型サイズなどで歯抜けサイズが目立つという。メーカーの30%減産の継続で、当面在庫補充の見通しが立たない状況で、今後はさらに品薄感が強まると見ている。

 市況の上昇で一時的に採算は改善しているが、今後メーカーの値上げ分が入荷するため、現状価格のままでは再び採算が悪化するのが確実な情勢。盆明け3万4000円から始め、早い段階で値上げ分を市況に転嫁する考えだ。



鋼 材倶楽部のボックスコラム委員会(委員長=岡本晴仁・NKK建材センター主席)は4日、先月末に公表された建設省告示1794号の改正案によって、鋼材の冷間加工に新たな規定が加えられる問題で、建築構造用冷間プレス成形角形鋼管(BCP)について、メーカーが建築基準法37条の2に基づく大臣認定を取得することで対応すると発表した。既に建設省建築指導課の了解を得ており、8月中に大臣認定を取得できる運び。このため、9月上旬とみられる告示の施行に際して、規定に抵触してBCPが使用できないなどの問題は回避できる見通しだ。

 7月26日に公表された告示の改正案では、鋼材の冷間加工について、外側曲率半径が板厚の10倍未満で、加工部分が原板の性能を満たしていない場合、基準強度が与えられないという規定が新たに加わっている。BCPは加工部半径が板厚の3・5倍でこの規定に該当し、原板のSN材の降伏点の上限を超えるため、現状のままでは使用できない。規定は大臣認定品を除外しているため、BCRは該当しない。

 BCPは99年度実績で生産量が11万3000トンと、プレスコラムの77・4%まで普及が進んでいる。一時的にでもBCPが使用できない事態になれば現場に混乱を生じると判断し、メーカーは急きょ大臣認定を取得する方針を決めた。ボックスコラム委員会側はこうした事情を建築指導課に訴え、了解を取り付けており、月内に大臣認定を取得できる見通しが立っているという。



通 産省は、推進中の「スーパーメタル研究開発プロジェクト」(97―2001年度)について、今月9日、同省・工業技術院で「第1回評価委員会」を開く。5年以上のプロジェクト事業をプロジェクト期間内にも評価を行うことなどを盛り込んだ通産省技術評価指針に基づいて、スーパーメタル開発のこれまでの達成状況を評価する。鉄系スーパーメタルでは99年度までに結晶粒径約1、厚さ5ミリのバルク材の創製に成功、当初目標をほぼ達成、これをもとに今後2カ年で試験片により各種試験機で特性試験を実施、実用化に向けた基盤技術の確立を図ることにしており、同委員会ではこれらについて評価を行う。

 評価委員会は第1回委員会で委員長を選出した後、9月21日に評価作業委員会(非公開)を開き、11月17日の第2回評価委員会で評価案をまとめる。同評価案は、12月の産業技術審議会・評価部会に提出され、評価内容を確定することとなる。

 中間評価は工技院・産業科学技術研究開発課を事務局に行われる。学識経験者6人(専門委員4人、共通委員2人)から構成される評価委員会で、スーパーメタル開発プロジェクトについて鉄系、非鉄系などの各開発状況を評価する。



関 西地区の薄板加工業者の萩原鋼業(本社=東大阪市若江東町、萩原莞士社長)は来年にも、三重県上野市に薄板加工の新工場「三重工場」を建設する。着工は早ければ今年9月、本格稼働は来年6月中旬となる見込み。最新鋭の大型スリッター1基(山王鐵工製)を新設、小型スリッター2台も設置する。投下金額は約6億円(土地代は含まず)。これまで、メーカーや他のコイルセンターに委託していたコイルの大割り加工を自社に取り込むとともに、需要家立地となってきている滋賀、三重地区のニーズに対応するのが狙い。新工場では当初、月間3000トン(2次加工を含む)の薄板加工を目指し、将来的に数量が増加すれば、設備の増強も検討していく。

 同社は本社工場(敷地面積=1680平方メートル、工場建屋面積=1450平方メートル)にスリッター設備5基(中型3基、小型2基)を持ち、地区の中小ユーザー向けにスリット加工を手掛けている。現在、自社の加工量は月間2200トン、薄板の取扱量は月間3200トン。

 これまで、大割りしたコイルについてはメーカーから月間1200―1300トン、これ以外に、地区コイルセンターからも大割りしたコイルを月間1500トン、トータルで同2700トンを購入していた。

 また、最近では自社工場が手狭となっていたことに加え、かねて、ユーザー立地に近い場所での加工を検討していた。こうした中で、今年になって三重県上野市千歳字界外の上野千歳工業団地内の工場用地を購入、今年秋から工場建設に着手することになった。新工場の立地は、西名阪自動車の一之宮インターから車で1―2分と好ロケーションで、地域周辺にはユーザーの工場が点在している。敷地面積は1万780平方メートル、建築予定の工場建屋面積は約4000平方メートル。今月にも1回目の入札を行い、入札結果に納得できれば、今年9月から着工する。

 工場に先行する形で、今年11月に2階建ての事務所棟を完成させる。工場は来年3月末に完成予定。建築工事の完了後、設備を導入する。設備は大型スリッター1基を新設、小型スリッター2基を設置する。小型スリッターは基本的に本社工場から設備を移す。クレーンは4基。

新 日鉄化学と住友金属工業は4日、それぞれの子会社である新日化ロックウール(本社=大阪府堺市、資本金18億円、高田征幸社長)および住金和歌山鉱化(本社=和歌山市、資本金1億円、椎野敏宏社長)のロックウール事業を統合して、新会社を設立することで合意したと発表した。今後、公正取引委員会への事前相談も踏まえて、今年10月営業開始をメドに詳細検討を進める。

 ロックウールは、製鉄プロセスから副生する高炉スラグを再利用した素材で、耐火・断熱・吸音効果に優れた品質特性を有し、建築・住宅・プラント分野で幅広く使われているが、一方でその事業環境は厳しさを増している。

 このため両社は、事業基盤再構築を目指し、製造・販売・開発の効率的事業形態について検討を重ねた結果、事業の統合を図ることを決定した。新会社は、社名、資本金は未定だが、出資比率は新日化グループ80%、住金グループ20%、社長は新日化から出す。

 新体制でのロックウール事業については、競争力あるものにしていく方針。生産は当面、新日化ロックウールと住金和歌山鉱化へ委託、生産能力は繊維製品年8万5000トン、成型品同3万7000トンで売上高80億円を予定している。



日 鉄鋼管(本社=川崎市、坂井勝義社長)は先月末、第2期商業施設である「ミナトマチプラザアネックス」(大正堂とヤマダ電機に賃貸)が業務を開始し、98年7月の第1期施設である「ミナトマチプラザ」(イトーヨーカ堂に賃貸)を合わせて、新規事業である不動産賃貸事業の基盤が整い、コア事業である鋼管事業と合わせて、経営の多角化、企業基盤の安定化が進展する見通し。

 日鉄鋼管は新日本製鉄の鋼管事業グループの最有力会社。旧本社川崎工場の名古屋事業所(新日鉄名古屋製鉄所内)への移転による経費増なども加わって、95―96年度に連続赤字に陥った後、新体制の下での合理化の実施などにより、97―99年度で3期連続の黒字を定着させた。

 この間、旧本社工場・倉庫跡地の有効活用の一環として不動産賃貸事業に着手。第1期事業は99年度から通期でのフル稼働に伴い、売上高6億6000万円で前年度比1億5000万円強の増加となるなど、業績への安定要素として寄与しつつある。

 コア事業である鋼管事業では、自動車向けなどの機械構造用鋼管(STKM)の拡充に取り組んでいる。生産面では主力工場の名古屋を柱に川崎工場の生産増強、販売面では子会社の日鉄鋼管通商と東名パイプの営業力強化を含む、製販両面にわたるSTKM分野の拡大を図る。

 丸一鋼管、住友鋼管、エヌケーケー鋼管など溶接管業界で大手専業メーカーのシェア、影響力が強まる中、日鉄鋼管は新日鉄との連携を強めながら基盤の強化・拡充を目指す。

東 京地区の厚板(12ミリ、ベースサイズ)市況は4万―4万1000円どころ中心で強含み横ばい。素材の値上げに対して転嫁を図る溶断業者も出ているが、小口、短納期中心の加工販売で量が伸びないこと、切板価格への圧迫が続くことから相場は「上げる方向にある」(浦安鉄鋼団地)ものの、明確に上げきれていないようだ。シャー母材はローグレード品で少なくとも1000円は上昇し、こちらも市況は底を打ったとの見方。

 国内メーカーの材料は、「足並みがそろわない」(流通)との声も聞かれるが、建材関連の大手溶断業者では「確実に値上げした材料が入ってきている」としている。

 溶断・加工業者では建築物件に関連する切板価格の引き上げが課題。大型物件の発注で仕事量増加への期待はあるが、値上げを後押しするには時間がかかるかもしれない。