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資源大国 カナダ編 (5)

資源産業のピラミッド

日刊産業新聞 2009年11月11日

 世界の資源産業は「メジャー」と呼ばれる巨大資源会社を頂点とするピラミッド型になっている。頂点に君臨するメジャーの代表格が、非鉄金属ではBHPビリトン、ヴァーレ、エクストラータ、テック・リソーシズなどで、世界中に複数の鉱山を持ち資源開発を行っている。  

探鉱の主役、ジュニア/“千三つ”に賭ける金融街

 メジャーの下には中小鉱山会社があり、同一国内あるいは単一鉱山を持って資源開発を進めている。さらにその下に「ジュニア」と呼ばれる探鉱会社、末端には「グラスルーツ」と表現される草の根的な探鉱を行っている個人が存在している。

 グラスルーツの探鉱を行い、実際に資源を開発できるようになるまでには最低でも10年以上の歳月がかかる。ただ、この世界に「千三つ(せんみつ)」という言葉がある。資金を投入して1000カ所を探鉱しても、資源開発できるのは3カ所あるかないか。開発できても資源価格急落のリスクを常に抱える。

 「メジャーはこうしたリスクを負いたくない」(オンタリオ州地質調査局のブライアン・アトキンソン氏)ため、ジュニア企業が探鉱の主役として大きな役割を果たしている。

 オンタリオ州地質調査局によると、同州でのメジャーの探鉱活動は95年当時は80%を超えていた。それが99年以降はジュニアの探鉱比率が右肩上がりで増加。08年はその比率が逆転した。

 「新しい鉱床の発見はジュニアに任せ、発見した鉱床の権益をメジャーが買い取る」(同)仕組みが定着。これにより資源産業のピラミッドが形成されるようになった。

 オンタリオ州では18歳以上なら25加ドルを支払えば、400平方メートルの区域を権利主張して2年間、自由に探鉱できる。同州にはこうして権利主張している個人の探鉱者が5000人いるという。しかし、個人探鉱者は高齢化し徐々に人数が減ってきているため、探鉱の中心は州内に400社以上存在するジュニア企業になっている。

 資源を開発するのがメジャーの目的なら、メジャーに新たな有望鉱床を供給するのがジュニアの役割。つまりジュニア企業は「メジャーが負いたくないリスクで飯を食っている」(ブライアン氏)。

 ただ、ジュニア企業の多くが小規模故に資金調達という問題を抱えている。この問題を解決するのが、トロント証券取引所(TSX)である。

 日本からの直行便が着くトロント・ピアソン国際空港からハイウエーに乗り車で約30分。オンタリオ湖畔に広がる金融街の摩天楼の中で、ビル表面に本物の金を使ったというロイヤル・バンク・プラザが朝日に照らされ黄金色に輝いていた。

 「ウォール・ストリート」が米金融の代名詞なら、ここカナダでは「ベイ・ストリート」が金融街の呼び名になっている。地下鉄ユニオン駅の正面にあるのがロイヤル・バンク・プラザのビル。そこからベイ・ストリートを1ブロック下った先に、石造りの旧トロント証券取引所が残っている。

 ただ、旧取引所の上には近代的な黒色の高層ビルが覆いかぶさるように建てられており、新旧のコントラストが、旧取引所の歴史的なたたずまいを一層引き立てている。さらに1ブロック先に円筒形の電光掲示板が見えるのが、現在トロント証券取引所が入居しているビル。ここが世界の鉱業金融の中心地になっている。

 掲示板では、金、銀の価格表示の下で、レイク・ショア・ゴールド、TNRゴールド・コープ、ウォールブリッジ・マイニング・カンパニーといった資源会社の株価が次々と流れていく。

 TSXベンチャーも含めると、新興の探鉱会社から世界中で資源開発を行っている資源メジャーまで1100社以上が上場。時価総額は2240億加ドルに上る。

 ただし探鉱会社というのは、大部分が発見した鉱区を売却する以外に収益を生まない「金を使うだけの会社」(ブライアン氏)。つまり鉱床発見や鉱区取得により、将来利益が発生する可能性があるという期待だけで、ジュニア企業の株は売買されている。

 千三つという探鉱事業がハイリスクなら、そこに投資をする投資家もハイリスク。ギャンブル性が極めて高いのが、鉱業金融のもう一つの側面だ。

 さらに大小問わずこれらの資源会社には、あのロイヤル・バンク・プラザをはじめとする「摩天楼の住民」も資金を供給している。彼らやジュニア企業の株を売買している個人投資家などが供給した資金は、カナダ国内のみならず、世界中の探鉱、開発、生産活動の血液となっている。

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