2016年4月28日

【下】資源・製錬 新・百年の計 ■官民対談 西田・日本鉱業協会長「資源工学の継承が課題」/萩原・経済産業省資源エネルギー庁鉱物資源課長「選鉱など上流に技術提案」

――日本企業が資源獲得に乗り出す時、強みになることはあるでしょうか。

萩原「日本の製錬会社が一定程度の地金を生産し続けていることは、資源メジャーからみると安定感がある。鉱石を安定的に消費してくれる人たちに、資源の上流に入ってきてほしい、という声は、逆に資源メジャーのほうから聞こえてくる。もし日本から技術も提案できれば、上流に出る選択肢はさらに増えるかもしれない。たとえば選鉱技術で不純物をあらかじめ除き、難処理鉱を処理可能にする。そういう選択肢を増やす努力を、われわれのほうでも中長期的に見据えたい」

産官学の有機的連携

――資源開発分野では産官学の連携が非常に重要です。

西田「長年のご指導に感謝している。資源外交などさまざまなパイプを通じて国に先鞭をつけていただくことで、民間、個社のレベルで難しい部分もやりやすくなる。JOGMECなどの政府系機関の制度面も含めて、これまでと同様にご支援をお願いしたい」

萩原「資源外交では、JOGMECやJICA(国際協力機構)を通じて、資源国での研修事業や技術協力を続けている。地質リモート・センシング技術や鉱害防止技術の供与で、相手国から高い評価を受けている。資源国と意見交換や協力事業を続けながら、地域住民と共生し資源国の持続可能な発展に寄与する、日本企業ならではの良さ、ビジネススタイルを相手に理解してもらえればと思う」

――人材の確保・育成については。

西田「昔は大学に資源開発や冶金の学科が多くあり、そこで学んだ人たちが即戦力、スペシャリストとして業界に入ってきた。今は学科が減り、業界に入ってきても国内にトレーニングの現場がほとんどなく、海外の現場に出ねばならない。日本企業の携わる海外の現場が近年増えつつあるものの、業界共通の難しい課題だ」

萩原「資源工学系の学科の閉鎖はもちろん、最近は大学の先生方も、研究資金の集めやすい環境リサイクル分野へ移っている。資源開発や製錬に呼び戻したく、先生方が基礎的な研究開発を続けられるよう、JOGMECを通じた支援を続けている。JOGMECを介した、大学のシーズと企業のニーズのマッチングにもつながる」

西田「今の子どもたちが非鉄金属に興味を持てるような取り組みも続けている。3月からは経済産業省のご理解もいただき、科学技術館で子ども向けの常設展示を始めた。毎日1000人ほどの来訪がある。子どもたちと、子どもの進路決定に関わるであろう大人たちに、ぜひ関心を持ってほしい」

萩原「世代という意味では、大学の先生方の高齢化もある。世代交代の時期だが、若手の先生方が他分野に流出している。他分野の研究者でも、資源開発に興味をお持ちの方がいれば、逆に発掘して民間のニーズをとらまえた研究をしていただく、などの土台作りが喫緊の課題だ」

――今秋開催予定の国際銅会議「Copper 2016」も、結び付きの場になり得ます。

萩原「グローバルな結び付きになる。大事だと思う」

――最後に民から官へ、官から民へメッセージをお願いします。

西田「日本鉱業協会はこの4月で設立満68年を迎えた。関係省庁からの長年のご支援を受けて本日がある。きょうお話しいただいた方向性は、われわれ業界の意見と異なるところはなく、われわれも日本のものづくり産業を支える意味で、業界全体で頑張りたい」

萩原「100年以上の歴史ある企業のみなさんに対して、われわれ鉱物資源課も源流の鉱山局は明治10年(1877年)に始まった。今後とも末永く、できるだけの支援をさせていただきたい。最近10年間の海外鉱山投資を通じて、日本企業に知見が蓄えられつつある。新しい鉱山を生産に漕ぎ着けた経験を、次にどう生かせるか。われわれも知恵を絞りたい」

――創刊80周年を迎えた産業新聞にも一言ずつお願いします。

西田「われわれの業界、商品を広く紹介し、目に触れるところへ引き出してもらう、そういう機能を引き続きお願いしたい」

萩原「きめ細かな情報の提供は、金属業界を長年メーンにみてこられた歴史があるからこそ。引き続き勉強させてほしい」(おわり)

(司会=松尾聡子)