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[アジアン・メタルマーケット]

韓国・鉄鋼編 <1>

混乱期を脱出した鉄鋼業界

日刊産業新聞 2002/2/ 5

 韓国鉄鋼業界は、IMF融資にまで至った97年後半の金融危機後の混乱期を脱出したようだ。98年に前年比12%減の4000万トンまで落ち込んだ鋼材生産が、00年には過去ピーク(97年)を約340万トン上回る4900万トンに達した。法定管理下に陥った中堅鉄鋼ミルの再建にメドがつき、業界再編も一段落しそうだ。同国の景気はこの1―3月期に回復に転じ、02年の経済成長率は4%前後に達すると期待されている。日本向けに年間300万dの鉄鋼製品を輸出し、日本から600万トンを輸入する韓国の鉄鋼事情を現地取材した。

【鋼材需要は5000万トン】

 ソウル特別市の商業街の中心に位置する「ロッテデパート」。1階にはいわゆる高級ブランドのテナントが数多く出店している。店内は日本のバーゲン時のように大混雑しており、個人消費回復の力強さがうかがえる。同デパートの高層階にオフィスを構える日系商社のトップによると、デパートの大混雑はこのところ毎日のことだという。

 ▼アパートの建築工事ブーム再燃

 ソウル近郊の金浦空港に向かう国内便の機中から眺めると、都市部から郊外まで高層アパートが延々と続き、ソウルが1200万人の大都市であることを実感できる。さらに昨年来、アパートの建築工事ブームが再燃しているという。「金利が史上最低水準(現在は4%前後)に落ち込み、不動産向けの投資が急拡大している」(日系商社)ためだ。

 世界トップの造船大国である同国の01年の建造量は610万CGトンと高水準を維持した。「02年の建造量は650万トンに増加する見通し。自動車生産も295万台から340万台への大幅回復が見込まれている」(同)。個人消費が回復、製造業も金融危機以前のピークを上回る水準に達しているということだ。

 ▼経済成長4%見込み

 韓国の景気は「01年第4・四半期に底を打ち、上昇気流に乗り始めた」(現地金融機関)。01年の経済成長率は2%台後半まで戻し、02年は下半期に向けて回復ペースを速め、通年で4%前後に達すると予測されている。

 ▼鉄需も上方修正含み

 鋼材需要は01年が5186万トン、前年比0・6%減、02年は同0・1%増の5190万トンと見込まれている。これは韓国鉄鋼協会が昨年11月にまとめた「2002年鉄鋼材需給展望」によるもの。この資料は昨年後半に作成されたもので、「経済成長見通しが年末に2度、3度と上方修正された」(金融機関)ため、需要が同協会予測よりプラスに振れる可能性はある。

【POSCOの競争力】

 米国のAKスチール。市況性の高い熱延鋼板比率を引き下げ、冷延―表面処理鋼板などへの高付加価値化を推進することで、米国の高炉業界において最も高い収益率を誇ってきた。同社が01年は事実上の営業利益を残したが、最終損益は赤字に転落した。

 欧州最大の仏ユジノール。01年の業績はまとまっていないが、売上高は前年比7・8%減の145億ユーロに減少した。新日本製鉄の02年3月期売上高(単独)も9・1%減の1兆6800億円と見込まれている。

 韓国のPOSCOがこのほど発表した01年の売上高は11兆860億ウォン、前年比5・2%減。純利益は8190億ウォン。前年の1兆6370億ウォンから半減したが、00年決算では株式売却などによる大幅な特別利益を計上しており、特別損益を除外した場合の純利益は8190億ウォンと14%減に踏みとどまっている。

 韓国証券取引所で1月24日に開催された「2002CEOフォーラム」。劉常夫会長兼CEOは数多くのアナリスト、記者を前に「世界の大手鉄鋼ミルが軒並み赤字転落する中、高付加価値化戦略、プロセス・イノベーションによるコスト削減策が奏功し、良好な経営成果を残せた」と胸を張った。

 世界トップの競争力を持つPOSCOは、「今後5年間で10兆7000億ウォンを投じて主力の鉄鋼事業をさらに強化する」(劉会長)ことで、競合他社とのリードの差を広げにかかる。具体的には「高付加価値化を加速するとともに、中国・東南アジア市場などグローバルな事業基盤を拡充する」(同)考えである。


高層アパートが延々と続くソウル市内