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トップに聞く/シグマグループ会長兼CEO トニ―・フアン氏

中国内需拡大は一服

日刊産業新聞 2010年06月02日

 国際アルミ二次合金市場の下落が止まらない。中国産AD12・1オファー価格(CIF、JAPAN)はA団、B団メーカーでトン2120―2150ドルと、4月の最高値から200ドル強の値下げを記録。日本産価格を大きく下回り、値ごろ感が台頭している。世界最大手のアルミ二次合金メーカー、シグマグループ(本社=台湾高雄市)のトニ―・フアン会長兼CEOに、同社の生産状況や相場見通しなどについて電話で聞いた。

――シグマグループ4社の生産状況は。

special_187 「5月の生産量は上海シグマが2万1000トン。このうち1万2000トンを日本や東南アジアなどへの輸出が占める。重慶シグマは5000トン。パイロットプラントの増設は完了し、月7000トンの生産能力があるが、需要家が国内市場の相場下落を受けて購買を控えており、フル操業に至っていない。カン州シグマは4000トンだった。輸出用の鍋や鉄板を製造する大口ユーザーの低操業が響き、受注回復が遅れている。現在、周辺地域で新規顧客開拓を進めているところだ。高雄シグマは4000トンで高操業を続けている」

 「6月の生産量はシグマが2万トンとなる見通しで、他の工場は5月と同程度にとどまるだろう。ユーザーの間で先安を見込んで、買い控えの動きが広がっている。また、相場が下落する前に手当てした高値在庫の圧縮を優先する自動車部品メーカーも少なくない。こうした要因で、これまでのような内需拡大の動きは一服している。とはいえ、需要レベルは依然高い」

――4月後半以降、中国産をはじめ海外アルミ二次合金相場が続落している。今後の相場をどうみるか。

 「当然、ロンドン金属取引所(LME)のアルミ相場の動向いかんだろう。ただ、LMEアルミ相場が2000ドルをキープすれば、当社の日本向けオファー価格は、2200ドルを下値に推移する可能性が高い」

――中国沿岸部の不動産バブルや政府の金融引き締め強化など、今後の中国経済を不安視する向きもある。

 「確かに中国政府は上海などで不動産バブルの過熱感を和らげようと、さまざまな政策を実施している。建設業界は何らかの影響を受けるだろうが、自動車関連産業への影響は軽微とみている。自動車市場は内陸部の販売が引き続き好調であり、中間層を中心にマイカーブームが広がっている。こうした状況が当面続きそうだ」

――年産能力60万トンの世界最大規模となる重慶新工場の建設状況は。

 「順調に進んでいる。11年末からの生産を予定しており、現在、市場開拓を進めている」

――アルミスクラップの集荷状況はどうか。

 「北米を中心に調達しており、生産に必要な原料は問題なく確保できている。年初と比べれば需給のタイト感はだいぶ和らいでいるのではないか」

――日本市場の位置づけは。

 「当社は中国国内の販売増で、全体に占める輸出の割合は減少しているものの、日本市場が今後も重要であることに変わりはない。当社が海外向けに初めて出荷したのが日本の需要家であり、その分思い入れも深い。それ以来長年にわたって取引を行っているユーザーがほとんどで、これからも良好な関係を維持していきたい」

――アジアの二次合金メーカーの中には、インドへの工場進出を検討しているところもある。

 「実は数年前にインドの業界関係者から、現地での二次合金工場建設の要請があった。だが、インドは二次合金メーカーによる競争がし烈な上に、政府の法整備が不十分であるなど、海外企業にとってリスクが大きい。例えるなら現在のインドは10年ほど前の中国のような状態にある。このため、当社が現地メーカーと公平な事業環境の下で競争するのは難しいと判断し、要請を断った経緯がある。とはいえ、言うまでもなくインドは中国に次ぐ成長市場であり、今後長期にわたり、自動車産業の拡大が見込まれている。当然、二次合金の需要もさらに伸びるはずだ。将来的に法整備も含めたインドの事業環境が改善されれば、現地への工場建設を検討する可能性もある」

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