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【上海支局発】

中国鉄鋼業 訪れた転機/(1)相次ぐ設備認可

シェア競争の引き金に

日刊産業新聞  2012年08月27日

 中国政府が2008年に建設認可を下し、4年越しで正式着工が決まった2つの大型製鉄所。宝鋼集団と武漢鋼鉄集団は本年5月末に起工式を開き、それぞれ年産能力1000万トンの製鉄所建設に向かうが、国内他社もまた、市場獲得競争に遅れまいと、能力拡張に舵を切る。「パンドラの箱を開けてしまった」(中国の日系高炉幹部)。シェア競争を経た後に、構造改革の希望は見えてくるのか。

 「前々から決まっていたことではあるが、このタイミングの認可は不可解だ」(別の日系高炉幹部)。

 「このタイミング」とは、粗鋼生産が年率7億トン超の高水準を続け、在庫が増えて鋼材市況が下落し、多くの鉄鋼メーカーが赤字に陥っている現状を指す。むしろ能力削減を進めて需給バランスを改善し、鉄鋼業を健全な方向に導くのが、常識的な考え方だ。


宝鋼・湛江製鉄所の建設現場(左奥はすでに稼働しているペレット工場)
 政府は05年の鉄鋼発展計画以降、非効率な小規模・老朽化設備を廃棄し、新規設備の認可を制限するなど、構造調整に取り組んできた。成果は上がっている。粗鋼能力で毎年3000万トン前後、この7年間で日本の粗鋼の倍に近い約2億トンが削減された。

 だが、肝心の調整からは遠ざかっている。規制前に認可された設備が、11年だけで高炉60基以上、8000万トン分が立ち上がり、12年も20基以上の高炉が加わると報じられている。能力削減は工業・情報化省、建設認可は国家発展改革委員会と管轄が異なり、縦割り行政の弊害とも指摘される。11年のように5000万トン上乗せされれば、粗鋼能力は15年に10億トンに達する。

 宝鋼による広東省の湛江製鉄所と、武鋼による広西チワン族自治区の防城港製鉄所。華南地区の2大プロジェクトの建設許可書は、鉄鋼産業の過剰能力を懸念する温家宝首相の机の上に長く置かれていたといわれる。賢明な首相が、印を押したのはなぜか。(つづく)

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