SANGYO SHIMBUN 90th ANNIVERSARY
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創刊90周年記念座談会 広がるアルミ循環/(4)/原料循環、官民で連携必要

2026.04.07 / 5 min read
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Strategy Portrait
激動の時代において、不変の価値とは何か。
最前線で舵を取るリーダーが、その胸中を明かす。
 【スクラップの海外流出】

 

Q. アルミスクラップは年40万トン超が海外に流出しています。リサイクラーへの影響は大きいですね。

 大賀「深刻な問題だ。海外流出は常態化しており、数量も年々増加している。スクラップ発生量が減少する中で、脱酸剤メーカーや二次合金メーカーは価格面で海外勢に競り負ける場面が多く、UBCの確保が難しくなっている。物流コストの問題も大きい。例えば、輸出拠点の新潟県から弊社のある静岡県に運ぶ国内輸送の場合、キロ当たり十数円の運賃がかかる。一方で、外航船での隣国への輸出は、国内輸送に比べ3分の1程度の運賃コストで済む場合がある。そのため離島や九州では輸出が選ばれやすい。流通の上流では外国籍の事業者による参入が進み、関西では言語や利用するアプリを共通化した回収スキームの形成が海外流出を後押ししている。ただ、関係者によれば、輸出するのは国内に比べ採算が良いからといった側面が大きい。国内でリサイクル原料を安定利用できる環境が整えば、国内循環に回帰する余地はある。官民連携による対応が必要だ」

 

Q. 違法なヤード事業者の対策として環境省が廃棄物処理法の改正を進めていますが、国内循環を進める上で、経産省としてはどのような考えがありますか。

 三牧「まずは国内での受け皿の整備を優先すべきだと思っている。動脈側と静脈側が議論を重ね、売り先や受け皿が整った段階で規制強化に踏み込むのが望ましい。昨年5月に改正した資源有効利用促進法では、ユーザー企業に再生材利用を促す方向性を打ち出した。現段階では自主目標が中心だが、将来的には数値目標の導入も可能であり、その際には環境配慮設計や設備投資支援など踏み込んだ政策を強化できる。輸出規制を求める声も聞かれるが、将来的な政策オプションとしてはあり得るものの、需給の急変を招き市場が値崩れを起こす恐れがあるため慎重に対応すべきだ。基本方針は、国内で安定的に循環する経済構造の構築にある。経済安全保障の観点も重要だ。欧米ではアルミを戦略物資として管理しているが、そこまで日本は踏み込めていない。すでにアルミ市場は成熟しているため直接介入は容易ではないが、経済安全保障の枠組みを活用すれば規制や支援策を講じることも可能だ。環境省の規制も適正でないヤードを整理する目的で進められており、制度環境は徐々に整いつつある」

 

Q. リサイクル原料の海外流出がさらに進んだ場合、素材メーカーの原材料調達にどのような影響が生じますか。

 田中「アルミの海外依存がさらに増すことが大きな懸念と言える。日本ではアルミ製錬を行っていない。リサイクル原料の流出が続けば、資源の海外依存度がさらに増すだけでなく、国内ベースメタル産業の弱体化にもつながる。経済安全保障の観点でも大きな問題だ。価格変動も大きくなれば、原料確保のリスクが高まる。原料不足はCO2削減機会の喪失にも直結し、必要量を確保できなければ新地金の使用を増やさざるを得ない。こうした事態を避けるため、調達先の多様化と、山一金属などパートナー企業と連携して回収強化に努めている」  【個社が個別に抱える課題など】

 

Q. 再生材を使うにはコストがかかります。飲料メーカーや消費者は、そのコストをどこまで環境価値として認めてくれるのでしょうか。

 本多「コストの価格転嫁は容易ではない。再生材は、回収し再生材として利用するまでの工程で新地金よりコストがかかる場合があり、その際は顧客と価格面で協議する余地はある。ただし、コストに大きな差がない場合に、再生材の使用だけを理由に価格評価を得るのは簡単ではない。環境配慮は企業の責務であり、再生材を活用できる製品を実現することが業界の役割でもあるからだ。消費者は価格に敏感で、経済合理性を伴わない値上げは受け入れられにくい。一方で、新たな技術によって再生材の利用を可能にした場合、その技術的な付加価値は評価される可能性がある。継続的な研究開発を重ね、技術力によって価値を高めていくことが重要だ」

 

Q. 最高値圏にあるUBC価格は、回収や選別のコストを適正に反映したものと考えて良いのでしょうか。

 大賀「一部は反映しているが、構造的な課題は残る。回収事業は装置産業ではないため、トラックとプレス機があれば一定程度、成立する業態だ。その分だけ、人件費や燃料費、金利の影響を受けやすい構造にある。人手不足も深刻で、社長自らがプレス機を操作し、フォークリフトで積み込みを行いながらトラックを運転して回収に回る光景も珍しくない。業界のコスト構造にも依然として課題がある。UBC価格はキロ400円に迫る水準まで上昇し、かつての100円台から大きく水準を切り上げたが、利益は発生源に近い産業廃棄物処理業者や自動販売機関連の回収業者、自治体と連携して回収を行う事業者などの一次回収事業者に偏る傾向がある。マーケット情報の精緻化で、関係者の多くが相場を正確に把握するようになった。その結果、取引条件の厳しくなった二次回収事業者などの収益環境は厳しい。取扱金額そのものも大きくなったことから、資金繰りの負担も増している。UBCコスト高の長期化はサプライチェーン全体に波及し事業継続に影響を及ぼす可能性があるだけでなく、アルミの価格競争力低下や他素材への代替も懸念される」

 

Q. リサイクル原料比率の拡大に向け、必要な設備投資や技術開発にはどのようなものがありますか。

 田中「当社は日本、タイ、北米それぞれの拠点で、地域特性に応じスクラップ処理能力の強化対応を進めている。国内では福井製造所において山一金属と共同でUBC前処理設備を新設し、効率的に処理した回収スクラップの活用を一段と高める体制を整えた。タイでは大型スクラップ溶解炉を導入し、リサイクル原料の使用比率向上につなげている。北米ではシュレッダーラインを増設し、スクラップ処理能力の拡充を図った」

(藤田章嗣、増岡武秀)



【出席者】 

▽田中信二氏(UACJ社長)

▽本多正憲氏(東洋製缶社長〈取材当時〉、現東洋製缶グループホールディングス副会長)

▽大賀丈久氏(山一金属専務) 

▽三牧純一郎氏(経済産業省・GXグループ・資源循環経済課長)

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