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【アジアン・メタルマーケット】

台湾・鉄鋼編 <1>

台湾経済動向―01年鋼材生産は大幅減

日刊産業新聞 2002/10/15

 2002年の台湾経済成長は01年のマイナスから立ち直りを見せ、上半期で前年同期比2・6%の伸びとなったもよう。年率では3%程度の成長が期待されている。こうした経済の回復、および鋼材価格が台湾内、輸出向けともに改善したことから、台湾の鉄鋼業も総じて、業績が前年から好転している。だが、来年以降の見通しは不透明で、業界関係筋では不安視する向きが多い。影響力の大きい米国経済が本年半ばから落ち込んできたこと。中国政府の暫定セーフガードの発動による今下半期からの中国向け輸出の減少懸念。WTO加盟による、来年以降の輸入鋼材の増加不安など、問題が山積みしている。昨年から今年にかけての激動の台湾鉄鋼事情をまとめた。

 ▼昨年の台湾経済

 「本当に昨年は最悪だった」――台湾の取材で、多くの人から聞かされた。台湾のGDPは、01年がマイナス1・91%と、年間では史上初のマイナス成長。99年5・4%、00年5・9%と着実な伸びをしていただけに、経済全般に与えた影響は大きかった。

 マイナス成長の要因は第1に、主力の電機・ハイテク産業が落ち込んだため。台湾のハイテク産業は輸出主要品目のトップで、輸出金額の4分の1強を占める。ただ、アメリカ先端企業のOEMが主体で、昨年はそのアメリカ先端企業の環境悪化のあおりをモロに受けた。

 第2に、建設の大不振が挙げられる。大型公共工事が出なかったことや、企業の設備投資も前年比18・1%減となり、工場・倉庫の建築が低調だった。住宅もマンション建築がさえなかった。土地の長期値下がりで、マンション購入など個人消費が00年のプラス4・9%から、01年はプラス1・4%に低下。結果、01年の建築許可面積は年間217万平方メートルと、00年比38%の大幅な減少となった。

 ▼景気後退による鉄鋼生産などへの影響


CSCの高炉群
 台湾の01年粗鋼生産は、1721万トンと前年比1%の微増となった。しかし、粗鋼見掛け消費は2262万トンと、前年比300万トン強減少。また、鋼材生産は2198万トンと、前年比320万トン減少となった。

 特に、台湾は建設向け鋼材消費が約半分(00年で建設向け国内鋼材出荷=47%)を占めており、建設不振が電炉を中心に鉄鋼業界に与えた影響は大きい。01年の鉄筋用棒鋼生産は619万2000トンと6・2%減となった。93年の821万トンと比べると、200万トン近く減少した。

 H形鋼も81万9000トンと、前年比33%の大幅な減少。厚板も生産は122万トンと前年比横ばいだったが、見掛け消費は00年の164万トンから134万トンと30万トン減少した。

 ▼鉄鋼メーカーの01年業績は悪化

 中国鋼鉄(CSC)の01年業績は、売上高826億台湾ドル、税引前利益が84億700万台湾ドルと前年比61%減。当初は105億台湾ドルの利益予想をしていたが、予想比では20%減となった。

 業績悪化の最大要因は、00年から01年にかけて価格が大幅に下落したため。01年の市況は、例えば冷延コイルが8500台湾ドルまで下落、99年に比べると日本円で1万5000円程度下がった。

 数量減も多少響いた。01年鋼材生産は年間933万トンと前年比1・7%減。当初計画の960万トンから見ると27万トン減少。製品販売量は年間970万トンと同比ほぼ横ばいだったが、輸出量は270万トンと当初計画よりも10万トン下回った。

 他メーカーもY隆企業(イエロン)は税引前で18億2900万台湾ドルの損失となった。また、パイプの大手メーカーの高興昌鋼鉄も税引き前で6億3000万台湾ドルの損失。ブリキ大手メーカーの統一実業も91年の株式上場以来、01年は初めての赤字転落。まさに01年は鉄鋼業界にとっては価格低迷と内需不振が重くのしかかった年だったと言える。