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世界経済は米リーマンショックで大打撃を受けたが、約1年半の調整局面を経て大底を脱し、回復軌道に入ったようにみえる。日本総合研究所会長、三井物産戦略研究所会長、JAPIC日本創生委員会委員長などを務める寺島実郎・多摩大学学長に世界経済や日本創生のポイント、総合商社のチャンス――などをテーマに話を聞いた。
「いま日本は極端な悲観論に寄っているが、世界は危うさを湛(たた)えるほどに景気回復軌道にある。再び金融肥大型の構図になりつつあるということだ。最近の株価主導の景気回復は実体経済と乖離したまま。典型的なのが米国で、まさにジョブレスリカバリーの状態にある。リーマンショック以降、あらゆる先進国がこぞって財政出動と超金融緩和策を続けてきた結果、大量の資金が出ている。世界の金融資産は07年に194兆ドルと実体経済の4倍に迫る勢いで膨れ上がっていた。それがリーマンショックで弾け、08年には148兆ドルまで落ち込んだ。09年は実体経済がマイナス2・2%成長だったが、金融資産は185兆ドル程度に戻ったとみられている。直近の米オバマ大統領の金融規制、中国政府の金融引き締めなどの動きは当然のこと。世界経済は、適切に金融システムを制御しながら、内実ある形で景気を回復軌道に乗せるという大きな課題を抱えたまま。つまり病気が治ったような空気が漂っているだけで実は治っていない」
日本力再び 「ポスト自動車」育てる
JAPIC日本創生委員会 寺島実郎委員長
日刊産業新聞 2010年02月18日世界経済は米リーマンショックで大打撃を受けたが、約1年半の調整局面を経て大底を脱し、回復軌道に入ったようにみえる。日本総合研究所会長、三井物産戦略研究所会長、JAPIC日本創生委員会委員長などを務める寺島実郎・多摩大学学長に世界経済や日本創生のポイント、総合商社のチャンス――などをテーマに話を聞いた。
――一時、6500ドルまで落ち込んだニューヨーク・ダウが1万ドル近辺で推移するなど、世界経済は回復軌道に乗ったようにみえるが。
「いま日本は極端な悲観論に寄っているが、世界は危うさを湛(たた)えるほどに景気回復軌道にある。再び金融肥大型の構図になりつつあるということだ。最近の株価主導の景気回復は実体経済と乖離したまま。典型的なのが米国で、まさにジョブレスリカバリーの状態にある。リーマンショック以降、あらゆる先進国がこぞって財政出動と超金融緩和策を続けてきた結果、大量の資金が出ている。世界の金融資産は07年に194兆ドルと実体経済の4倍に迫る勢いで膨れ上がっていた。それがリーマンショックで弾け、08年には148兆ドルまで落ち込んだ。09年は実体経済がマイナス2・2%成長だったが、金融資産は185兆ドル程度に戻ったとみられている。直近の米オバマ大統領の金融規制、中国政府の金融引き締めなどの動きは当然のこと。世界経済は、適切に金融システムを制御しながら、内実ある形で景気を回復軌道に乗せるという大きな課題を抱えたまま。つまり病気が治ったような空気が漂っているだけで実は治っていない」