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2002年軽金属業界の10大ニュース

日刊産業新聞 2002/12/26(木)

(1) アルミ需要が回復 
(2) ロールマージンアップへ
(3) 古河・スカイ来年10月完全統合
(4) YKKAP、アライアンスを推進
(5) 神戸製鋼、海外権益を売却
(6) 不二サッシ、新日軽に生産委託
(7) 日軽金、箔・押出など分社化
(8) ベナルム地金交渉難航
(9) アルミ協会、中国と交流促進
(10) アルミ新地金港湾在庫の減少

(1)アルミ需要が回復

今年のアルミ需要は、昨年のIT向けを中心とした低迷から一転して回復。特に、落ち込みの大きかったIT需要が急回復したほか、底堅い動きを見せた缶材、アルミ化が進展する自動車向けなど、総じてしっかりした動きとなった。中でも、コンデンサー向けの箔は、急速に回復基調をたどっている。
全体的には、板類をけん引役に、月を追うごとに復調傾向を見せた。

(2)ロールマージンアップへ

軽圧・箔メーカー各社は今下期(10月)から、陥没価格の是正など、ロールマージンアップに向けた取り組みを展開している。各社とも10%の価格引き上げを基準にしているが、陥没の大きい品種については、20%程度の価格引き上げを行いたいとしている。
メーカー各社では、ロールマージンの低下が著しいことに加え、工場での生産もタイトであることから、ひも付き品も含め、値上げに向け強い姿勢で完全浸透をめざしている。

(3)古河・スカイ来年10月完全統合

古河電工とスカイアルミニウムは来年10月、販売部門の統合に続き、製造部門も一体化し、完全統合を実現する。統合する新会社へは、古河電工から70%、昭和電工、新日鉄などスカイアルミサイドから30%の出資となる予定。
ただし、共販会社「ユニファスアルミニウム」を存続させ製販分離態勢を続けるのか、あるいは文字通り1社に集約するかについては、今後検討するとしている。
今後は、製造一体化でどれだけ合理化効果を出せるかがカギになりそうだ。

(4)YKKAP、アライアンスを推進

YKKAPは、住宅増改築分野で、TOTO、大建工業との間で業務提携を行ったことに続き、松下電工ともアライアンスを組み、合従連衡の動きを活発化させた。
トステムはすでに、INAXと経営統合にまで発展した関係を構築。YKKAPでは、そこまで踏み込んだ対応はしないものの、連携強化で競争力向上と市場開拓などを行っていく。
同社では今後、少子化による新築住宅の需要減も予想されるなか、リフォームなどの住宅建材需要の取り込みを図っていくことになる。

(5)神戸製鋼、海外権益を売却

神戸製鋼は3月に豪州ワースレーアルミナプロジェクトへの投資会社株式の一部を伊藤忠商事に、6月に豪州ボインアルミプロジェクトの権益をコマルコに、7月にはカナダ・アロエッテアルミプロジェクトの権益をSGFへ、それぞれ売却した。神鋼は合理化計画の中で、アルミ分野では「国内の圧延に経営資源を集中する」として海外資産を売却したもので、事実上アルミ地金調達手段としての海外開発地金からほぼ撤退した。

(6)不二サッシ、新日軽に生産委託

不二サッシは、一般向け住宅用サッシの大部分を、新日軽に生産委託した。同社は住宅用建材のシェアが高くないことから、品ぞろえの拡充と経費節減を図るため、OEM調達を拡大させる。また、来年からは、サッシの統一規格である新寸法体系が導入されることなどもあり、生産委託で住宅建材事業のコスト競争力アップと収益改善を図る。
不二サッシでは、四国地区で三協アルミなどと共同物流をすでに実施し、効率化に向けた各種取り組みを加速させている。

(7)日軽金、箔・押出など分社化

日本軽金属は、アルミ箔、パネル、押出・軽圧加工の各事業を10月1日付で分社化した。これに伴い、「東洋アルミニウム」は、製販一体の態勢に戻り、パネルは「日軽パネルシステム」、押出・軽圧加工事業が「日軽金アクト」として新たに発足することになった。
日軽金では、これら分社化を通じて、各事業の効率化、競争力強化などを図っていきたいとしている。

(8)ベナルム地金交渉難航

ベネズエラのCVGベナルム社と日本側株主(昭和電工、神戸製鋼、住友化学、三菱マテリアル、三菱アルミ)との地金売買契約更新交渉が難航、4月以降ベナルム地金の対日出荷停止という異常事態が起こった。ベナルム側は日本側株主への優遇的措置を拒否、日本側も撤退を辞さない強い態度で交渉に臨んだため、交渉は長期化、11月の「ランヘル・古澤トップ会談」でようやく合意。対日出荷が年末再開された。

(9)アルミ協会、中国と交流促進

日本アルミニウム協会は本年5月、中国有色金属工業協会を訪問し、互いに意見交換を行い、今後の交流促進を確認。また、12月には中国・北京で同工業会主催のアルミニウムフォーラムが開催され、日本側から佐藤薫郷・アルミ協会会長をはじめ多数が参加した。
中国は、巨大なマーケットであるだけでなく、今やアルミ地金の供給者(輸出国)としての存在感を高めており、今後の日中交流の行方に関心が集まりそうだ。

(10)アルミ新地金港湾在庫の減少

主要3港(横浜、名古屋、大阪)のアルミ新地金の港湾在庫が大幅に減少した。5月まで22万2000トンと20万トン台を保っていたが、6月には19万8000トン、足元でも19万トン台に落ち込んでいる。大手商社が、キャッシュフローの健全化を図り、地金在庫を絞ったのが大元の要因。
これにより、内価のプレミアムは高騰。夏季には70ドル際まで急騰した。国内のアルミ需要は本格的に回復したとは言えず、プレミアムも沈静化するとの見通しが強かったが、その後も60ドル台後半で推移した。