2000.08.17
山 陽特殊製鋼は、非金属介在物を減少させるとともに、介在物の大きさを小さくした超高清浄度鋼(商品名・SNRP鋼)の量産技術を確立した、と16日発表した。軸受鋼のほか、世界で最も高い清浄度を持つ自動車用合金鋼の開発にも成功、世界初のトロイダルCVT(無段変速機)にも採用された。

 高清浄度鋼とは、非金属介在物を減少させた鋼。非金属介在物を減少させるとともに、介在物をさらに小さくしたのが超高清浄度鋼。超高清浄度鋼では、介在物の大きさがおおむね10数ミクロン以下とされる。従来、同社では軸受鋼の超高清浄度鋼を少量生産していたが、このほど肌焼合金鋼までを含め量産製造する技術を確立した。

 同社は、電気炉―取鍋精錬炉(LF)―RH脱ガス―垂直型大断面ブルーム連鋳という基本的に高清浄度鋼の量産に適した製鋼プロセスを持っている。今回、スラグ組成の適正化、大気遮断方法の改善などにより精錬促進と汚染防止の最適条件を安定的に継続できる環境を整えることで、量産化を実現した。

 大型の介在物を減少させた超高清浄度鋼は、同じ鋼種でも部品の疲労強度、寿命を向上させることができるため、繰り返し負荷がかかる高強度部品に適する。エンジン部品、各種ベアリング、ハブユニット、等速ジョイント、各種ギア、高圧燃料ポンプ部品などの素材として用途があるが、同社の超高清浄度鋼の自動車用合金鋼(SCM)は、日産自動車の車(セドリック、グロリア)に世界で初めて搭載された日本精工製のハーフトロイダル方式のCVTに採用された。

 同社では現在、超高清浄度鋼を月間500トン程度販売しているが、今後、疲労強度に加え、優れた加工性をも備えていることから需要拡大を予想、将来的には最大で月間約1万トンに達すると見込んでいる。

 なお、NHKテレビで8月20日放映されるドキュメンタリー番組「世紀を越えて」(午後9時―9時50分)で、世界で初めて自動車に搭載されたハーフトロイダル方式のCVTが取り上げられ、その中で、CVT素材として採用された同社の超高清浄度鋼の開発が紹介される。

全 国コイルセンター工業組合(理事長=鈴木貴士・五十鈴社長)は、来年をメドにコイルセンター業界のEDI(電子データ交換)推進基盤として「共同EDIセンター」(仮称)を発足させる。運営システムは五十鈴が構築した「BRIDGE」をベースに、共同センター構想に適した内容に改良する考え。大手のコイルセンター中心に独自のEDIが進む中で、構想が実現すれば業界全体のEDI化が加速するきっかけとなりそうだ。

 工業組合ではEDI委員会(委員長=村山和雄・村山鋼材社長)が主体となって、共同利用型オープンEDIセンター構想の研究を進めてきた。これまで組合員のうち大手のコイルセンターは、商社や高炉メーカーと連携しながら独自のEDIシステムを運用する例が多いが、中小ではシステム開発や情報基盤の整備など、経費負担が重く対応が遅れていた。共同EDIセンター構想では、先行投資の重さに利用料などの資金回収が見合わないと判断。関東・東海地区にコイルセンターを展開する五十鈴で、すでに運用実績がある「BRIDGE」をASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー=ソフトウエアの供給元)に採用し、各社の費用負担を軽減。組合員が参加しやすいよう機能を集約するなど、BRIDGEを基にして改良版のアプリケーションを構築する方向で検討している。

 構想が実現すれば、パソコン1台からの手軽なWEB(インターネット)EDIが可能。成品の受け払いや出荷状況の確認、取引実績の照会などができ、FAXや電話での問い合わせを切り換えて効率化。一方で、ホストコンピューター間の大規模な情報交換も可能となる。

 五十鈴が昨年から需要家と接続しているBRIDGEシステムは、プロトコル(通信手順)の多様性に対応できる点が特徴。既存の業務システムで利用されていた接続方法にも対応できる。各企業の基幹システムと連携しながら、業界の標準化へ向けた取り組みも推し進める。

東 日本地区の溶接H形鋼(BH)製作業者は、採算割れを回避するため加工賃の確保に取り組んでいる。大手鉄骨加工業者(ファブリケーター)など需要家との価格交渉が厳しい中で、素材厚板の値上げが採算をさらに圧迫する可能性もある。年度後半は受注増で繁忙期に入るとの期待が強いだけに、BH各社共通の課題である採算の立て直しが急務となっている。

 「水面上に浮上するには(トンあたり)5000円足りない」。東日本地区の場合、材料を持たないBH製作加工専門の業者と大手シャーなど溶断部門(切板加工)と兼業の業者に業態が分かれるが、建築物件に関連して受注する大手業者のほとんどが事業単独で赤字に陥っている。

 BHは厚板溶断、溶接、曲がりや反りの矯正という各工程を経る。これに素材厚板の仕入れ価格と出荷運賃を加えたものが、BH価格(持ち込みベース)となる。しかし、需要家である鉄骨加工業者は鉄骨価格で大手建設業者から「頭を押さえられている」状態であるため、BH業者には完全に仕上げた製品で指し値を提示されることが多い。

 結果、加工コストを積み上げたBH価格との乖離(かいり)が生まれ、BH業者の主張する価格と実際には2000―3000円、場合によっては5000円ほどの開きが出る。純粋に加工賃を巡る交渉の場合も「切板と加工賃を合わせて、トン当たり2万5000円を確保するのが精いっぱい」(BH製作業者)という。

 根底には大手建設会社の受注単価の影響を受けた、鉄骨加工業者からの値下げ意向。そしてBH業者間の受注競争も存在し、東西を問わず遠距離のBH業者が参入するケースもある。受注が落ち込んだ昨年の一時期には「ニンジン(仕事)をぶら下げられ、値段は相手の言い値」という極端な例もあったようだ。

 また、開先加工や単重の低い場合に発生するエキストラも十分に確保できず、BH価格の織り込みに影響を受けている。他の鋼材手当てと同様にBHの注文も小口化の傾向があり、単重は通常1本6―10メートル・1トン程度のところを300―500キログラムと短い、板厚の薄い製品に対するエキストラが結果的に押さえられる。このほか、片面溶接のBT型部材の加工は曲げ矯正に手間がかかる。

関 西地区の形鋼大手流通筋は旧盆明けから、H形鋼の唱えを1000円高の持ち込み3万5000円に引き上げる。需給タイト化により8月入り以降の値戻しが順調に進んでいるためで、同時に一般形鋼、平鋼でも一段高のスケジュール値上げを行うなど、建材品種全体の押し上げを図る。

 同地区のH形鋼は旧盆前までに在庫の歯抜けが目立ち始めた。メーカーが5月以降3カ月連続で30%の引き受けカットを実施してきた効果で、細幅のベースサイズを中心に在庫がひっ迫。扱い特約店筋によると、「日を追うごとに歯抜けが増え、市中で3―4件ほど探さないと手当てできない状態」という。こうした需給の引き締まりを背景に、市況は旧盆前までに持ち込み3万4000円が通り始めるようになっている。

 8月前半はキョウエイ製鉄や合同製鉄が夏季炉修に入るなどしたため、流通筋では「8月の入荷量が大幅に落ちるはず」と指摘。さらに、新日本製鉄が8月契約でも30%の引き受けカット継続を表明、流通筋はこれも値戻しの追い風になると判断している。

 また、扱い筋は一般形鋼と平鋼でも唱えを1000円アップ。一般形で3万3000円、平鋼で4万円の市況形成に全力を注ぐ。両品種は今年に入ってからのメーカー値上げが計6000―7000円に達する一方、市況への転嫁が遅れている。メーカーはいずれも値上げに不退転の決意で臨んでおり、流通は「値上げの受け入れは不可避」と見ている。

 とくに、平鋼市場は昭和鋼業が撤退したうえ、共英製鋼が南港での在庫販売を自粛するなど、メーカーの供給姿勢が変化。各社とも今期(7―9月)は前期比10―20%の減産を実施するなど、需給改善に向けた製販の足並みも揃い始めている。

 流通筋はメーカー販価について、「いずれの品種でも9月に追加値上げがある」との観測を強めている。このため、扱い筋では急ピッチな市況引き上げが必要条件となっており、当面、強い売り腰が続く見通し。

東 洋製缶(三木啓史社長)は、従来缶に比べ生産コストが低く環境負荷の小さい2ピース・スチール缶のTULC缶について、同社の飲料缶生産に占める比率を現在の40%から年内に50%に引き上げる。近い将来70%程度に高める意向。千歳工場に製造設備を1ライン新設中で年内稼働の予定。TULC缶生産設備は千歳の導入で全国19ラインとなり、生産能力は東缶の飲料缶生産の半分強に当たる100億缶規模となる。フレーバー性(臭味性)の高さからも需要家のニーズは強く、来年以降、需要増に対応しさらに設備増強を図る考えだ。

 TULC缶は91年に開発され、母材にティンフリースチールにポリエステルフィルムをラミネートした鋼板を用いた点が特徴。母材厚0・18ミリ(通常0・23ミリ)、プレス後は0・1ミリ以下と缶の薄肉化を進め、従来の2ピースDI缶に比べ大幅な軽量化を図った。ラミネート鋼板は新日本製鉄、NKK、東洋鋼鈑から仕入れている。

 また、同鋼板の使用で潤滑剤と冷却効果のためのクーラント剤が不要となり、溶剤の洗浄や乾燥工程を省略することができる。排水処理が不要となり、環境やコスト面でメリットがあるため、東缶ではDI缶からTULC缶へのシフトを強めている。

 現在、東缶の飲料缶生産量は約200億缶で、うちTULC缶は約68億缶(99年度)。需要地対応の生産体制を組んでいる東缶では北海道地区向けに千歳に高速度ラインを設置する。今後、仙台、埼玉、横浜、広島など全国各工場での生産能力のアップを図る方針で順次、既存ラインから高速度ラインへのリプレースなどを進める。

奥 村組(本社=大阪市阿倍野区、奥村正太郎社長)は近く、インターネットを使用して、資材および外注業者を募集するシステムを構築、運用を開始する。まず、関西地区において8月21日から9月1日の期間にタイル工事、ガラス工事を募集、続いて、関東9月12日から同22日までの期間にフローリング工事、塗装・吹き付け工事の募集を行う。将来的には鉄筋工事、および鉄筋の材料手当てなどにも適用していきたい考え。

 これまで、同社の資材調達、外注業者の選定は、電話や直接商談・指定、および入札などの方法がとられていた。しかし、最近のIT技術の進歩もあって、同社もインターネットを活用した資材、および外注業者を募集するシステムを構築、近く、採用することとなったもの。

 同システムは奥村組にとって、取引先の拡大により、優良で低コストな調達ができるうえ、取引先にとっては参入機会が増加するなど、互いにメリットがあるものとなっている。応募は応募資格を満たせば、従来からの取引のある企業だけでなく、新規に取引を希望する会社の参加も可能。

 応募企業はまず、奥村組のホームページ(http://WWW.okumuragumi.co.jp)に掲載している応募用紙に、会社概要、当該工事の概算見積金額などの必要事項を記入し、電子メールで応募する。奥村組では応募内容を審査し、合格した先に対して詳細見積もりを依頼し、その見積額などから最終選考する。

東 京地区の縞板(4・5ミリ、ベースサイズ)市況は、5万6000―5万7000円どころ中心で強含み様子見。

 H形鋼など建築鋼材の値上げ基調が縞板にとっては追い風となり、小口注文を抱える扱い業者に比較的忙しさもあることから、鋼板類では唯一堅調な品種となった。ただ、需要家に対する値上げが通り辛いことを考えると、一段の価格上昇は大型建築物件の本格始動が待たれるところ。小口・短納期の注文は上値寄りとなり、高値安値の価格差は広がっている。

 中板など鋼板類の店売り市況が芳しくない点が懸念材料だが、高炉メーカーの生産は当面好調を維持する見通しで、縞板の需給バランスが崩れる可能性は低いとみられる。扱い業者では14日から3日間程度をお盆休みとしたところが多く、商いが本格的に動き出すのは来週から。目先は様子見。