2007年07月05日(木)
 三菱商事の鉄鋼原料本部は鉄鉱石権益を2015年までに3倍に増やすなど、次世代の資源確保に向けた投資を拡大する。強みのある原料炭は既存事業の拡張で権益を約40%増やすことを検討している。ステンレス原料ではフェロクロムの拡張やニッケルの川上分野への参入機会を視野に入れる。

 手持ちの資源や調達力を背景に国内鉄鋼メーカー向けの販売、サービスを強化しながら、需要が伸びるアジアの鉄鋼メーカー向けに販路を広げ、トレード収益の拡大に結び付けたい考えだ。
 新日本製鉄、JFEスチールなど高炉各社は高級鋼需要の伸びに対応するため供給能力の拡大を急いでいるが、高炉の拡張改修がほぼ一巡したことから、設備投資の対象を製鋼工程や熱延・厚板など一次ミルへシフトしている。自動車や造船、建産機など製造業向けのハイテン(高張力鋼)や特殊鋼などの高級鋼は、連鋳や圧延スピードの低下といった生産効率を阻害する要素を多く抱える。

 加えて需要家からの数量・品質要求が一層高まる傾向にあることから各社は転炉増設、連続鋳造機の改造、1次ミルの加熱炉増強や圧延機モーター更新などによる設備能力の維持・増強を急いでいるもので、世界トップの技術優位性を維持するという狙いもある。
 神鋼商事は、中国・華東地区の薄板コイルセンター(CC)に出資を検討する。電気めっき鋼板を中心に神戸製鋼所の材料を販売するツールにする。すでに華南地区の広東省広州市のCCには30%出資しているが、華東地区のCCにも出資することで、中国での扱い拡大につなげる狙いだ。
 高炉ガス管は秋以降に需要が集中し、今下期で需給がひっ迫する見通しだ。足元の荷動きは鈍いものの、都市部ではビル建築設備関連、工場用プラント関連でプロジェクトが目白押しで、「今が需要の底」(大手鋼管特約店)との見方が強い。高炉ガス管の生産量は、2006年度で2年ぶりに増加に転じたが、07年度は「06年度と同水準か、若干上回る可能性がある」(高炉メーカー)と予想される。
 新日本製鉄は韓国や中国など輸出向けの造船用厚板のエキストラ価格を改定する方針だ。合金など原材料のコストアップが進んでいることもあり、これまで手付かずだったエキストラ価格を見直し、収益改善を進める。ハイテン(高張力)材や厚手製品が対象になるもよう。現在、値上げ幅、適用時期などを検討中で、近々にまとめ、韓国や中国の造船メーカーに申し入れる。