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年非鉄金属業界10大ニュース

日刊産業新聞 2005/12/27

(1) 非鉄金属相場が内外で急騰。銅建値は26年ぶりに60万円
(2) 日鉱と三井が銅製錬提携強化、100周年迎えた日鉱は新態勢へ移行
(3) 亜鉛製錬再編加速
(4) 電線価格引き上げ
(5) キッツが京都ブラスを統合
(6) 電線業界の再編続く
(7) 三菱マテ、同和鉱業の銅事業提携強化
(8) 非鉄各社の業績改善進む、製錬は過去最高相次ぐ
(9) 伸銅メーカーの技術提携進む
(10) 銅原料では流通構造変化

(1)非鉄金属相場が内外で急騰。銅建値は26年ぶりに60万円

 2005年の非鉄金属相場は需給ギャップを材料に投機買いが活発化し国内外で急騰。銅はロンドン金属取引所(LME)のセツルメントが、12月にトン当たり4625ドルをつけドル建て移行後の最高値を記録。これを受け建値も約26年ぶりに60万円に達した。鉛、亜鉛もドル建て移行後の最高値を更新。建値も鉛が17万9000円、亜鉛が26万8000円と約15年ぶりの高値をつけた。金現物も約18年ぶりにオンス当たり500ドルを突破した。

(2)日鉱と三井が銅製錬提携強化、100周年迎えた日鉱は新態勢へ移行

  日鉱金属と三井金属は12月26日に銅製錬事業の提携強化を発表した。共同出資会社であるパンパシフィック・カッパー(PPC)傘下に三井などが出資する日比共同製錬と、日鉱の佐賀関製錬所と日立精銅工場が入ることになる。今後の海外資源開発もPPCが行うことになる。新日鉱グループは12月26日に日立鉱山の開山100周年を迎えたが、来年4月には金属系3社を統合し、資源・金属、電子材料、金属加工のカンパニー制への移行も発表している。

(3)亜鉛製錬再編加速

  亜鉛製錬でも事業再編が進んだ。日鉱金属は7月、来年3月に亜鉛・鉛委託製錬事業から撤退することを発表した。鉱石の買鉱条件が悪化していることや、豊羽鉱山が休止するためだ。生産委託先の八戸製錬と秋田製錬の持分株式はそれぞれ三井金属と同和鉱業に譲渡することになった。一方で同和鉱業は八戸製錬へ委託している亜鉛生産を来年3月で終了するほか、秋田製錬への出資比率を81%に引き上げた。一連の再編に伴い、三井金属の八戸製錬の出資比率は85・51%になった。

(4)電線価格引き上げ

  大手電線メーカーは05年、銅導体や被覆材材料の連騰を受けて、ビルや工場などに使われる産業用電線を中心に、マージン改善を目的とする値上げを積極展開した。原料価格の上昇に歯止めがかからず、製造現場での採算割れが深刻化。需要は堅調に推移したため、各社とも「利益なき繁忙」状態に陥った。メーカー出し値の上昇を受けて電線問屋も卸売値を値上げしたが、11月以降は銅ベースの急騰を追い切れず、転嫁に遅れが見られた。 

(5)キッツが京都ブラスを統合

 6月、バルブ・黄銅棒メーカーのキッツは三井物産子会社の京都ブラスを経営統合。国内最大級の月産量(5000トン)を誇る黄銅棒メーカーが誕生した。子会社の整理再編を進めていた三井物産と、黄銅棒事業を強化したかったキッツの思惑が一致したことが背景にある。黄銅棒業界はこれまで価格競争と需要低迷で疲弊していたが、昨年の値戻しやカドミレス製品の需要拡大などでわずかに改善した。こうした環境のもとで今後、業界内での提携や統合がさらに進む可能性が高い。

(6)電線業界の再編続く

  電線業界では05年も事業再編が相次いだ。古河電工とフジクラは1月1日付で両社の超高圧ケーブル事業を包括統合、折半出資会社ビスキャスは同事業の製販会社として新スタートを切った。フジクラと三菱電線工業は産業用電線の販売事業を統合、4月から合弁会社フジクラ・ダイヤケーブルが営業開始した。自社グループ内での生産拠点統廃合や、事業態勢見直しも進んだ。昭和電線電纜は9月、持株会社態勢への移行を発表した。

(7)三菱マテ、同和鉱業の銅事業提携強化

  三菱マテリアルと同和鉱業は12月に、銅製錬と関連する金属回収事業での提携を強化すると発表した。提携内容の詳細は今後詰めるが、同和鉱業の三菱マテリアルへの銅委託製錬の拡大と、製錬副産物に含まれる貴金属回収の三菱側から同和側への処理委託が柱になる。両社が出資する小名浜製錬に新炉を導入し鉱石処理能力の拡大を図り、同和は三菱への銅生産委託を増やす。また、三菱側は各生産拠点で発生した副産物を小坂製錬に処理委託する。

(8)非鉄各社の業績改善進む、製錬は過去最高相次ぐ

  非鉄各社の業績改善が進んだ。特に大手非鉄製錬8社の05年9月中間期業績は6社が過去最高益を記録した。銅、鉛、亜鉛から貴金属、レアメタルまであらゆる金属価格が急騰したことで資源・製錬部門がけん引役となった。その一方で需要側の伸銅各社は販売価格の上昇で増収となったものの利益面で明暗が分かれた。自動車分野に注力しているメーカーが好調。電線各社は情報通信の利益改善が鮮明になった。

(9)伸銅メーカーの技術提携進む

  2005年は伸銅品各社の技術提携が活発化した。3月には大木伸銅工業が三宝伸銅工業の鉛レス黄銅合金「エコブラス」の製販ライセンスを取得。三宝伸銅は5月、米のチェイスブラス社とも同製品の製造販売に関する独占的使用権の契約を結んだ。同月、日鉱金属加工と同和鉱業は錫めっき事業で長期受委託契約を締結。11月には神戸製鋼所と三菱伸銅が銅合金向け技術でクロスライセンス契約を結んだことを明らかにした。ただ、これらの提携は部分的で、統合・再編へ進む場合はさらなる紆余曲折が予想される。

(10)銅原料では流通構造変化

銅原料市場では、内外銅価急騰を受けてスクラップ市況が底上げされ、市中ディーラーの売上高も軒並み膨らんだ。ただ、継続的な低品位玉の中国向け輸出増に加え、黄銅削り粉などの炉前級原料でも韓国などに流出する現象が目立ち、国内市場空洞化が進んで扱い数量は減少、価格動向とは別に活況とは言い切れない現実にも直面した。炉前材の流出は、これまですみ分けてきた国内と輸出市場は一層融合していることを物語っている。